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8.アイクの病状


「これは……」



 神妙な面持ちでいる医者の反応を見て、俺は声もなく恐怖の時間を過ごす。



「先生、どうですか?」



 そんな俺とは裏腹にアイクはそう聞いた。



「お兄さんは、分かるよね?」



 背中を向けたアイクの服を、まくりあげながらに医者は聞いてくる。


 ブリンクが逮捕された翌日の放課後、俺はアイクと病院にやって来ていた。


 午前中は、ブリンクが学園から退学処分となったことと、魔人が現れたということで学園内で話題が持ちきりになっていた。



「やっぱり進行していますか?」



「そうだね……。ただ症状としては分かりにくいのもあって、現状どうこうなることはないとは思うよ。こんな病気自体症例もないからね。ただ、これはアイクちゃんの異能力の暴走がより強まってきた。そう考えるのが妥当だね。それなら手術によって進行を遅らせることは可能だよ」



 アイクが席を外してから話を聞くと、手術費用は三百万メル。


 俺が現状、学園から支給されるポイントが十万ポイントであるから、三年分という計算だ。


 どうあがいても今のままでは手術は厳しい。



「覇王ゲームに勝てば……」



「お兄さんも気張りすぎないようにね」



「そりゃ、やっぱ修行するしかねぇぜ」



「そうなるか」



 ギーには覇王とまでは言っていないが、大まかな能力のカラクリについての説明をした。


 それによるギーの見解も、地力の強化に尽きるとのことだった。


 地力を強化することの利点としては三つ。


 一つは、地力での対処がしやすいこと。


 次に、覇王になったことでの恩恵である強化倍率も、地力が上がることで底上げが出来る。


 最後に、使用後の反動を抑えれる。


 この反動を抑えることが何よりも大事だ。


 毎回寝ていたらこれから先が思いやられるからな。



「ということで、今回も知り合いを呼んできたぜ。この二人が一週間のお前の先生だ」



 ギーはどういった伝手か、筋肉隆々なムキムキな婆さんと、怪しげな青いマントを羽織った闇の魔女のような爺さんを連れてきた。


 性別に関しては、もしかしたら間違えてるのかもしれない。


 そんな爺婆を見ていると、言い知れない不安感が押し寄せた。



「ギー坊よ。お前は今何と言ったかね?」



 ムキムキな体には似合わない、甲高くしゃがれた声でそう言った婆さんは、やはり婆さんであった。


 そして聞こえなかったというよりも、聞こえ方が間違えたかのような聞き返しをした。



「ぁい? 今……何と?」



 こちらの魔法使いに関しては爺さんで間違いない。


 しかし、相当耳が遠いのか、こちらの言葉を理解するのは難しそうだった。



「婆さん、悪いが一週間だ。それ以上は時間がねぇんだ」



「それは無理な話だね。冷やかしならわたしは帰るよ」



「普通は無理だろうな。ただ、こいつは薬漬けをしても死なないタフなやつだぜ」



 ギーは何か分かっているかのような物言いをした。



「それは異能力かい? それならイケるかもねぇ……」



 婆さんは口角を上げながら、何か思いついたような、納得したような顔をして俺を見つめた。



「んぁ?」



 そして老魔法使いは、ギーの隣に何かが見えたかのように見つめ、首を傾げた。



「まずはとにもかくにも知識からだね。気も魔力も肉体も、疲労してから回復するという一点は揺るがない。これだけは覚えておくんだよ。異能力に関してはわからないがね」



 老人二人を紹介し、ギーは帰る。

 そしてそのままに老婆の授業が始まる。



「あの……俺はレイスと言います。名前だけ聞いても良いですか?」



「ごめんねぇ。年がいくとね、色んな工程をすっ飛ばしちまうんだ。わたしはユス婆とでも呼んでおくれ。こっちはカウ爺」



「はへ?」



「よろしくお願いします!」



 カウ爺に関してはよくわからないが、ユス婆は先生としてはまともであろう。


 それは何よりもユス婆の肉体が証明している。



「とりあえずこれからの流れを説明すると、筋肉を極限まで鍛える。そして魔力と気も使い切る。このサイクルを耐えられるまで続ける。それだけだね」



「それだけですか……」



 どうやら肉体だけでなく脳まで筋肉で埋まっているらしい。


 急に不安になってきた。



「不安になるのも無理はないけどね。一週間で強くなりたいって、ちょっと修行しただけで強くなれたら苦労しないよ。レイ坊は薬に耐えられるんだろ?」



「薬……?」



「そうさね。これがこの修行の一番の肝」



 そう言って、厚い胸板もとい胸の谷間から巾着袋を取り出し、中から丸い粒を手に取った。



「それが薬ですか?」



「これはこの島の最先端技術を取り入れたもの。通常は疲れた時に飲むなんて物じゃない。肉体の損傷や魔力、気の欠乏。そういった症状の時に飲む薬さ。アンタには文字通り血の滲むような修行をして薬を飲む。この繰り返しをしてもらう」



 そう言いながら、持参してきていたのであろう木刀を、横に振り俺の腹にぶつけた。



「オォエッ」



「最後にはこれの百倍の強さで殴るからそれを耐えられるようにするんだね」



「は……はい」



「何してるんだい? 早く腕立てでもするんだよ」



 こうして俺の修行は始まった。


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