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47.誘拐


 午後から、総合組手があるがそれまで時間があるので、テレマナ姫とアイクと屋台巡りをすることとなった。


 テレマナ姫はこれから仕事が立て続けにあり、午後からの総合組手の実況もやるらしい。


 総合組手とは、文字通り総合的な組手でありなんでもありの試合。


 気の専門の試合が、覇王ゲームだけでなく種目としても少ないのは、特区のほとんどの者が主力としていないからだ。



「イカ焼きたべたい!」



「あんまり先に行くなよ」



「はーい」



「アイク様、今日も元気ですわね」



 テレマナ姫にはそう見えているのかもしれないが、最近のアイクの症状は良くない傾向にある。


 アイクの症状は、通常時に頻繁に体の痛みが起こり、ひどい時だと体を動かすことも難しくなる。



「お兄ちゃん、あの串焼きも食べたい!」



「ああ。いいぞ」



「姫も……。ん? どうしたんだ?」



「い、いえ。何か視線を感じたのですが……」



 テレマナ姫は、先程から後ろが気になるようで、頻繁に振り返る様子を見せていた。



「俺は何も感じないけどな」



「そうですね。どうやら気のせいのようです。それよりも、この近くでレイス様のクラスのお店があるのですよね?」



「あははは……」



 俺は店に行きたくはないのだが、アイクの入れ知恵によるものだろう。



「せっかくなので寄りませんか?」



 目と鼻の先にある、俺のクラスの店に訪れた。



「レイス! 手伝いに来てくれたのか? それと……。お姫様?」



 とぼけた顔でギーは言った。



「ああ。せっかくだから手伝うよ。何もしてなくて気が引けていたからな。テレマナ姫はそこらの席にでも座っててくれ」



 サッと着替えて戻ると、何やら騒がしい席があった。


 嫌な予感がしつつも、その輪の中に入ることにする。



「レイス様! そのお姿はよくお似合いですね!」



「レイスくんお姫様とも知り合いなんだ? すごい!」



 何もしていないが、なぜか称賛を受けることとなった。



「悪いが、今はお忍びってことになってるんだ。このことは内密にして騒がずに頼むよ」



 その席に集まる者に、それだけを伝えて離れる。



「レムレイ様も午後からも頑張ってね!」



「そうね。なんたってレムレイ様は、今この特区で一番の有名人だからね! こんな所手伝わなくていいからゆっくり休んでてよ。応援してるからね!」



 クラスメイトから、そう言われて追い出されることとなった。


 着替えもさせてもらえず、執事服姿で。


 やっぱり邪魔に思われていたのだろうか。



「レイス様はやっぱり人気なのですね」



「お兄ちゃんあんなに応援されたら、負ける訳にはいかなくなっちゃったね」



「ああ、そうだな」



 元より負けるつもりはなかったが、応援の分だけ頑張ろうと思えた。



「では午後からの試合のために、引き続き食べ歩きしませんか?」



「きゃあっ」



 そんな、どこからともなく聞こえた悲鳴に反応し振り返ると、以前にも一度見た大きな犬型の魔物、グンルヲンが走っていた。


 屋台に群がる人々を、次々となぎ倒しながらこちらに向かってくる。


 ぶつかるかと身構えていたが、しばらくすると横に逸れホッとした。



「レイス様ー!」



 しかし、狙いは俺ではなくテレマナ姫だったようだ。


 グンルヲンの上には人が乗っており、その者によってテレマナ姫を誘拐された。

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