13.姫
「弱者の刃でも届いたようだな」
しかしそれも束の間、その傷は瞬時に回復した。
「貴様ッ! もう許さないぞ!」
シャンヌも久しぶりに出血し、焦ったのか滞空し、上からの攻撃に切り替えた。
竜巻や火の雨を降らし、周囲にも火が移るほどに激しい火を起こした。
火は風を取り込み、激しさを増した。
そして、彼はユス婆の言う天才のようで、その火には闘気と魔力が混じっていた。
それに抵抗するように剣を振り周囲の炎を打ち消すが、このままでは埒が明かない。
「一気に決めるぞ」
ユス婆にもらった四種の薬の内の一つ、酩酊の丸薬を飲み込む。
一瞬ふらつき視界がブレるが意識を取り戻し、更なる能力向上を感じる。
この程度なら後遺症も低くて済みそうだ。
更に向上した能力で、俺はシャンヌの炎の翼を模倣し飛行する。
もちろん俺はフェニックスではない。
だからただの火魔法では飛行は出来ないので、風の魔法と龍気を織り交ぜる。
修行でも使ったことがなく慣れない龍気では、不安定な飛行が続いた。
しかし龍気は魔法との相性も優れているので、次第に安定を見せる。
そして、加速し急接近。
反応出来ないでいるシャンヌの体を、数回斬りつけた。
「なんで急に……。貴様は誰なんだ? 上位にもいない雑魚じゃないのか? なんで飛行能力まで?」
「飛行能力がお前の専売特許だと思うな。上位にもいない雑魚でも鳥くらいは撃ち落とせるんだよ」
シャンヌは火で作った大剣で斬撃に応戦してくるが、それは届かない。
しばらくすると、斬り続けた甲斐もありシャンヌの回復も追いつかなくなってきた。
「僕は負けられないんだ……」
次第にシャンヌの体には傷が増えていった。
ついには、地べたに這いながらも立ち上がり俺に近付いてくる。
「なぁ、お前はなんでそこまでして戦うんだ?」
「妹が人質に取られている……。この計画が遂行されなければ僕の妹は……」
「そうか」
俺は最後にシャンヌの腹に峰打ちをしてその場を去った。
その後急いでホテルに入る。
「レイス!」
「なんでお前ここにいるんだ?」
ホテルのフロントに立っていたギー。
一刻も早く姫を探し出してほしかった。
「こっちも色々あったんだよ」
その言葉に、ホテル内部の抗争の痕跡を見て納得する。
そして、激しい足音がこちらに向かって近付いてきた。
「この人数はやばいな」
「レイス、待て! 味方だ安心しろ」
「なるほど。良かった」
次第に沈む足音と共に、俺の意識も沈んだ。
*
ふわふわの寝心地良いベッドの上で目を覚ます。
ひどい悪寒だ。
そして、ハッと思い出す。
「ここはどこだ?」
「ここはお姫様の客室だ。ちゃんとお前の手柄にしてやったぜ。かなーり惜しいことをしたと思ってるがな」
「レイス様ありがとうございます」
ふふっと笑う姫がギーの隣に座っていた。
そして逆サイドには、ボロボロの服装に縄で縛られた状態の意識を失ったシャンヌ。
「今はどういう状況だ?」
「籠城している。日もまたいだ頃だな。お前が意識を取り戻すのを待ってたんだ。起きたなら早く出るぞ」
目覚めなければどうしたんだと聞きたくなるのを堪える。
「こいつはどうしたんだ?」
「こいつはメーレーンの連中に囲まれて、今にも殺されそうになっていたらしいから、助けたみたいだが処遇に困っているらしい」
同じ妹を持つ身だ。
妹を人質に取られて同情はする。
しかし褒められた行動ではないのも事実だ。
「俺はこいつの行いが正しいとは思えない。俺がこいつの立場でもそうしたかもしれない。それにこいつは周囲に極力被害を与えないように戦ってたんだ。こいつが全力で戦っていたら俺はもっと瀕死の状態だったかもな。これだけでもそこまで悪いやつには思えない」
そんなことを言い合っていると、シャンヌが目を覚ました。
「いたっ。なんだこれは? 僕に何するつもりだ?」
「やかましいな。やっぱり殺すか?」
「レイス待て。さっきと言い分が違うような気がするんだが?」
「妹には同情するが話し方が勘に触るんだよな。まあ冗談だ」
「こいつをこんな目に合わした張本人が言うとシャレにならんぜ」
ギーが話す傍ら、姫と従者らしい知らない者三名は支度を始めた。
「それで、お前はどうするんだ?」
「妹を助けたい」
「妹はどこにいるのか分かるのか?」
「彼らが話していたのは、取引場所の倉庫で保管しているということしかわからなかった……」
シャンヌは強く唇を噛め、こちらにまで悔しさが伝わってきた。
「レイス、倉庫ってあれじゃないか?」
「その可能性は高そうだな。メーレーンのメンバーが取引に使ってたし、人が寄らない場所だからな」
「お願いだ。手伝ってくれとは言わない。場所を教えてくれ」
シャンヌは泣きながらそう言った。
縛られながら。
「悪いが俺はわざわざ助ける必要はないと思うぜ」
「そうだな。でも同じ妹を持つ身だ。何も悪くない妹を見捨てることは出来ない」
もちろんギーの気持ちは分からないでもない。
ただシャンヌの妹に関しては、巻き込まれただけの被害者だ。
放ってはおけない。
「とりあえずお姫様が優先だぜ? そこはしっかりしてくれよ?」
「そうだな。どうする? 安全な場所と言っても特区に安全な場所は……」
「あるだろ。とっておきの場所が」
ニヤニヤとしながらギーはそうこぼした。
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