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モブ顔高校生とTS魔女の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第三章 崩れていく日常
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第七十一話 基準

第七十一話 基準





「ぐ、ぅぅぅ………!」



 2人が帰った後、若干慣れつつある腕スプリンクラーで武器弾薬に魔力を付与。


 足が小鹿の様になっているが、どうにかこうにか立ち上がり異界の中を巡る。


 実は、アメミットのダンジョンを攻略する前に、舞さんから頼まれていた野菜があるのだ。それがそろそろ生っている頃なのである。一応、毎日状態を確認しているのだ。


 これも例にもれず魔物の植物。本当の農家さんが聞いたら、その成長速度に度肝を抜かれるのではないか。


 ……いや、ゴーレムを労働力にしている段階で、『殺してでも奪い取る』とこっちの生き胆抜きに来そうだな。


 うん。元々誰彼構わず栽培方法を伝える気はなかったが、本気で気を付けよう。


 そんなこんなで、目的の場所に。


『ケヒヒヒヒ……』


 妖しく嗤う声がする。


 視線を向ければ、そこには『悪魔』がいた。


 緑色の頭に、ルビーの様に深紅の身体。捻じれた角を生やし、腕と足を組んで寄りかかる様な体勢でこちらを見ている。


 黄色い瞳は何の感情も映しておらず、弧を描いた口元は嗤い声以外をあげはしない。



 いやまあ、唐辛子だし。



『デーモンペッパー』



 掌大の悪魔っぽい見た目をした唐辛子。100均で買った支柱に支えられて伸びた枝から、厨二ぽい感じで壁に寄りかかるポージングの悪魔たちというのは、妙にシュールである。


 何なら全部同じポージングだし。唐辛子に『もっとポーズ変えろよ。揃えんな』とツッコむのも無粋ではあるが。


 というかなんで嗤ってんだろ……こわ。


 ヴァイオレットさんから説明を受けた時、『なんか勝手に嗤いますけど、意思もないし動く事もないので安心して下さいね~』と言っていたからこれで良いのだろうけど。


 なお、その辛さは異能者でもない常人が食べると普通に死ぬぐらいとの事。どう考えても一般人が栽培しちゃいけない植物な気がする。


 それでも、異能者界隈や魔物関連で結構高値で売れるらしいのだ。


 自分もそうだが、頑丈過ぎる身体は常人用の『(から)さ』では足りないのである。


 元々は辛い物が苦手だったが、今では有名なカレー屋さんで一番辛いのを注文しても普通に完食できるぐらいだ。


 別に、普段から激辛好きでもないから自分はいいけど、そうでない新規異能者も多いとか。


 そんな人達の希望の星が、この魔界の唐辛子なのである。まあ、今回は換金用とは別に『依頼』された分がメインだが。


 この唐辛子、新規異能者の影響で相場がどんどん上がっている様だから、次はもっと多めに種を買ってもいいかもしれないな。


 取りあえず無事に育っている様なので、次に。


 今度はシソだ。これだけ、他のと違い一応プランターで育てている。


 別に人工異界では虫とか特にいないし、直で地面に植えても問題ないとは思う。だが、あまりセオリーから外れたくはない。


 だって。



『カニ……カニ……』



 ただでさえ見た目がアレ過ぎるのに、プランター無くしたらマジで意味がわからなくなる……!


 直立して伸びる茎。それはいい。普通だ。そこから伸びている葉もおかしなところはない。綺麗に生えている。


 問題はその下。プランターに敷き詰めた人工異界の土と、茎の間。そこに緑色のカニがいるのだ。


 そう、あのカニである。ハサミがあって川や海にいるアレ。


 何故かシソの茎によって貫かれたとでも言うように、悲し気に鳴いている。まずなんでカニが鳴いてんだ。


『葉っぱカニ』


 まんまである。見た目まんまだけど見た目が意味不明なせいで、名前まで意味不明になっていた。


 何なら実物見ずに名前だけ聞いたら『葉っぱに擬態しているカニかな?』とか思ったはずである。あるいは、そんな名前のサボテンがあった様なと思うかもしれない。


 少なくとも、初っ端からこの姿を想像できる人がいたら僕は関わりたくない。脳みそが魔界の住民である。


 これを正常とは言いたくない。言いたくないが、正常に育っている様だ。後日、出荷しても大丈夫だろう。


 恐らく、送り先は斑鳩一族だ。あそこの祀っている土地神も、炎獅子様同様に大戦時の負傷で苦しんでいると梓さんから聞いたので。


 もっとも、直接は見ていないのでわからないが。その辺如月一族にガッチリブロックされているし。


 それはそうと、唐辛子とシソで治る呪いや怪我って……。いや大根脚とロケット人参の段階で大概か。


 よそう。これ以上考えたら頭がおかしくなる。


 後は鳥小屋だが……。



『ごっげっごっごぉお゛お゛お゛───ッ!!』


「……元気そうだな、よし!」



 なんか鳥小屋から作業用ゴーレムが吹っ飛ばされているが、たぶん大丈夫だろう。大丈夫だと思いたい。


 それはそれとして、鳥小屋の周りに追加で石の壁作っておこう。いや別に放置でも大丈夫なんだけどね?こう、今無性に石壁作りたい気分ってだけだから。


 モリモリと高さ4メートルほどの石で出来た壁を作りながら、一人頷く。


 ちなみに、鳥小屋は梓さんとエクレールが1時間で作ってくれた。僕?言われるがまま柱とか支えていたら小屋が完成していたので、いた意味は不明である。


 アレだから。多芸すぎる梓さんと天才なエクレールが凄いだけだから。情けなさで泣いてなんかねぇし。


 そんな感じで軽い見回りを終え、異界から部屋に戻った。敷いて置いた新聞紙に降り立ち、ブーツを脱ぐ。


「はぁ……」


 ベッドに座り込みながら、小さくため息を吐く。


 もう夕方で、とっくに両親も買い物から帰っている。扉の向こうでスリッパの音が通りすぎるのを聞きながら、机の上のスマホを持った。


 完全に気を抜いてしまう前に、『アビス』でも確認しておこうと思ったのである。


 ざっと見た感じ、賑わっているスレッドは『天使さんマジ天使』『エッチな魔物の存在について』『レベル上げ相談所』『木下元総理の叡智な写真集』……。


 レベル上げ相談の所をざっと見たが、どうやら他の新規異能者達も日々レベル上げに勤しんでいるらしい。


 当然、未だダンジョンが恐いという理由でレベル上げをしていない人もいる。


 しかし、昨今の魔物被害もあって自衛手段の為にレベル上げを始めた人の方が多い様だ。


 警察も自衛隊も、頑張ってはいる様だがそれでも頼りにできない。死にたくないのなら、鍛えるしかないと結論を出した様だ。


 つまり、自分と似た様な理由である。


 だがバラツキが多く、ヴァイオレットさん監修の集計スレのリンクがあったのでそっちを覗いた所、新規異能者で一番多いのは『レベル10から15』ぐらいの様だ。


 正直、意外である。てっきり、もう『20』以上ばかりかと。


 かく言う自分も、先日アメミットのダンジョンでレベル20に到達した。使える魔法も、多少増えた感覚がある。


 学生やりながらでこれなのだから、会社や学校を辞めてダンジョン攻略で稼いでいる人はもっと上なのではと思っていた。


 理由は単純。そもそもそういう人が少ない。


 今の生活を投げ捨て、異能者としての生活に全振りするのは不安。自衛の力と副業と呼ぶには多額な報酬。それを得るので十分という人が大半なのである。


 めっちゃわかる……。同意しかねぇ。


 ダンジョン攻略で生きていくとか、一見今後の世界には適した人生プランに思えて、それでいてまともな先駆者がいない魔の領域である。


 一応、新規異能者ではないが先駆者たちはいるのだ。


『フリーランスの異能者達』


 長いからフリーランスと呼ぶが、彼らは如月一族や『残り火』の様にどこかへ属するのではなく、報酬次第で誰にでも力を貸す傭兵の様な存在らしい。


 浪漫溢れる話だが、実態はただの悪徳霊媒師。


 戦後の異能者や魔術師なので、まず才能がない。それでいて中途半端に知識と技がある。


 結果、人として下衆な奴が多いらしい。


 別に魔物が原因ではないのに魔物の仕業として、その解決料を請求したり。


 本当に魔物がいるけど自分じゃ倒せないから、解決したふりして金だけ貰って逃げたり。


 霊能とは関係ない人の暗殺や、誘拐。脅迫などを生業にしたりと、実力も人格もアレな人ばかりというのがヴァイオレットさんからの情報である。


 それでも、一応は多少の……本当に多少のだけど、実力と人格を持ち合わせる人もいるらしい。ソシャゲの最高レアより低い確率で。


 とにかく、あまり参考にはできない人達である。


 話は戻るが、どうやら新規異能者達の中で自分は結構上の方のレベルらしい。その事に、ちょっとだけ自尊心が満たされる。


 だが、上には上がいるものだ。


 新規異能者の中でも、既に『レベル30』に到達している人が日本にいるらしい。


『ダンジョン対策庁』


 ここに書き込みをしている、『水泳大好き』さんと『ゴスロリ』さんとかが、所属しているとの事。


 両者曰く、朝昼晩と、多い時は日に3回もダンジョン攻略に駆り出されるらしい。そのうえ、ヴァイオレットさんの仲介ではないからレベルもまちまち。


 初期の頃は、格上のダンジョンに当たった事もあるとか。


 かなり危険な職場に思えるし、実際退職した人も多いらしい。それでも死者が出ておらず、また『残り火』の過ぎたちょっかいが無いのは『Sさん』という上司のおかげだとか。


 ……なんか、『ゴスロリ』さんが『Sさんの今日の匂い』とか書き込んでいるけど、スルーしよう。


 ともかく、今ならレベル30越えの先輩たちの補助つきでダンジョン攻略が出来るから、試しに所属してみないかと勧誘を行っている様だ。


 なんなら、『辻狂信者な新人さんも入りました!』とも書いてある。


 ……辻狂信者ってなに?こわっ。


 まあ、その勧誘は上手くいっていない様だ。『信用できない』『政府の犬』『残り火がセクハラしてくる職場じゃん』等々。これでもマイルドなもので、大半はそのまま読み上げるのは流石に気が引ける物ばかりである。


 匿名掲示板って怖い。


 そう思いながら、思ったより有益な情報はなかったとスレを閉じ。



 代わりに『エッチな魔物の存在について』というスレを開く。



 とっても有益な情報ばかりだったので、しっかり『資料』を保存した。『木下元総理の叡智な写真集』の方はって?


 叡智な姿ではあったが、色々足りなかったので、自分は友人である巴君の写真を大切にする事にした。





読んでいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつもありがとうございます。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


Q.どうして幸太朗は学校通いながらなのに、他の新規異能者よりレベルが高めなの?

A.主人公補正ですね!やったねモブ太朗!

 主人公補正:マジで死んじゃう5秒前案件との遭遇率上昇。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 攻略に全振りできるのはどこかの公僕さん達かあるいは先見の明があった者。 たまたま都合が合った自由な人達や無敵の人くらいだろうかね。 [一言] >ゴーレムを労働力に 各種業界垂涎のシロモノだ…
[一言] 幸太郎がモンスター氾濫の緊急速報とかでテレビにチラ映りしたり写真集とか出したら辻狂信者って増えたりするもんなの?
[一言] >写真 良く考えたら、 ダンジョン内大抵巴君が最後尾で、 スマホで敵のステータスを撮影してた。 要は透明な鍋の中に隠れて盗撮できる。 つまりモブ太郎のいやらしい形な可愛いお尻をいっぱい…
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