30.アイドルの能力
「ファン? 何を言ってるんだ?」
「レムレイ様!」
「おい! ファンとか言って、それは悪口じゃないのか? 嫌がらせか何かか?」
「とんでもない。一部のファンの間では、Sランクでしかも謙虚なところが人気なんですよ」
「そんなことはないだろ……」
「いえ! そんなことはあります! ファンクラブまでありますから! まだ力を隠しているって話までありますからね!」
「ファンクラブ……」
テンカは、身を乗り出して熱弁しているが、テンカの口からファンクラブなどという言葉を聞くのは違和感しかない。
「それでその子は?」
「知り合いの子だ。しばらく預かることになっているんだ」
「子供扱いするな」
興奮した様子のテンカと違い、リアは今すぐにでもどこか行きたいといった態度だった。
「おい、あれテンカじゃないか?」
と、ゾロゾロと人が集まって来たのでこの場を離れることにした。
「あいつらしつこいな……」
見た目だけなら、アイドルの追っかけのようにも見えるが、その執念はファンのそれとは違うものに思えた。
「レイス。あやつらの顔、覚えておらんか?」
リアの声によって思い出す。
リアと出会った日の男達だった。
追ってきている男達は五人。
そして、俺は後ろの男達目掛けて火魔法を放つ。
商業エリアで、ライブ後ということもあり人も多いので力は抑えたが、多少のめくらましになれば良いが。
「レムレイ様、これは何ですか? ファンだって思ってたのに、なんでこんなことになってるの?」
「テンカ、実は組織がお前を狙ってるんだ。理由はわからないが、急いで逃げなきゃいけないようだ」
「組織? 何のことですか? 私、普通のアイドルなのに」
「何か秘密があるみたいで、やつらはお前を拉致しようとしている。信じてくれ」
「信じるって、どうすればいいんですか? こんな急に……。何が起きてるの?」
「後で全部説明するから、今は逃げないといけない。必死で逃げてくれ」
「はい」
この逃走の場面で、頬を赤らめながら走るテンカ。
そして、周囲の景色は先程の商業エリアとは打って変わり、森に変化した。
テンカの能力だろう。
そして、男達に向かって飛ぶ複数の火魔法。
あれはおそらく、ライブでも見たホログラムのような炎だろう。
先程の火魔法を見た男達は、避ける他なく逃げ切ることに成功した。
「小娘、大丈夫なのか?」
「えぇ……」
無理をしていたのは承知だが、テンカは真っ青な顔で息も切らし、地面に膝をついた。
先程の森のホログラムが消え、裏路地のような場所にいた。
「どうしたんだ?」
「私の能力は、周囲の景色を、コントロールすることなのですが、声が届く範囲に、限られます。なので、声を、届けるために、魔力を込めていますが、魔力使用の疲労と、能力使用の疲労が、同時に来ます」
息を切らせながら、テンカは言った。
ライブ中、ずっと景色を変えていたのもあり、体力が尽きている頃だろう。
「また来たか……」
「レイス、どうするのだ?」
「戦うしかないようだな」
「逃げてください……」
「何言ってるんだ? 狙われてるのはお前だぞ。お前を置いていったら、今まで走ったのは何の為だったんだよ」
「レイス頑張れ。わらわは観戦する」
もうすぐそこにまで、追手がやって来ていた。
「もう逃げないのか?」
四人の内の一人がそう言った。
「あの人ごみの中で戦うのは、被害が増えるからここまで来ただけだ」
腰に携えた刀を抜き、気を込めた。
四人の内の三人は、近接戦闘に特化しているのか、俺に向かって剣を振り回してきた。
しかし剣速も脅威には感じない。
残りの一人が、火魔法によって攻撃を仕掛けてくるのが厄介ではあったが、実力の面では今までの相手に比べると見劣りする。
火魔法をメインに使う者が強そうだが、シャンヌに比べればそこまでの強さは感じない。
しばらく四人と戦闘し鎮圧した頃、また人影が現れた。
「協力感謝する。それよりも、今日は頼んでなかったよな?」
ヴィプスだ。
「偶然遭遇してな。それよりあと一人いたはずなんだが……。あいつだ」
残りの一人が遅れて到着した。
こいつも追いかけてきていたやつだ。
俺は刀を再度構える。
「待ってくれ。こいつは警備隊員だ」
「え? こいつが一番怪しそうな顔してるぞ」
人相の悪い、ヒゲ面の男がキョトンとしていた。
「ここはこいつに任せていてな。ゾンクスの手のものがこのライブ会場に来ることも予測していたからな。この場の処理は俺に任せてくれ。今日はありがとう」
「レムレイ様。何が起きているんでしょうか?」
テンカにいきさつを説明し、寮まで送り解散となった。
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