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第21話 戦場のイツキ。

お目をとめていただきありがとうございます。

 どのぐらい遅れて到着したのか、アーモンドン国の国境では、戦いの最中だった。


「な、なんだあれ?」

 レオノラがビビるのも無理はない。

 巨大なライオンの背中に、ドラゴンがくっついている。くっついているのだ。

「が、合体?」

 ドラゴンが火を吐き、ライオンが鋭い爪で騎士を攻撃する。そんなのが何頭いるのかーー、最悪の状況だ。


 敵は騎手がいない。ひとがいないのだから、死人は出ない。

 対するこちらはーー。みんな疲労でひどい顔だ。いつ倒れてもおかしくはない。


 おれは下がったユニコーンに力水を飲ませ、食べれるものには人参を食わせた。

 とにかく動いた。

 攻撃に巻き込まれぬように、必死で走り、ユニコーンや騎士の世話をした。


「デネブ!」

 おれの声にデネブは嬉しそうな声をあげた。

「おまえも、ボロボロになってー」

 水を飲ませて、世話をする。団長は他のユニコーンに乗っているのだろうかーー。それは、誰かがダメになった事を意味するから、あまり考えたくはないがーー。


 おれはすり寄ってきたデネブの頬に、激励のキスをしてやった。


 その直後ーー、

「ヒヒーン!」

 デネブがひときわ高い声で鳴いた。


 あれ?やる気を出したのかーー。おまえ、純愛なヤツだよな。


 デネブは凄まじい勢いで戦場に戻っていった。おれはその駆ける姿の無事を祈った。


 団長、どうか無事でいてくれ!

 おれは神様に祈った。


 テストでいい点取れますように、とかさんざんくそつまんねえ事で神様を呼んでいたが、今日こそ正真正銘、本当の願いだ。


 何とかしてくださいよ~。



 おれが祈るように戦況を見ていると、アルタイルに乗った団長が側に来た。

「団長!」

「イツキ、スノウを頼む」


「え!」

 おれより先にレオノラが飛び出し、団長の前で肩を押さえるスノウ副団長を介抱する。

「大丈夫ですか!」

「ーーああ」

「ーーよかったぁ」

 その二人の様子におれは悟った。


「私は戻る」

 無傷なのか団長はすぐに戦場に戻ろうとするのを、おれがとめた。

「待ってください!アルタイルに水を飲ませます!」

「急げ」

 焦るような団長の一言。


 なんか、励ますような事言えないかな。


 がんばって!もうがんばってるわ。

 死なないで!わからんわ。

 絶対に帰って来てください!完全に死亡フラグだわ。


 おれは涙が滲む目でアルタイルの頬にキスをした。

「ヒヒーン!」

 アルタイルも気力を取り戻したように思う。

 これは、もう効くか効かないなんてどうでもいい。おれがしたい事だ。


「団長!屈んでください!」

「何だ?」

 素直に団長が顔を向けてくれたので、おれはジャンプしてキスをした。


 あっ、間違って口にいったなー。


「ーー団長!生きて帰ってきて、おれと結婚してください!」

 団長は目を丸くしている。



「おかしい奴だなーー」

 おもしれー奴じゃなかった、ちょっとがっかりだ。


「わかった。結婚しよう」 

 そう言って団長は砂煙が立つ戦場に戻って行った。






「け、結婚……」


 結婚、してくれるんだ。




 ーーおれは考えた。

 これは、運命の愛の神様的にはどうなんだ。

 いけたんじゃないのか?


 おれは家に帰ってもいいんだよな?

 たとえ今回は運良く団長が生き残ったとしても、こんなのが一生続く世界では、おれは到底生きていけない。


 平和な国に帰りたい。

 スマホいじりながらゲームして、バイトしながらお客の女の子と付き合う妄想していたい。


 いいんだよ。

 言質は取ったんだ。

 生まれた国に帰っていいんだよ。


 おれの精一杯をあっちで生きればいい!




「う、運命の愛の神ーー」

 おれは口を開いた。あの言葉を言うために。


「スノウ!しっかりして!」

 耳にレオノラの必死な声が響いた。

 振り返ると、スノウ副団長が真っ青な顔をしている。

「レオノラ!」

「イツキ!どうしよう!治癒魔法が効かないんだ!血が足りない!」

 レオノラが泣きながらスノウ副団長を支えている。


 そんなん、魔法も使えないおれなんかどうにもできないよ。


「うわぁ!」

「もう無理だ!」


 戦況はどんどん最悪な事態になってくる。みんな怪我だらけだ。


 その中、団長は一歩も引かずに戦っている。


 槍を構え、ライオンとドラゴンの化け物を何とか倒していく。


「団長……」



「スノウ!」

 レオノラが泣き喚く。



「もう、無理だよ!」

「援軍は来ないのか!!」

 騎士達が戦場から引こうとしている。


 その、言葉におれは冷静になった。



 もしかして、あいつなら、何とかしてくれるんじゃないのか?


 おれは空気をめいいっぱい吸い込んだ。


「シリウスー!!!みんなを助けてくれぇぇぇぇ!」


 瞬間、戦場に光が弾けた。


「え?」

『姫よ、助けにきた』

 あきらかに王者の威圧感を醸し出す、ユニコーンのトップが来てくれた。

「はやいな。見てたのか?」

『どうだろうか』


「怪我は治せるの?」

『無論』

 すごいな。


「騎士達の怪我を治してください」


 シリウスの角が輝き。光がスノウ副団長や他の騎士を包んだ。


「え?」

 レオノラが驚いておれの方を見た。


「ーーシリウス。あの化け物を何とかできる?」

 さすがに無理だろうな、と思いながら尋ねると、シリウスは答えた。


『あのキメラ風情、何とかできないと?』


 いや、わかんないよ。キメラって何だよ。


「お願いします!ボッコボコで」

 シリウスはおれをしっかりと見た。


『あれと結婚するのか?』

「え?ああ、まあ」

『撤回せよ。姫は私の姫だ』

 あんたユニコーンじゃないかーー。

「いやー」

 この際男でも文句は言わないから、人間と一緒になりたいんだけど。


『私と結婚するならキメラを一掃しよう』


 何その交換条件。


 いきなり三角関係かよ。


「はあー」

 おれは深い溜め息を吐いた。

 考えるまでもないよな。

「わかったよ。シリウスと結婚する」


『よし』


 シリウスから放たれたビームみたいなモノで、化け物は蒸発していく。


 目を疑うような速さで化け物はいなくなった。

 向こうの陣営から驚愕した悲鳴が起こる。

 何となくだが、「退却だ!」、とも聞こえる。




「なんだ、蹴散らしたのか?」

 ペガサスに乗って優雅に登場したのがアルカンシエルとペガサス騎士団だ。


 いまさら来たのか。

 ムカつくなーー。倒した後で来るなんてーー。

 

 同じ気持ちだったのか、戻ってきたレイン大隊長がペガサス騎士団を睨みつける。



 こいつらがさっさと来てたら、おれシリウスと結婚しなくてよかったんじゃないのか?


 そんな事を考えていたら、団長がおれの側に来た。


「ーーすごい力だな。ユニコーンの王」

『そうだ。姫はもらっていく』


 行くのかーー、おれはしょんぼりした。


「そうか。寂しくなるな」

 引き留めないのかよ。

 さっき、結婚するって言ったの誰だよ。


「団長ーー。生きててくれてよかったですー。でも、おれはヘタレだから、これからも団長が危ない目に合うのを、側で見たくはないです」

 泣きながらおれは本音を語る。


「そうだな。イツキはヘタレだな」

 アルタイルから降りて、団長はおれに近付いた。


 おれの涙を指で払って団長は言った。

「じゃあ、元気で」


 団長の言葉に、おれの涙腺は崩壊した。


「ひどいよ!団長!あんまりだぁぁぁ!ちょっとぐらい引き止めてよ!おれの嫁取るなって言ってよぉぉぉ!ねぇ!団長ぉぉぉぉ!」


「しかし、約束したのだろう?」


 冷静だ。何だこの冷静な人。人間かよ、本当にーー。


『行くぞ。姫』

「まじかよ」

 おれはシリウスの背に無理やり乗せられた。

 デネブが悲しげな声で鳴く。おまえの方が人間らしいな。


「短い間でしたが、お世話になりました」

 頭を下げたおれに団長は笑った。


「あぁ。会いに行くよ」

 そんな爽やかに、ヤック○に乗って、みたいな別れ方再現されてもさ。

「イツキ!スノウ副団長を助けてくれてありがとう!」

 レオノラが駆け寄ってくれた。

「オレも次のユニコーンの契約がんばるから!イツキに会いに行くから!」

 いい奴だなーー、泣けてくる。


 シリウスは少し鳴いた。





 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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