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第6話 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ?

お目をとめていただきありがとうございます。

脱水症状で倒れたイツキは団長に助け出され、ある事を頼まれます。

 臭い息に目が覚めたおれは、あたりをみまわした。

「ヒヒーン」

 えっ?

「デ、デネブか?」

 何とユニコーンのデネブがおれに顔を寄せようとする。

「つ、角!刺さるって!」

「おっ、目が覚めたようだな」

「レイン大隊長ー」

「まる1日寝てたんだぜ。あの日は昼間、気温が高かったからな。もう少し発見が遅れてたら、ヤバかったみたいだ」

「おれ、夜に閉じ込められたんですけど」

「発見も夜だ」

「えー!昼間気絶してたのかー、すみません。ありがとうございます!本当に感謝です!」

 声がおかしいが生きてたほうが嬉しくて、おれは叫ぶように話した。

「いやいや、災難だったなー」

 本当に死にかけてたのかよ。

「そうだ。ラズロは何してます?」

 レイン大隊長は眉毛をあげた。

「あの、裏切り者か」

「裏切り者?」

「あいつ、おまえがアルカンシエルに話しかけられたのを見て、ペガサス騎士団への引き抜きの相談かと思ったみたいなんだよ」

「へっ?」

「団長と食事の約束をしてるのを見て、自分を推薦してもらおうとしたみたいなんだがーー」

 そうなんだ。恋心じゃなかったのかー。うーん、複雑。まあ、あいつ性格悪いから団長がかわいそうだし、いっか。

「どうなったんです?」

「おまえの代わりに食事に来たんだが、幹部全員がいるのを見て逃げ出したんだ」

「え?」

 なんだ、皆さんお揃いだったのか。いや、おれだってそこに入るのは怖いですよ。

「でっ、その日は俺達でおまえの事をボロカス言いながら飯食ったんだけど」

「ひどいですね!プンプン」

「知らねーからしょうがないだろ?けど、朝礼でおまえいないし、ラズロは知らないって言うし、捜索がはじまったんだよ」

「捜してもらえたんだ。ペーペーのおれを!」

 おれは感激で涙を流した。

「いや、脱走者には罰則があるだろ」

 ズコー。

「けど、おまえ全然いねえし。ラズロがうまく誘導したんだな、誰もあの倉庫には行かなかったよ」

「おれ、死にかけてたのに!」

「落ち着け。そしたら団長がデネブに、イツキの居場所を知らないかって聞いたんだよ」

「へー」

「デネブが走り出したときはビビったぜ。おまえ、愛されてるな」

「うれしくねえです」

「受けとめてやれよ」

「あの巨体を?」

「で、見つけてくれたんだよ。さてはおまえ、正体はメスのユニコーンだな?」

「純度100%人間です」

「で、おまえを助けてラズロを吐かせたのよ。あいつは除隊したぞ」

「ええっ!」

「当然だ。仲間を見殺しにする奴はユニコーン騎士団にはいらねぇ」

 まあ、そうかーー。残念だがラズロ。おまえのことはたぶん忘れないぞ。

「で、おまえには団長から話がある」

「えっ?どういう系ですか?」

「説教ではないぞ」

「説教じゃない?えっ、マジにおれペガサス騎士団にスカウトされたんですか?」

「んなわけないだろー。おっ、団長」

 レイン大隊長の視線の先に団長がいた。おれは、慌てて立ち上がろうとしたが、団長にとめられる。

「座ったままでーー」

「すみません」

「いや、早く気づいてやれなくてすまない。食事に来ない時点でトラブルに巻き込まれたと思うべきだった」

「団長もボロカス言ってたぜ」

「言ってない。言ってたのはヘイルだ」

 そうだっけ?レイン大隊長はトボけた顔をした。

「イツキ、頼みがある」

「何です?」

「デネブがこれから毎日、おまえに人参を食べさせて欲しいそうだ」

 

 ?


 おれは困った顔になった。何を言ってるんだ、このイケメンは。

「あのな、イツキ。デネブはおまえの事を恋人だと思っているみたいなんだ」

「はあ!」

「おまえ、もしかしてデネブの角で刺されてないか?」

 レイン大隊長が目を細めた。

「あっ、腰のとこ刺されました」

 身体を洗ったときにしみちゃって、というおれに団長とレイン大隊長は顔を見合わせた。

「デネブはイツキを自分のモノだと思っている」

「はあー」

 いや、だから何よそれ。レイン大隊長はおれの服をめくった。

「いやん、大隊長」

「ばかか。ああ、あるぞ。ユニコーンの所有の印だな」

 おれの腰に変なマークが付いてる。角みたいな。

「これは決まりだな」

「イツキ、デネブの恋人にーー」

「なるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「いや、なってくれないと、ユニコーンの村に帰ると言ってるんだー」

「帰らせたらいいじゃないですかぁぁ!!!」

 いくら人間の恋人ゼロなおれでも、馬、いやユニコーンはありえないだろ!何を真面目な顔でひどい事を言ってやがるんだ、こいつは!

 おれは団長を睨んだが、団長は引くつもりはない、という顔でおれを見た。

「デネブに人参をあげてくれ、イツキ」

「そして、発情期にはおまえのケツをーー」

「ノォ〜〜〜〜〜!!!!!」

 誰がケツを馬に差し出すんだよ!2人揃ってアホすぎるぞ!

「もう、こんなとこやめてやる!」

「騎士団は辞めていいぞ」

 レイン大隊長が頷いた。

「いてもいなくても問題ないし。だが、人参係はやれ」

「ひどいれすーー」

 涙が出たおれにレイン大隊長は言った。

「名誉だ」

「どこがだ!」

「じゃあ、頼んだぞ」

 今のどこでその結論になるんだ!

「あんまりだぁぁぁぁぁ!」


 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、とは言うけどさ、これはどうなんだろ?おれにはよくわからないぜ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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