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第4話 え?進展しちゃうかも?

目をとめていただきありがとうございます。

最悪の事態を避けられたイツキは、違う方面で目をつけられる事になります。この好機をうまくいかせるのか。

 ラズロもひどいや、友達だと思ってたのに。

「ちきしょう!」

 おれは全力で風呂まで走った。

 風呂場で一瞬で服を脱ぎ捨て浴槽に飛び込む。何てこった、はじめてが馬だなんて(やられてないけど)!あんまりだぜ、運命の愛の神!

 

 おれはおんおん泣きながら身体を洗ったり、出た後はミルクをもらったりした。くそっ、ミルクなんか見たくもない(飲んだが)。

 何人かは同情してくれたが、かなりの奴らから、メスのユニコーンの匂い、略して『メススメル』などという不名誉なあだ名を付けられた。


 なんだよ、もう。

 ラズロは無視してくるし、おれの方が無視したいんだよ!


 あ~、それにしても痛恨のミス。あの場で団長に恩が売れたかもしれないのに。チャンスはそうそうないっていうのにさー。

 早くしないと、覚えた公式が全部飛ぶ。






 その日は久々にユニコーン騎士団の幹部が集まる日だった。おれは遠くから見ているだけだったが、スノウ副団長がおれに気づいて、こっちへ来い、と呼んでくれる。別に寄りたくないわよ、プンプンだ。

 おれは団長を見てちょっとムカついてます、って空気を出した。団長は気まずそうにおれから目を逸らす。

「イツキ、話は聞いたぜ。団長のせいでひどい目にあったな」

 イケメンのレイン大隊長が話しかけてくれた。良い人だし、強い。

「てか、メスのユニコーンの匂いがするのか?」

 もうひとりの大隊長クリアがおれの襟元を嗅ぐ。

「や、やめてくださいよー!」

「あっ、なんか近い……」

「どれどれ。ホントだ」

 クリアとレインに匂いを嗅がれ照れるおれ。いやだわ、恥ずかしい。

「イツキ、今度おれのユニコーンの発情期がきたらお願いしたいんだ」

「嫌ですよ!」

「いや、地味に遠いんだよ、ユニコーン村」

「みんな、お願いする?」

「ふざけるな!」

 おれは顔を真っ赤にして怒った。あっ、幹部を前にペーぺーが偉そうにーー。

「ーーそうだな。みんなふざけすぎだ」

 団長が困ったように言った。

「すまなかった。イツキ。今回の事はすべて私が悪い」

「えー、どうしましょうかねー。おれすっごい辛かったんですよねー」

 悲しそうに言うと、団長の顔が曇る。

「イツキ、調子にのるなよ」

 ヘイルがきつく睨んできた。

「すみません」

 素直に謝る。まわりからの印象も大切だからな。好感度が下がる前に撤収だ。

「失礼します~」

「ヘイル、いじめるなよ」

 レイン大隊長がとりなしてくれた。マジでいい人。

 おれはすたこらさっさとその場を去る。結果的に団長のユニコーンを奪うような事態は避けられたわけだが、進展はもちろんない。

 友達なんかなれそうにないしーー、まわりの人達も人当たりが良さそうに見えるけど警戒心は強そうだー。

 お友達になりましょう、が通用しない相手ってどうすんだろ。






 ドンッ!

「おい、おまえがイツキか」

 いきなりおれは、知らない奴から壁ドンをされた。

「は、はい!な、何でしょうか?」

「オレはペガサス騎士団のアルカンシエル、聞いた事はあるな?」

 苦味走ったいい男にいい寄られ、おれはキュンとした。ーーってそんなわけない。

「はあ、名前だけなら」

「なんだと!オレの活躍を知らないのか!」

「ペーペーですので」

「ペーペーには認知されていないのか、オレもまだまだだな。まあ、それはいい。おまえ、ユニコーンに発情されたらしいな」

 一気に嫌な予感がした。

「え?何の事ですー」

「ペガサスにもいけるか確認したい、ついてこい」

「冗談じゃないです!なんでそうなるんですか!」

 アルカンシエルがおれを引っ張って連れて行く。

「勘弁してくださいよ!」

 馬に愛されても帰れないんだよ。

 無理やり引きずられるおれを、誰も助けてはくれない。おまえらが同じ目にあっても絶対助けないからな。

「待て、アルカンシエル」

 団長の声がした。

「なんだ、ユニコーンの団長か。オレは忙しいんだ、邪魔をするな」

「我が騎士団の者を、許可なく連れて行かないでいただきたい」

 2人は睨み合った。アルカンシエルは、けっ、と言った。

「悪かったな」

 あら、素直。

「じゃあ、連れて行っていいか?」

「イツキはどうしたい?」

 アホか、団長。助ける気ねえな。

「嫌に決まってます。強要するなら除隊を願います」

 腹が立ったので言ってやる。団長は眉をあげた。

「そうだな。アルカンシエル、この話はここまでだ。あまり広めないでくれ」

「ちっ、しゃあねえな」

 アルカンシエルはおとなしく引き下がってくれた。冗談じゃねえ。

「すまない。私のミスでーー」

「いえ、困るは困りますがー。良い事もありましたから」

「良い事?」

「あっ、いや。何でもないんです。デネブはあの後どうですか?」

「いつも通りに戻ったよ」

 優しく微笑まれておれは鼻をかいた。鼻さわるとエロいことしたい、って本当か?

「けど、おれもちらっとだけ考えちゃいました。ユニコーンと契約するとどうなるんだろう、とか」

 団長は笑ってくれた。

「慣れるまでは大変だな。慣れる頃にはペアを解消するモノもいるし」

「なぜですか?」

「彼らも自由が好きだから。礼を言って別れるのだ」

「そうなんですかー。寂しいですね。別れが辛くなるから、最初からいないほうがいいかなー」

「そうかもな」

 ずいぶんと会話がスムーズにできたぞ。これはもう、あれだ。ただの隊員から、ちゃんと知ってる隊員に格上げだろう。

 いずれはマブダチだ。牛の歩みとてバカにはできんさ。

「そうだ。イツキ。私に何かできることはないか?」

「ええっ!」

「お詫びがしたい。何でも言ってくれ」

「ええっ?」

 いきなりイベントスタートじゃないか。これはいったいどうすればいいのやら。

 向こうじゃLINLの交換だったり、有名な店で飯行きませんか、とかだろうがーー、ん?飯ーー。

「め、飯!飯奢ってください!」

 がっつき気味に言うと、団長は笑ってくれた。

「わかった。今日の晩でいいか?」

 あら、いきなり夜なの?緊張するじゃない。

「は、はい!」

 おいおい!やったぞ。生まれてはじめて食事の誘いにオッケーもらえたぞ!いままでなら、一緒に食べるのが無理、とか、タダメシでも嫌、って言われて断られてたのに。何ということだ!


 おめでとう、おれ!


 おれは本当に感動している。素直に口から、嬉しいです、なんて言ってんよーー。

「じゃあ、夜に。そうだな……、外の訓練室の前でいいかな?」

「わかりました!」

 こりゃまいったねー。進展しそうじゃないかー。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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