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モブ顔高校生とTS魔女の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第一章 天使が降臨した日
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第十話 怪しい

第十話 怪しい




 色々な事があり過ぎた4月も、あと1週間もせずに終わるという頃。夏の様に暑い日もあれば肌寒い日もやってくる中、自分は学校のグラウンドにいた。


 他の男子生徒が100メートルを走って記録を計っているのを、ぼんやりと眺める。ちなみに女子は体育館でバレーボールだそうな。


 自分は既に走り終わったわけだが……この体、かなり身体能力が高い。それこそ全力で走ったら、運動部の人より速いと思う。


 だが藤田さんの時みたいに筋肉の付き具合とのミスマッチで異能者と見抜かれるかもしれないし、何より今学校で目立つ事はしたくなかった。


 端的に言って、友達がいない。


 入学してすぐの、友達作りのきっかけになりそうなレクリエーション等は最初の1週間の内に終わってしまい、以降は普通の授業ばかり。グループが出来上がっている今、そこに加わるのは非常に厳しかった。


 ……まあ、もともと自分がコミュ障な事が一番の原因だけど。


 ともかく、こんな孤立した状態で運動部より身体能力が高いとなったら、悪目立ちする。


 異能者と見抜かれるのも嫌だし、何より虐めの標的にされそうだ。


 幸い、自分は少し、ほんの少しだけ、影が薄い方である。周りの走る速度に合わせれば、特に注目なんてされない。


 そんな事をつらつら考えていると、授業も終わり片付けに。


 ハードルを抱えて周囲の生徒達が楽し気に話すのを横目にしながら、倉庫へとぼとぼと歩く。


 なんとも、自分の高校生活は灰色な出だしとなっていた。



*    *     *



 そんなこんなで学校を終え、今日も藤田さんに特訓をしてもらい、家に。


『滅茶苦茶怪しいってその爺さん』


「やっぱり?」


 電話の相手は巴君である。


 内容は、藤田さんについてだった。


『だってお前、人気のない所で素振りしてたんだろ?なのにそれを偶然にも見つけた人が元機動隊で、そのうえ指導までしてくれるなんて都合が良すぎるって』


「そうだよなぁ……。でも、悪い人には思えないんだよ」


『そうかぁ?もしかしてアレじゃね、アレ。その爺さんって元々この国にいる霊能力者とか?お前をスカウトする気なんじゃね?』


「いや、たぶんそれはない。魔力なんてほとんどない人だし、それに……」


『それに?』


「……嘘をついているとは、思えない」


『ああん?』


 怪訝そうな巴君の声がスマホ越しに響く。


『どうしたよ珍しい。コミュ障のお前がそんなに人を信じるなんて』


「コミュ障は余計だ。なんか、異能者になってから妙に勘が鋭くなったじゃん?」


『まあ、それは確かに』


「本能というか、なんというか。藤田さんの言っている内容は全部本当だと思うんだよ」


『……ほーん』


 自分で言っていて、らしくないとは思っている。


 理性的に考えたら藤田さんが怪しいという巴君の意見は、とても正しい。なんせこっちにとって彼の存在は都合が良すぎた。


 しかし、これぐらいの幸運は別に不思議でもないと思う。


 思う、のだが。


『随分と信用してんだな、その藤田って爺さんのこと』


 妙に巴君の声に棘がある気がする。


『オレとは最近遊ばないくせによー。学校でももう友達ができて順風満帆かこの野郎』


「いや、友達は……」


『え、まさかまだボッチなの?』


「ボッチ言うなぁ!?」


 気にしてるんだぞこっちは!?


 これでも努力はしているのだ。待ってばかりでは何も始まらないと、昼休みとかにちょいちょい他の生徒へ話しかけようとしているのである。


 ただ、すこーしばかりタイミングがわからないというか。『え、これ下手に話しかけて変な奴って思われない?』と不安になっているうちに時計の針が勝手に動いちゃうだけで!


『はぁぁ、マジでコミュ障だなお前』


「楽しそうに言うなや。悪魔か」


『魔女だが?』


「へっ!そういう君だって他に友達いないくせに」


『うっせぇオレは孤高なんだよ孤高。選んで1人でいるの!』


「ボッチ乙」


『殺すぞ』


 そんないつものやり取りを終えスマホの画面を耳から離すと、4枚羽のアプリアイコンに何かマークがついていた。


「ん……?」


 なんだと思ってタップすれば、どうもまたアップデートが入ったらしい。


 ありがたい事である。さてはて、今度は読める範囲が増え────。



「『おすすめ商店案内:異能関連専門店ヴァイオレット』……?」



 普通に読めた。だが、読めた文書の意味がわからない。


 え、どういうこと?



*  *   *



 土曜日。学校もなく、藤田さんとの特訓もお休みにさせてもらった日。


「ふっふっふ……遂に、遂にこの時が来たぜ」


 そんな事を呟く、黒い帽子にサングラス。そしてマスク姿の非常に怪しい人物。我が友巴君の方を、じっと見つめる。


「巴君」


「なんだ。店はまだ少し先のはずだぞ」


「離れて歩いてもらっていい?」


「なんでぇ!?」


「不審者の仲間と思われたくない」


 顔が見えないけど、恐らくギョッとした様子の友人から1歩距離をとる。


「なんでだよ!これぐらいの変装は必要だろう!?行くところが行くところなんだから!」


「いやわかるよ。わかるんだけどさ。変装の方向性が違うじゃん。隠せばいいってものじゃないじゃん」


「はぁぁあ?じゃあなんだよ。てめぇの伊達メガネとマスクだけのスタイルが正解だと?」


「そりゃそうでしょ」


 人間、眼鏡の有無とか髭が生えているかとかで他人を判断しちゃうものだ。


 実際、海外のどっかで杜撰な変装しかしていなかった強盗団が、逮捕までにかなりの時間がかかったなんて話もある。


「少なくとも怪しさしかないよりはマシだよ。せめてグラサンはやめろ、グラサンは」


「ぐぅ」


 ぐうの音だけは出して、渋々グラサンを外す巴君。


 自分達は現在、隣町の駅近くまでやってきていた。目的は勿論、アプリに表示された『異能関連専門店』とやらである。


 常々異能とかその辺に関する知識や物品を扱う店の情報はないかと思っていたものの、まさか本当にアプリで教えてくれる様になるとは。天使様々である。


 しかし、警戒は必要だ。


 なんせ、木下元総理が黒服連中に追われていたと聞く。その黒服が日本の霊能組織だった場合、厄介な事になるかもしれない。


 具体的にどういう事になるかは、さっぱりわからないけど……。そもそもあのおちゃらけた会見をどこまで信じればいいのかわからないし。


「それにしても楽しみだぜ……!」


「滅茶苦茶テンション高いな」


 まあ、自分もこういう秘密の武器屋みたいなお店にこっそり行くのは厨二心がくすぐられてしょうがないけど。


 だが、巴君はそれだけではないらしい。


「あったり前だろう?もしかしたら男に戻れる手段が見つかるかもしれないし、そうでなくてもダンジョン攻略に役立つ物があるはず。胸が躍るぜぇ!」


 胸を躍らせるな。揺れる。


 腕をぶんぶんした勢いでエロ漫画だったら『たゆん♡』『ぼいん♡』と効果音が出ていそうな爆乳から気合で視線を逸らし、アプリに表示された地図を確認する。


 ここまでの道中、巴君はひたすら周囲からの視線に怯えるように自分の後ろで縮こまっていたが、今歩いている道なんかは人通りがまったくない。


 両脇にはシャッターの閉じた店や、『クローズ』とドアに吊るされた飲み屋なんかが並んでいる。


 普段ならまず通らない場所に緊張しながら、背負っているリュックに意識を向けた。


 万が一に備え、中に木刀を入れてある。だが、はたしてどこまで通用するか。


 もしも荒事になったとしたら、相手はきっとベテランの異能使い。とても勝てる気がしない。天使は彼らを『頼りない』みたいに言っていたが、自分達とて駆け出しも駆け出しなのだ。


 小躍りしそうな巴君を傍目に、自分は冷や汗が止まらなかった。


「……ここだ」


 路地の奥。細く通りづらい道の先に、それはあった。



『異能関連専門店ヴァイオレット』



 外観はお洒落な喫茶店。掲げられた看板の文字さえ無視すれば、それこそドラマで主人公達がお茶でも飲んでいそうな店構えである。正直、こんな路地裏には似つかわしくない。


 巴君に視線で確認した後、そっとドアノブを握る。


 さてはて、鬼が出るか蛇が出るか……。


 意を決して、店の中へと入った。


「いらっしゃ~い」


 出迎えたのは、少し気の抜けた女性の声。


 綺麗に整理された商品棚が店内に並び、ガラス越しに色とりどりの奇妙な石や短剣が置かれている。


 更には映画でしか見ない様なショットガンやライフルが飾られた壁も視界に入っており、一目でまともな店ではない事がわかった。


 だが、最も異質なのは声の主。


 白いシャツに黒のベストと、赤い蝶ネクタイ。下は黒のタイトスカートで、丈が短く足を組んだら中が見えてしまいそうだ。それぞれの仕立てが非常に良い高級品だという事は、素人の自分でもわかる。


 ここまでは、いい。問題は、それを纏う人物。


 ……否。()()と評するのは、間違っているかもしれない。


 腰まで伸びた紺色の髪は、前髪も長く右目を隠している。そして、覗いている左目は垂れ目がちな三白眼。


 目鼻立ちは整っており、紫の口紅が塗られた唇も瑞々しい。


 手足も均整がとれており、スタイルも出る所は出て引っ込む所は引っ込んだ、グラビアモデルみたいな体つきだ。


 しかし────その肌は、『真っ青』だった。


 比喩でもなければ、手術で色を変えた様にも見えない。完全な青色。


 何より薄っすらと感じる魔力は、人のそれよりもコボルトに近い。もはや疑う余地もなく、この女性は────。



「お初にお目にかかります。この店の店長の、ヴァイオレットで~す。……偽名ですけどね!」



 魔物。


 店で待ち構えていたのは、鬼でも蛇でもない。


 人語を介する、魔物だった。


 サメみたいな歯を覗かせてニタリ、とした笑みを浮かべながらダブルピースをする青肌の女性に、マスクの下で自分の頬が盛大に引きつったのが自覚できた。


 天使様……ちょっと詳しく説明プリーズ?





読んでいただきありがとうございます。


感想、評価、ブックマーク。本当にありがとうございます!どうか今後とも今作をよろしくお願いいたします!


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― 新着の感想 ―
[一言] マッチョなオカマじゃなかった……
[一言] この魔物って鬼子母神とか魔界側から天界側に寝返った逸話がある系でしょうか?首相が淫魔の血を引いているのなら淫魔の中には人間にほだされて餌として人間を見なくなったのとかも居そうですし。
[良い点] >閑話 派閥はまあ分かるとして、そういや六枚羽ということは熾天使だよな。 あくまでも人間が定めたものでだけど位階としては最上。それがボランティアやってる辺り 予測も書かれていたけど人類ヤバ…
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