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第3話 侮蔑、殺意、嫉妬の3点攻め

目をとめていただきありがとうございます。

最悪の状況で団長に近づける事になったイツキ。この悪条件はどう動くのか?

 その日の夜、騎士団の談話室がざわざわしていた。

「どうしたんだ?」

 おれと同じ立場ぐらいのレオノラに事情を尋ねた。レオノラはヒソヒソ声でおれに話の内容を教えてくれる。

「実はね、団長のユニコーン、デネブが突然団長の言うことを聞かなくなったらしいんだ」

「へぇー。そんなことあるんだ」

「明日、他の騎士と通じているのか、ペアがいない騎士を集めて調べるみたい」

「ふうん。関係ないおれらもか?」

「いちおう、全員調べるみたいだよ」

 はははっ、そんなわけないのになー、とおれとレオノラは笑い合った。

 談話室から出たおれは風呂に向かう。向かいながら心臓がバクバクしてくる。


 ーーやべぇ、おれじゃないよな。あれ、団長のユニコーンだったか?

 もしおれだったら、印象最悪なんてもんじゃねえ、マイナス何万点だ。ゼロに戻すにも何年かかんだよ。


 まさかまさか、そんなまさか!

 どうか違いますように!


 風呂場で身体を洗うと、腰のあたりが石鹸でしみた。こんなとこ怪我したかなー。





 翌日、朝礼の後、ユニコーンがいない騎士が訓練室に集められた。200人近くいる。

 団長のユニコーン、デネブが連れて来られる。残念ながらおれには他のユニコーンと区別がつかないため、昨日おれに角を突き刺したやつかはわからない。


 偉そうにふんぞり返って騎士を見ている。なんだありゃ、人間より偉いおユニコーン様ってか。お犬様のあの将軍何代目だっけ?あれ?覚えてないーー、センター試験、おれ大丈夫なのか?



「皆、話は聞いたか?私とペアだったデネブが他の騎士に気を取られている」

 訓練室がざわつく。そんなこと言うの?この馬もどきが?

「デネブは諸君らの中から次を選びたいらしい」


 地獄だ。


 全員下を向く。ユニコーンのペア持ちの先輩方の視線もエグすぎる。殺意しかない。

 そりゃあ、苦労して手に入れたユニコーンを、あっさりと違う奴には渡せないよな。団長だって穏やかな顔してるけど、内心はわからんよ。

「じゃあ、前の者から、角に触れてくれ。ユニコーンが嫌がったらそこで終わりだ」

 淡々と団長は事を進めた。おれは最後の方にいたが、前がどんどんいなくなっていくのは本当につらい。先に抜ける方がきっと楽だよな。


 かなり後列にまで順番はまわり、おれの前がラズロだった。

「はい、次」

「ーー団長、すみません。報告が遅れました。昨日、イツキがユニコーンにどつかれたって言ってました」


 その言葉に、おれは真っ青になった。まわりの視線が一気に突き刺さり、おれは視線のキツさに吐き下がした。

「本当か?」

 団長の目が細められた。好感をもってる奴にはしない目だ。あきらかな嫌悪の目だ。


 マイナス3万点まっしぐらかよ!


「それが本当なら、デネブに触れなさい」

 おれは後ろから背中を叩かれた。頭脳明晰で有名な副団長スノウだ。キレイな顔をした男だ。

 そのキレイな顔で睨まれておれは半泣きだった。

 断頭台に登る気持ちでユニコーン、デネブの前に出る。先ほどまで知らん顔していたデネブが、おれの顔を見て目を輝かせた。

 おれは、侮蔑、殺意、嫉妬の3点攻めで死にかけていた。そのおれに、ユニコーンはーー。

「え!」

 おれはユニコーンにこかされた。

「はあ?」

 起き上がろうとしたおれの腰に、ユニコーンは伸し掛かってきた。

「なっ!」

 ユニコーンの巨体がおれの腰にナニをぶつけてきやがった。前足は屈めておれを潰さないようにはしているが、後ろ足は地につけて、がっちりおれの腰を挟んで逃げられないようにしている。

 何シてくれてんだよ!

「た、助けて!」

 叫んでるのに全員呆然としてやがる。




「団長ー、デネブの発情期、処理しに行きました?」

 スノウ副団長が冷静に尋ねる。

「あっ、忘れてた」

 団長は気付いた声をだした。

「たまたまあいつ、メスのユニコーンの匂いに似てたんだな」

 この声は一番槍のヘイルだな。みんなのんきに何言ってんだよ!


「ぎゃあ!重い!し、死にます!」

 470キロの巨体よ。内臓が押しつぶされるがな。


 そのとき、腰のあたりにぶわっと広がる生暖かいモノを感じた。

「へ?」

 デネブはおれから離れた。何ともすっきりした顔で団長のところへ戻って行く。

「デネブ……」

 団長が言うと、デネブはきちんと団長の前に角を出した。

「出したら戻ったんですね」

 ヘイルが笑い、

「団長はうっかりさんですね」

 副団長も笑った。

 

 あははははははっ、訓練室が笑いに包まれる中、団長はおれのところまで来た。

「すまない、イツキ。ユニコーンは発情期になると村に連れて行って牝を探すのだがーー、すっかり忘れていた」


 そんなこと忘れるなんて団長のうっかりさん!めっ、だぞ☆


 とか言えば記憶に残ったのかもしれないが、ユニコーンの牡のモノをかけられ、頭に血がのぼったおれはそれどころではなかった。

「ふざけんな!団長のばか!」

 暴言を吐き、訓練室を飛び出した。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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