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15.メーレーンとゾンクス

 いち早く飛び出したシャンヌは、シャンヌの妹――ソラの元へ駆けていく。


 周囲には見えるだけでも二十はいそうな程に戦闘員がおり、その全てが高ランクの実力者であることは分かった。



「ソラ!」



「おい、バカ! 目立つようなことはするな!」



 周囲の戦闘員は組織によって色は違えど、全員がマントを着ている。


 そこに制服姿の者が走っていると、標的になるのは火を見るより明らかだ。


 周囲の戦闘員は敵味方関係なく、シャンヌをも巻き込む形で攻撃を放っていた。


 そんな中、シャンヌはその能力を発揮し攻撃の的となっていた。



「レイス、この間に助けてくれ……」



 シャンヌは、この数秒の間ですでに傷を負うほどになっていた。


 不死身のような肉体だが、俺との戦闘の影響がまだ残っているのかもしれない。


 俺はそんなシャンヌを傍目に、戦闘員の輪の外を回り道をしながらも、ソラの元へと走った。



「メーレーンだけじゃなくネズミまで入り込んでいるのか」



 ソラを肩にかついだこげ茶色のマントの男は、俺に目を向けながらにそう呟いた。



「その子を離せ!」



「おい、お前達何をしている。このガキをさっさと始末しろ」



 ソラをかついだ男が呟くようにそう言うと、その横から三人の男が俺の目の前に立ちはだかった。


 そして、ソラを抱えながら歩いていく。



「待て!」



「悪いが、ここは通せないねぇ」



 俺の行手を阻む形で、三人の男は目の前に並んでいた。


 しかし三人の男は目の前に立ちはだかりながらも、俺に対して攻撃を仕掛けては来なかった。


 目の前にいながらも、その視線は俺の方向を向いていないのだ。



「あなた様は……」



 三人の男の内の誰かがそう語りかけ、その方向に視線を向けると、以前この倉庫で戦った氷魔法を使う仮面の男だった。


 この仮面の男は、以前と同じ仮面に黒いマント。


 この三人とは所属組織が違うはずだが、そうとは思えない話し方に頭が混乱する。



「お前はあいつを追いかけろ。この三人は俺が引き受ける」



 状況としては、敵の敵は味方と思って良いのだろうか。


 その言葉に頷き、俺はソラを追った。


 ソラをかついだ男は、速度も出せないせいかすぐに追いつくことが出来た。


 倉庫からはしばらく離れた海岸。



「もう追ってきたか。俺はゾンクス十人の最高幹部の一人。俺に勝てるとでも思ってるのか?」



「その子をなんで連れていくんだ?」



「こいつはメーレーンで人質になってたらしいが、我々はこいつの能力に目を付けた。だからメーレーンを襲撃し連れ帰ることにした。それなのにお前たちはなんなんだ!」



「ただその子を取り返しにきただけだ」



「ならば戦うしかないようだな」



 幹部の男は、かついだソラを丁寧に地面に降ろした。


 少し離れた倉庫付近では、シャンヌが数人の組織員と魔物に囲まれている。


 シャンヌは万全な状態ではないようで、ボロボロになっていた。



「シャンヌ! ソラは俺が助ける! お前はそいつらの足止めだけしていろ!」



 声は届いたようで、シャンヌは気持ちの悪いウインクを飛ばしてきた。



「お前の相手は俺だろ! よそ見してる暇なんてねーんだよ!」



 幹部の男は、背から剣を抜き走ってきた。


 ゾンクスの最高幹部らしい強さであることが、その威圧感だけで理解出来た。


 俺も初めから全力で行くべきだろう。


 カバンから薬を二粒取り出し、口にする。


 麻痺毒と神経毒。


 そして、ユス婆からもらった刀を抜いた。


 幹部の男は、ユス婆のような魔闘気を剣に込めて上から振り下ろす。


 俺もそれに合わせ、魔闘気を込めてそれを横に受け流した。



「おっさんもなかなかやるな。このままだと厳しいか」



 俺はいつものように、刀で腕を斬りつける。


 幹部の男はそれに対して驚いた表情を浮かべるが、再度接近し剣と刀がぶつけた。


 幹部の男の剣速は、俺よりも数倍上回っておりその剣技も相まり、相当な実力者であることが分かる。


 しかし、それは弱点を露呈しているように感じた。


 俺は、シャンヌと戦った時のように、龍気と風魔法を混ぜ飛行する。



「お前、そんな小細工まで!」



 幹部の男は、それに対して火魔法で対抗してくるが、やはりこの男の真骨頂は剣技なのだ。


 この弱点さえ分かってしまうと呆気ない。


 数度下から打ち上げられた魔法を横に避けた後、こちらも上から火魔法を連射した。


 幹部の男もさすがと言うべきか、それを剣で対応している。


 このままでは負けることもないが、勝負も決まらないだろう。


 むしろ数的不利も相まってこちらが不利というところだ。


 ユス婆の授業において、魔法については全然教わっていないし、初級魔法しか未だ使えない。


 なので小細工なしに、魔力の塊をぶつけて逃げ道を無くすのが一番手っ取り早いだろう。



「これで終わらせようか」



 俺は、持てる全てをここで使い果たす勢いで、両手に魔力を込めた。



「そんな純粋な魔力を……。お前は何者だ?」



 俺はその問いに答えることもなく、両手を振り下ろした。


 体の何倍もある魔力塊を、轟音を立てながら地面に叩きつける。


 幹部の男は剣を振りかぶり、それにも対抗しようとしていた。


 雷が落ちたような、音を立てて落ちた魔力塊は自然に霧散し、大量の砂埃が舞う。


 砂埃が晴れたその場には、焦げた幹部の男が寝ていた。


 俺はその様子を眺めることもなく、少し離れた場所で寝かされていたソラに近寄り、声をかける。



「おい、起きろ!」

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