16.シャンヌとソラ
「んぅ、むっ」
寝ぼけているのか、そんな声を出しながら起き上がる少女。
ソラは、水色のツインテールを横に振りながら目を擦っていた。
寝ぼけた様子ながら、大きな金色の瞳が特徴的でとてもかわいらしかった。
「起きたか?」
「お兄さんだれー? 私を助けてくれたの?」
アイクと特徴は似ているが、もちろん顔つきなどは全然別だ。
しかし、とても他人とは思えないほどに、妹のアイクと似ている気がした。
「まあ助けたことになるのかな。俺は、お前の兄のご主人様のようなものだな」
「お兄さんありがと」
ソラは涙を浮かべながら、頬を赤らめてそう言った。
「ひどいぞ、兄貴」
アイクとの会話中、タイミングよく戦闘が終わったようで、空気を読まずにシャンヌともう一名が合流した。
「誰がお前の兄貴だ」
「お兄ちゃーん」
ソラは二人の会話など、二の次といったようにシャンヌに抱きつく。
俺もそれを遮るほど野暮ではない。
二人が満足するまで待った。
「僕の命より大切な、ソラを助けてくれてありがとう。これからは兄貴と呼ばせてくれ」
「そんなことはいい。それより……」
そう俺が促すようにチラと、シャンヌの横に目配せをした。
「この人にも世話になったんだ。メーレーンの幹部のグラドールさんだ」
「自己紹介がまだだったな。ヴィプス・グラドールだ。今回は助かった。それと君たちには悪いこともしたな。すまなかった。その子は解放する」
ヴィプスは、以前会った時とは打って変わって殊勝な態度で気品があり、かっこいいとすら思えた。
「俺に言われてもな。俺はこの二人の手助けしただけだからな。それよりなんでソラを人質にしたんだ?」
「ゾンクスは、かつて同じ組織だった。しかし組織にも派閥が出来、その過激派が組織を作ったものがゾンクス。そのゾンクスの暴走を止めるために、シャンヌくんの力が必要と判断したんだ」
「それなら、シャンヌの協力を得るためには、まだソラを人質にしておいた方がいいんじゃないか?」
「兄貴それは話が違う。待ってくれないかい?」
「それはそうだが、メーレーンにもゾンクスにも誤算があった。それが君だ」
ヴィプスは、そう言って俺に指差す。
やはりマナーはなってなさそうだ。
「俺がシャンヌを止めたせいか。それで何の影響があるんだ?」
「それはまた別だ。君が思いの外強くなりすぎた。我々はゾンクスの暴走を止めたい。今はそれを主に活動していると言っても過言ではない。それには君にも協力してもらいたい。都合が良いのは重々承知している」
ヴィプスは深々と頭を下げたが、俺はソラを人質にした時点でどうかと思っている。
「お兄さん。この人悪い人じゃないと思うよ。私人質といっても優しくされたから。助けてあげて」
ソラは上目遣いで俺に詰めてきた。
そして、ヴィプスは続けて話す。
「ゾンクスは、この島の中枢にも干渉している。今回の特区祭も、賞金や景品を狙っていたようだ。メーレーンは、それを止めるべく特区祭開催自体を中断させようとしたんだ。バームル国の姫を誘拐することでね。そしてシャンヌを雇うことにした。そのためにその子を誘拐した」
「それは間違っているな」
「そうだな。反省している」
「それで、あの倉庫では何をしていたんだ?」
ヴィプスは居心地の悪そうな顔をしていた。
「あれはゾンクスを、特区祭を止める為の切り札として使う予定だった。でもそれも止められたから、代役として麻痺薬を雨に溶かして使った」
「俺は俺の目的のために特区祭を止められると困る」
「メーレーンは出来る限りの譲歩をする。君の要望ならば、特区祭も開催させよう。その代わりと言ってはなんだが、ゾンクスの組織員の検挙に協力してくれないか?」
ヴィプスはおもむろに胸ポケットから、警備部隊の手帳を取り出した。
彼はあろうことか、警備部隊の者だったのだ。
その手帳には、偽造防止の魔法印と名前が書かれており、本物のようだ。
「それは一般人に頼むことなのか?」
「普通なら頼まないだろうが、君の実力は折り紙付きだ。頼む」
「お兄さん、私と同じように困っている人を助けてほしい。私からもお願い」
そのソラの上目遣いに、反射的に頭をなでてしまった。
アイクに雰囲気が似ているせいか、ソラには弱いらしい。
「俺に出来ることなら手伝うよ」
力を出しすぎたせいか、力が抜けて俺は倒れ込んだ。
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