表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/99

第78話 無邪気な魔法剣士①


 『ギャングエイジ』と聞いたとき、ソーチはやはりか、と思った。


 ギルドランキングでも最上位に位置する、ギルド『ギャングエイジ』。

 羅刹天ほどではないが、こちらも露出が少ないギルドで、一部では『自由人の集まり』などと呼ばれているが、実力は本物だった。


(そのリーダーがこんな子どもみたいな見た目だったなんて)


 ソーチは少しの驚きと、なるほどなという納得感を同時に味わっていた。


「お仲間をお呼びにならないのですか?」


 ユーライの声だった。

 戦闘中に奇襲などをされてはたまらないので、カマをかけたのだ。


「仲間? あぁ……いらない。つまんないから」


 言葉の通り、ポルッカはつまらなそうな顔をした。


「聞いてよ。今日は羅刹天とかいうギルドから戦いが出来るって聞いてここまで来たのに、やらされたことといえば逃げられたムカデと精霊エレメンタルを探すこと。ひどいと思わない?」


 ポルッカは敵を前にして、なぜか味方の愚痴を言い始めた。


「だからさ、せっかく僕が見つけたんだから、僕が独り占めしちゃおうかと思ってね」


「そうか。だが僕たちには時間がない」


 そういうと、ソーチは攻撃魔法を撃つ準備をする。


「へぇ……時間がないんだ」


 ポルッカはイタズラを企む子どものような笑みを浮かべた。


礫砲クラヴァル・キャノン


 ソーチが放った魔法は、ポルッカの脇をスラリとすり抜けた。


 ソーチの魔法がコントロールできていなかったとか、そういうわけではない。

 ごく自然に、最小限の動きで、ポルッカは放たれた礫を避けた。


〈疾走〉


 ポルッカがスキルを発動させ、ソーチを中心とした円を描くように走り始めた。


「僕、避けるのは得意なんだよね」


「面倒ですね」


 ソーチの言葉だ。


地盤泥化マッドライズ


 まず動きを遅くしてやろう、とソーチは考えた。


「ぬっ?」


 いきなり柔らかくなった地面に、ポルッカは一瞬足を取られる。


風の刃(ウインド・カッター)


 すかさずユーライが魔法を放つ。


〈回避〉


 再びポルッカのスキル。

 間一髪で魔法の刃を避けた。


「危ない危ない……〈透明化インビジビリティ〉」


「なにっ!?」


 ポルッカは透明化の魔法を発動させた。


 動きを見るからに、ポルッカは戦士職だろう。

 にも関わらず、ポルッカは魔法を使った。


透明化インビジビリティ

 

 負けじとポポもソーチとユーライに透明化をかける。

 が、少し遅かった。


「ここだよっ」


 弾む声は、ソーチの背後から聞こえた。


 そしてソーチが行動を起こすより前に、ポルッカは手にした短剣でソーチを()()()


「ぐぅっ!」


 そしてそれは、確かなダメージとなった。


 物理的な攻撃を一切無効化する。

 それが精霊エレメンタルの能力のはずだった。


「僕、魔法剣士マジック・ウォリアーなんだよね」


 魔法剣士マジック・ウォリアー

 その名の通り、魔法が使える戦士である。

 どちらも中途半端になりやすい代わりに、自身の強化、剣への魔力付与など、その汎用性は非常に高い。


 そしてソーチが傷を負ったのも、ポルッカが剣に魔力を付与したからだった。


(なんて厄介な敵……)


 ソーチにとっては天敵といってもよかった。


俊敏性向上スピード・ブースト


 ポルッカは自身のスピードを高める魔法を使う。


〈疾走〉

超加速アクセラレータ・アップ


 そして2つのスキルを同時に発動し、目にも止まらぬ速さでソーチに向かう。

 

 そして——


〈刺突撃〉


「ぐぁあっ!」


 ソーチの腹(にあたる部分)に短剣が突き刺さる。


森林の力(フォレストパワー)治癒ヒール


 ポポが回復魔法を使う。

 

 膨大な魔力を有するポポだが、無限にあるわけではない。ポポの魔力は尽きかけていた。


 今回〈大治癒グランド・ヒール〉ではなく〈治癒ヒール〉を使ったのはそのためだ。


土津波アース・ウェーブ


 ソーチは手を止めない。


〈回避〉


 しかし、当たらない。


 今度は自分の番、とでも言わんばかりに、ポルッカは笑みを作ると、アイテムボックスから取り出したであろう丸い瓶をユーライに投げつけた。


 ユーライに当たってガラスは割れ、中の液体がユーライの身体に飛び散る。

 黄褐色の液体はユーライの身体にベッタリと張り付く。


「その液体、粘着力が凄いだけで、実はなんの効果もないんだよね」


 相変わらずポルッカは戦場には似合わない口調でそう言った。


「でも、鬱陶しいでしょ? それ。お気に入りなんだぁ」


 ブラフかもしれない。

 だが、ブラフでないかもしれない。

 そんな決着のつかないことを考えるより、ユーライは先に手を動かした。


「〈眷属召喚サモン()インセクト()百足センチピート〉」


 ユーライのスキルによって、地面から次々と百足センチピートが生えてくる。


 数にして7体。


「わーぉ、すごい魔法……いや、スキル?」


 素直に関心しているポルッカに百足センチピートたちが襲いかかる。


「〈回避の舞踊(ダッジ・ステップ)〉!」


 ポルッカの魔法だった。

 

 踊るかのように、襲いかかってくる百足たちを避ける。


揺れる大地(アース・スウェイ)


 ソーチは百足たちを援護すべく地面を揺らす。


草縄グラス・ロープ


 ユーライの魔法により、ポルッカの足元の草が動き出す。

 草はポルッカの足首をガッシリと掴む。


泥弾マッド・ショット


 身動きが取れなくなったポルッカにソーチが攻撃魔法を。


「ぐぅ……」


 この戦闘で、初めてポルッカにダメージを与えることができた。


「もぉ!」


 声をあげながら、ポルッカは短剣で草を断ち切る。


 そうしている間に、ポルッカは百足たちの間合い。


 戦士としては比較的軽装なポルッカの露出した肌に、百足たちが噛みついてくる。


「ぃたいっ!」


 手首に噛み付く百足を振り払おうとするが、百足の強力な咬合力はそれを許してくれない。


〈斬撃〉


 今度はスキルを発動させて、百足を斬った。

 百足は口だけをポルッカの手首に残して、地面に落ちた。

 

 同じように、2体、3体とポルッカは百足を殺していった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ