39.記憶のかけら
「王子様。大丈夫かしら?」
目を開くと、そこは幾度となく見た魔塔最上階の景色。
街を一望出来る、お気に入りの景色だった。
そして、イベルにひざまくらをされている。
「それなりに長い付き合いだったんだな」
「それなりにって感じかな?」
「それと、お前は随分と性格が変わったんだな?
「そんなことないわよ?」
イベルはとぼけた表情で返事をする。
「あと返してもらった記憶もかなり断片的な気がするんだが?」
「一気に返すとあなたの体がもたないわ。それに異能を使うというなら、その記憶だけあれば十分よ」
「なんでここに来たんだ?」
「ここは私の思い出の場所なの。以前は、あなたの同伴なしで、ここには入って来れない所だったのよ」
「そうなのか」
「そのうち落ち着いたら、残りの全部の記憶を返すわ。王子様との記憶を、共有したいのは私も同じよ」
「複雑だな……。それとその王子様ってなんだ?」
「それはヒミツ」
指を立ててウインクをし、ポーズを取るイベル。
イラつくが様になる。
「それよりも近くにいて平気なのか?」
「私としては、もっとひざまくらしてても良かったのよ?」
「俺が吸血鬼だからってことだ」
「私も、この一年間遊んでたわけじゃないわ。あなたと肩を並べて歩きたいもの。色々努力したのよ」
「平気なら良かった」
「それより良い景色ね。祭りの賑わいも、夕焼けも一望出来るわ」
「ああ。もうそろそろ帰らないといけない時間だな」
「つれない言い方ね。さっきまではデレデレだったくせに。記憶を戻して嫌いになった?」
「この能力を早く試してみたいんだ。俺は絶対に勝たなきゃいけないんだ」
「アイクちゃんのことね……」
「そんなことまで知ってるのか」
何でもお見通し、という様子のイベルに恐怖を覚えつつも、塔を降りることとなった。
「それよりもクイズは大丈夫なのかしら?」
「クイズ?」
「そんなことも知らないの? 他の競技は、あなたならどうにかなるかもしれないけど、クイズに関してはどうにも出来ないでしょ」
「それなら大丈夫だ。予選での参加者の試験結果は低レベルだったからな」
「そんなこと言って同じレベルなんでしょ? 今から勉強しても仕方ないから、対策はしっかりと考えないとね。それに妨害されてるのよね? クイズも妨害されてもおかしくないと思うわよ」
「そうだな。対策は考えてみるよ」
「それでは、王子様。またね」
イベルは微笑みながら去って行った。
この異能の使い勝手は、以前と比べてしっかりと使えるのだろうか。
帰ってから試そうと思う。
明日いきなり使えるか不安だからな。
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