22.競歩
次に訪れたのは競歩の会場。
「ってなんで競歩なんだよ? せめて他の見に行かないか?」
「友達が参加しているらしいからね。友達の出番早いらしいからそれだけ見よ?」
特に用事があるわけでもないので、それに付き合うことにした。
「友達の出番はどうなんだ? もうそろそろか? まだかかるようならご飯でも食べたいんだが」
「いたわ! おーい! がんばれー!」
ミラは、相変わらずヒゲ付きの仮面を付けながら、大袈裟に手を振った。
その格好で気付くのか、と疑問に思ったがミラの髪型と声は特徴があり、目立つ。
手を振るミラに、遠くのグラウンドに振り返す体操着の少女がいた。
おそらくあれが友達だろう。
友達は振り返り、準備運動を始めた。
「じゃあもうそろそろってことか?」
「集合のアナウンスがかかってるわね」
どうやらもうすぐ始まるようで、千人はいようかという人数が、グラウンドに整列していた。
そして、スターターピストルの音を合図に、一斉に走り出す。
いや、歩き出した。
「思った以上に地味だな。これ競技として大丈夫なのか? 真剣にやっているだろうし馬鹿にする訳ではないが……」
「私も初めて見るわ。でも距離が長いし、歩くと時間かかりそうと思ったけど、案外速いね。」
思いの外、参加者は真剣だったようで、ふざけて走っている者も何人か見受けられたが、それでも競技は十分程で終わった。
ミラの友達については、十位入賞だったようだ。
大健闘と言っても良いのではないだろうか。
「挨拶は良いのか?」
「大丈夫。あの子、競技まだ他にも出るみたいで忙しいからね。頑張ってほしいわ」
忘れていたが、ミラの学校もなかなかの有名校であり、その友達もまた有名校の生徒なのだ。
彼女の十位入賞というのも、ある意味必然かもしれない。
「じゃあ落ち着いたことだし、飯でも食べるか」
そうして、祭りの定番でもある、屋台巡りを始めた。
今年は何回目だろうか。
「お昼にしては早いね。レイくん朝ご飯食べてなかったの?」
「食べなかったけど、もう昼だぞ?」
「そろそろそんな時間?」
「秋の味覚、エスズィンの焼き安いよー。そこのカップルさんどう?」
エスズィンは、秋になると産卵のために陸を泳ぐ魚だ。
名前は失敗作という意味だが、名前と反して完全食として知られる。
味に関しても、秋の味覚の代表として申し分ない美味しさである。
「食べたら? 今日の支払いは経費で落とせるよ」
ニコッと笑みを見せるミラだが、悪びれる様子もなく次々と買い物をしていたのはそのせいかと納得した。
そこそこに食事をし、次にお化け屋敷に到着した。
「お化け屋敷とかあんまり好きじゃないんだよな」
「何? レイくんもしかして怖いの?」
ミラはなぜか嬉しそうな顔をしていた。
顔半分は変な仮面で隠れているが。
お化け屋敷の外観は、簡易なものだが演出が凝っているらしく評判のようで、そこそこの並びがあった。
中に入ると、外観とは違って本格的な、病院のような作りになっていた。
しばらく進むと、病院の待合室のような場所に着く。
「バァッー!」
「キャーッ!」
「ヴァーッ!」
お化け役の女の子が脅かしたことにより、ミラが驚き大声を上げたが、その声とミラの付けた仮面に驚き、お化け役までもが声を上げた。
お化け役に関しては、特に凝った演出というわけではなかったが、声で怖がらせる形を取っていたようだ。
その演出とお化け役よりも、ミラの仮面の方がインパクトがあるのは認めたい。
「あ、ごめんね」
ミラは予想と反して怖がりのようで、俺の服の袖を握っていた。
そしてミラは、午前中の競歩の選手達顔負けの競歩を見せていた。
そんなやりとりを何度か繰り返して、お化け屋敷を後にした。
「後半は結構本格的だったな。そんなに怖かったか?」
「ちょっとびっくりしただけだから!」
でも楽しそうな顔をしてホッとした。
「それで次が最後だと思うがどこか行きたい所はあるのか?」
「あなたの妹の様子が見たいわ。何か出し物してるの?」
「たしかこの近くの屋台でクレープ屋をやっているとか言っていたな」
「じゃあそこに行きましょ」
しばらく歩くと、アイクの屋台に着いた。
思っていた屋台とは、比べ物にならない程大きな店舗型の屋台でびっくりする。
「これは大きすぎないか?」
そして、アイクと目が合う。
「お兄ちゃーん」
アイクは俺と目が合うや否や、飛びついてきた。
その衝撃にびっくりしたが、持ちこたえた。
しばらく前の俺だとこけていたぞ。
「頑張ってるか?」
「うん。お兄ちゃんは見に来てくれたの?」
「こいつがアイクを見たいって言ってな」
「はじめまして。ミラよ。よろしくね」
「はじめまして。妹のアイクです。お兄ちゃんがお世話になってます」
お互いにぺこりと挨拶を済ませると、
「お兄ちゃん、あの人お兄ちゃんの彼女?」
と、興味津々とばかりに聞いてきた。
違うぞと一言だけ伝えた。
「アイク、おすすめのクレープ二つくれ」
「はーい」
「可愛い妹ちゃんね」
「自慢の妹だ」
しばらくすると、アイクがクレープを二つ渡してきた。
「お兄ちゃん今日は忙しくてごめんね。またお祭り中に一緒に回ろうね」
と、だけ残して店に戻った。
クレープは、メジャーなベリー系の果物のヌングルとクリームのもので、酸っぱさと甘さの調和が絶妙で人気なことが分かるものだった。
「そろそろ今日は解散でいいか?」
「レイくん、今日はありがとう」
「そうゆうのは、そのヒゲの仮面外してから言え。まあ俺も楽しかったよ」
「明日は本格的に始まるから、そのつもりでいてね」
こうして、特区祭一日目を終えた。
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