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12. 特区三位シャンヌ・プリヴァンス


 ホテルヤハコエ。


 高級ホテルが立ち並ぶ一区の中央に位置し、諸外国の賓客や特区の政府関係者が滞在するホテルである。


 一般人は紹介がなければ入ることさえ許されない、特区随一の高級ホテル。


 その中央入り口には大きな門が構えられている。


 その門の前に、特区三位――シャンヌ・プリヴァンスはいた。


 日も暮れてきて、シャンヌはライトに照らされていた。



「ギー、増援はまだか? 早いこと救援した方が良いよな?」



「落ち着け。まだ気付かれていない」



「ん? 気付いているぞ? どうせ暇なんだ。僕と話さないかい?」



「どうする?」



「今すぐ戦闘ってわけではなさそうだし行ってみるか。こっちは時間との勝負だ」



「おや? これはこれは、この前の」



「助けたい人がいるんだ。ここを通してくれないか?」



「悪いが僕も仕事でね。ここは通さないように言われてるんだ。それに、君たちは味方って訳じゃなさそうだ。僕と戦えるのかぃ?」



 シャンヌはそう言うやいなや、右腕を払って火の粉を撒き散らしてきた。



「おいレイス。このまま正面衝突しても勝てない」



「距離を取って対策を考えるか」



 引くと幸いにもシャンヌが追ってくることはなかった。


 ホテルへ続く道は正面と裏にあるので、裏から回ろうということになった。


 俺は手に刀と非常用の薬を握り走る。



「こっちにもすでにいるぜ」



 裏口には大量の戦闘員が配置され襲撃しようとしていた。



「ここからは無理そうだな」



 また引き返し、正面入口目の前の茂みに隠れ、荷物を下ろして休む。



「ふぅーっ。歩きっぱなしだったから疲れたぜ」



「シャンヌをどうにかして入るしかないかな」



「そうだな。お姫様を迎えに行くにはどうにかするしかないみたいだぜ」



 どうやら、姫を助けるにはシャンヌを避けること出来ないようだ。



「ギー、シャンヌの情報を教えてくれないか? 俺がシャンヌの目を引くから、お前はその内に姫を助けてくれ。お前の能力の方が救出には向いてる」



「いいか、よく聞け。異能無効化の能力がなければ触れれない。触れれたとてフェニックスの火の能力以外にも気と魔法も高レベル。触れれても有効打を与えれない。その上有効打を与えれたところでフェニックスの異能は即時回復。回復は魔力を消費するらしいが、魔力が切れない限り回復し続ける」



「無敵すぎるだろ」



「それにやつはこれまで無敗らしい」



「弱点は?」



「俺が知ってたら無敗ではいないだろうな」



 しかし、俺は覇王だ。


 特区のランキングでは天と地の差があるが、世界ランキングでは覇王が一位になっている。


 長年正体不明の最強と言われていた実力者。


 それが今では俺自身だと知っている。


 代替わりした時にもランキングの変化はなかった。


 世界ランキングは古代の大賢者による探知結界によるものだと聞くのでおそらく不備はない。


 俺なら勝てる。



「行ってくる」



「ちょっ……おい!」



 そのままギーの静止を振り切り、手を開き全速力で、シャンヌに向かって走り出した。



「おっと、やっと来たか。僕をいつまでも待たせるな」



 シャンヌを目視する程に近付いたところで、薬を飲もうとズボンのポケットに手を入れる。


 ない。


 先ほどまで握っていた薬が。


 そして、茂みに置き忘れてきたことに気付く。



「ごめん。やっぱりもうちょっと待ってくれない?」



「散々待たせておいてこれ以上待つか!」



 改めて目の前にして気付く、三位の実力。


 それを実感させられた。


 ギーの言っていた通り、全てが高水準なのだろう。

 圧力に潰されそうなほど苦しい。


 シャンヌは炎の翼を背から生やし、素早くこちらに向かって飛んでくる。



「レイス!」



 ギーは非常事態に気付いてくれたようで、身代わりになってくれた。


 そして、位置を替えたことで薬を手に取り、口に含む。


 ヤヲグルの一欠片と麻痺薬だ。


 そして、刀で左腕を一切り。



「ギーありがとう。姫の所に向かってくれ。こいつは俺が受け持つ」



「おっけ。今のお前ならやってくれそうだ。でも無理はするなよ。任せた」



 ギーはホテルに向かう。


 それを見たシャンヌは見逃さない。



「ここから先は通せないんだ!」



 しかし今の俺にはシャンヌの動きも遅い。



「待てよ。お前の相手は俺だ」



「弱者の分際で!」



 冷静が売りのようだったシャンヌは、何があったのか急に激昂した。


 次々と火の粉とパンチを繰り出してくる。


 しかし、そのスピードは付いていけない程ではない。



「こんなもんか」



 俺はそれをどれもいなし、刀で数度斬りつけた。



「弱者がどんなに斬りつけた所で僕には届かない」



 初めは避ける素振りをしていたシャンヌだが、やはり効かないことに気付いたのか、避けようともせずに乱打してきた。


 この状態での攻撃でも傷付かないとは思わなかった。


 俺はシャンヌから距離を取り、刀に丁寧に覇気を込めた。


 この状態だと気の循環も数倍スムーズだ。



「これはさすがのお前でも避けた方が良いと思うぞ」



「何だその禍々しい気は?」



 その声も無視してシャンヌの腹部を切り裂き、ついに腹部から血を垂れ流した。


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