18.特区祭準備
特区祭は、各地区毎に準備する学生主導の祭りだ。
特区祭を2日後に控え、この地区も盛り上がりを見せていた。
俺も学生だから特区祭の準備があるのだが……。
「ご主人様! どこから回る?」
「なんでお前はもうお祭り気分なんだ? 持ち場はないのか?」
「祭り好きだからこういった風景好きなのよ」
学生であれば、ほとんどの者が持ち場を持っているくらいに、急ピッチで特区祭の準備が進められていた。
俺はというもの、最近事件に巻き込まれることが多く、その影響でクラスでの居心地が悪かった。
「ちょうどいいな。あれ食べるか?」
祭りといっても、楽しみ方なんて食べ歩きくらいしか思いつかない。
目に入ったヤヲグルアメの屋台を指差した。
ヤヲグルに飴細工をしたものだ。
「ヤヲグル……」
「なんだ? 嫌か?」
「そりゃそうよ……。ご主人様は何も思わないの? あれ食べて死にかけたのよ?」
「あれとこれとは別だろ。これはちゃんと毒も処理されているし。それに毒入りも普通に美味しいからな」
毒の処理をされているヤヲグルは、一般的なフルーツとしては果汁が多くほのかに甘いようなものだが、毒入りのものは酸味が強い分甘さが引き立つのだ。
戦闘の時にしか食べていないし、そこまで味の余韻に浸ったことはないが。
「柔らかくて美味しいわね」
文句を言いつつも、ルミはヤヲグルアメを食べていた。
周囲は屋台だけでなく、即席の建物や通路の確保、白線を引いて整列位置を作ったりと大忙しだった。
「レイくんやっほ」
軽快に話しかけてきたのは、いつもの警備服ではなく学校指定の制服を着たミラだった。
どういった訳か、髪を後ろでくくっていた。
「ご主人様。この子誰?」
俺がミラに返事をするよりも先に、不機嫌そうにルミが問いかけてきた。
「見たことないか? 特区ランキング第七位の警備部隊長のミラだ」
「はじめましてー。ミラよ。君は?」
「ルミ。ご主人様は渡さないわよ」
ミラをにらみながら、俺の腕を掴みその場を離れようとするルミ。
ミラはそんなつもりはないと思うが……。
そもそも、ミラとは二度顔を合わせただけでまともな会話すらない。
「なんでいきなり嫌われてるのかなぁ」
「アンタが馴れ馴れしくご主人様に話しかけるからでしょ」
「ルミ、油売ってないでこっち手伝いなさい。ちゃんとやらないと終わらないんだから」
「わかったわよ……」
タイミングを見計らっていたかのように、ルミの友達が話しかけてきた。
ルミも渋々という様子でついていく。
「レイスさんルミ連れていくね。ごめんなさい」
「全然大丈夫だ」
「ご主人様、待っててね」
大声で手を振りながら、後ろ歩きで去っていくルミ。
「相変わらず騒がしいやつだ」
「あははっ。あの子面白かったなー。ねぇ、あなたこれからどうすんの?」
「特にやることはないな。ギー――友達もどっかに行ったし最近クラスメイトもよそよそしいからな」
「レイ君はクラスでは浮いてるんだ?」
「浮いてねーよ」
「あははっ。図星だぁ?」
「それよりお前、前とキャラ変わりすぎじゃないか?」
「公私混同しないように気を付けてるからねぇ。私はこの島の平和とみんなの笑顔を守るためには非情にもならないといけない時があるのよ」
ミラは急に真顔になって、そんなことを言い出した。
「正義感が強くて立派なこった」
「特区祭を成功させるために、レイ君も力を貸してね」
「ああ。それよりそのレイ君ってなんなんだ?」
「私と君との仲じゃない」
どんな仲なんだ。
ただ、不思議とミラとの会話は居心地が良かった。
何も考えずに話せる。
そんな仲になれそうな、そんな能力を持っているのかもしれない。
「そういや、お前の能力って……」
俺が話しかけた時、端末が鳴り響きそれを手に取るミラ。
「ごめんなさい。召集だわ。また今度話そうね」
そう言って空中に浮遊し、飛び去っていった。
辺り一面に風を撒き散らして……。
おい、屋台まで崩れてるけどこれどうするんだ。
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