42.夜の特区祭
「レイくん、疲れているところごめんね。すぐに戦える?」
ミラと目が合い、第一声がこれだった。
二区の森。
普段は新種の魔物が溢れていると聞く森。
ここが取引現場となっていた。
今日も、例外なく魔物がそこかしこに確認出来る。
それを割るように、対立する二つの組織がすでに争っていた。
ゾンクスと警備部隊だ。
ミラも手にした扇子で、竜巻を起こし攻撃を繰り返していた。
「日も傾いているし早く終わらせるぞ」
「レイくんはあの人を追って。あれが明日の試験監督となる者よ」
ミラの目線の先には走って逃げる者がいた。
おそらくあの者だろう。
この先には魔塔がある。
この方向からしても、魔塔に逃げるものと思われる。
相当な距離の差があるので、このまま追いかけても追いつくのは厳しそうなので、先回りして魔塔を目指すことにした。
道中、しばらくは敵に囲まれることも多く、血の異能力によって鎮圧し、急いで魔塔を目指す。
「おい待て」
「またゾンクスの者か。しつこいな」
試験監督を追いかける俺を追いかけてくる者は、全て血の弾丸で倒した。
そして、魔塔を目の前にした頃、先程の人物に追いついた。
「くっ。ここまで追手が来ているとは……。これも魔塔長ならなんとかしてくれるはずだ……」
「魔塔長……?」
魔塔長。
イベルに渡された記憶の中には、魔塔長という単語だけは残っているものの、魔塔長の顔は残っていなかった。
この特区においての、権力者の一人というのは周知の事実だが、そこまでの人物がこの件に絡んでくるとなると、いよいよきな臭くなってきた。
俺は、魔塔に入ろうとする試験監督よりも早く、魔塔の入口にたどり着く。
「もう観念しろ」
「魔塔長!」
試験監督も、この状況に諦める様子はなく、大声で叫んだ。
しばらくの静寂の後、俺の背後にある魔塔の入口の扉がギーっと音を立てて静かに開いた。
「うるさいわね。もう夜よ? 今日は来客のアポはないわよね?」
聞き馴染みのある声に振り返ると、そこには魔女のマントとトンガリ帽子姿のイベルがいた。
「イベル……?」
「あら、王子様? ……と、あなたは確か……。誰だっけ?」
イベルは、状況がイマイチ掴めていない様子だ。
「魔塔長、私は明日の試験監督です! 明日のクイズでの問題文の件、警備部隊にリークされてまして、問題文のすり替えを要求されてます!」
「イベル、お前はこの件に関わっているのか?」
「あちゃー。ここで王子様に出くわすとは。王子様には出来れば知られないように、と思っていたけど仕方ないわね。簡単に説明すると、これはあなたのやりたいことを私が代わりにしようとしているの。あなたのためなの」
「俺がやろうとしているのは、覇王ゲームの制覇だ。これによってアイクの病気も治せる見込みがあるんだ! 邪魔はしないでくれ!」
「いい? これはね、あなたに返していない記憶の中であなたに頼まれたことなの。それを実現するために、私は魔塔長にまでなって今も計画を進めているの。説明するわ。ついてきて。試験監督さんはしばらく待ってくれるかしら?」
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