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10.修行の成果


「レイ坊、アンタももう立派な戦士だ。一週間前とは別人だよ。わたしも鼻が高いよ」



「これもユス婆のおかげだ。ありがとう」



 逆立ちをしながらそう返事をする。


 一週間が経ち修行を終えたのだが、ユス婆は学園まで見送ってくれた。



「アンタの活躍を楽しみにしてるよ」



 満足気なユス婆に礼を言い別れた。



「よっ。お前は準備出来てるのか?」



 教室に入り、ギーと目が合ったので声を掛けた。



「お前誰だ?」



「冗談はよせよ」



「俺の知り合いで、ユス婆のような筋骨隆々で、真っ黒な皮膚をした知り合いなんていねぇよ」



「レイスだ」



「知ってるよ。それで、結果はどうなんだよ」



 短期間でそんなに変化したのはおかしいだろって?


 もちろん普通のやり方では無理だ。


 俺は新たに制約を増やした。


 それはこの一週間だけの制約であり、修行時は効果を上げる代わりに、疲労度と精神的負担も上がるというものだ。


 この制約を増やすというものが覇王の真の能力でもある。


 常人には考えられないことだが、少しでも結果を出したいあまりにこの制約を増やしたのだ。


 序盤はただでさえ、能力が低下している状態な訳だから死んでもおかしくなかったが、アイクのことを思う一心で耐え抜いた。



「ギー、頼みたいことがあるんだが……」



「レイスくん、始めるなら早いとこ始めましょうか」



 少しでも早く実感を得たかった為、放課後に薬の取引現場で出会った、ノア・ナルビンを呼び出して協力してもらうことにした。


 どうやらノアは一学年上のようで、以前とは違い制服姿だった。



「付き合ってくれてありがとう」



「ご主人様、この人何? てかなんでそんな親しげなわけ?」



 今にも突っかかりそうなルミ。


 それに対してノアは、



「礼儀を知らない子ね。まずは自分から名乗るのが礼儀よ?」



と煽る。



「姐さん、なんでそんなに対抗心燃やしてんの? もしかして……」



 ノアは何かを口にしようとしたギーの、口を塞ぐように手に持つ木剣を刺した。



「オエェッ。俺じゃなきゃ死んでたぞ」



 ギーの異能力はダメージの受け流し効果もある。


 そのためか、こういった雑な扱いを受けることがままある。



「余計なことを口にしないように。それよりも、冗談はよして早くやらない?」



 表情がコロコロと変わるノアに、少し以前とは違った印象を抱きながらも、今は自分の実力を確かめたかった。



「一つだけ大事なことがある。勝負ではない。これは組手だ」



 これは最重要事項なので強調しておく必要がある。


 うっかり死んでも困るからな。



「なんでそんなこと? では行くわね」



「ああ」



 そう言い、木剣を振りかぶるノア。


 俺も手にした木剣を構え、ユス婆の教えを思い出し特殊な修行によって体得した、覇闘気を木剣に注ぎ込んだ。



「その異質な気は何?」



 普段のおっとりとした様子からは、想像の付かないような取り乱し方をしながらも、俺が打ち込む剣をいなしていた。


 二合の打ち合いが終わり、三度目の振りかぶりを見せた時、



「降参します。レイスくん、この短期間で強くなりすぎよ……」



「ありがとう。でも魔法も使ってみたかったな……」



「凄まじい成長だな。でも、あの全能感すらあったあの時と比べればまだ見劣りするなぁ。何か足りないと言うか。あと、その見た目はな……」



「この見た目はユス婆のおふざけだ。その内戻るらしい」



「えー。ご主人様のその見た目もかっこよかったんだけどね」



「あなたは性格だけでなく趣味まで悪いのね」



 後は奥の手として、ユス婆から四種の薬をたんまりともらっている。


 これで普通の戦闘での覇王の暴発は防げるだろう。


 それに覇王になってからの倦怠感というのも薄れた。


 それだけでも一安心だ。



「レイス、魔法は今俺に撃ってみろよ。計測なんてことは出来ねぇけどある程度目測で威力なんかは分かるだろ?」



「ありがとう。死ぬなよ?」



 そう言ったギーに掌を向けて魔力を注ぎ、先程も使用した覇気を上乗せした火球を放った。



「なんだこの黒い火柱は?」



「ご主人様すごい!」



 ぴょんぴょんと跳ねながらルミは大げさに称賛してくれる。


 そして、お礼も兼ねて近くの出店で食べ歩きをすることになった。


 特区際間近ということもあり、付近はすでにチラホラと祭りのような盛り上がりを見せている。


 ノアとルミはチョコレート漬けされた焼きヤヲグルを、俺とギーはタバサという拳大の焼き鳥を食べる。



「アナタ達よくそんなもの食べれるわね?」



「これは一般的な鳥の肉と変わらんからな。そっちの方が俺は怖いぜ。毒が抜けてないかとしれないからな」



 タバサは別名火の虫。


 見た目が小さいから名付けられただけで、虫の要素はないが女性からは敬遠される食べ物だ。


 タバサは火の鳥の為、討伐直後から食すことが出来る。


 死んでからも半日は火が消えないという鳥。絶えず燃えてるいため、焦げている印象はあるが、蒸したものに近くしっとりとしており、食感も味も牛に近い。



「おい、ねーちゃん遊ばねーか?」



 離れていたわけではないが、ノアとルミが不良少年達に絡まれている。



「レイス、助けに行くぞ」



「そうだな」



「あの不良が危険だ」



 ギーの冗談を尻目に、俺はその場に駆けた。



「悪いな。俺の連れが世話になった。お前ら、ウロチョロするなよな」



 そう自然を繕って去ろうとするも、不良少年達は見逃さない。



「待てよ」



と、ノアの腕を引っ張り、やりすぎだと右手に力を入れた瞬間。


 目の前に、黒い制服には目立ちすぎる赤い髪の男が現れた。



「きみぃ、少しやりすぎじゃない?」



「おい、この手を離せ」



 赤い髪の男は、ノアの腕を掴んだ不良少年の腕を掴んでいた。


 その力は、不良少年の顔を見れば分かる。



「危ない」



 赤い髪の男に対し、他の不良少年が殴りかかっていた為、ノアはそう声をかけた。


 しかし結果は違い、不良少年の腕は赤い髪の男の胸を貫いたが致命傷を与えることはない。


 それよりも、殴った不良少年は火だるまになり地面を転げ回る。



「こいつはもしや……。特区三位の……」



「間違いない。シャンヌ・プリヴァンスだ」



 その言葉を残し、不良少年達は一目散に逃げて行った。



「助かったよ。ありがとう」



 不良少年達の後ろ姿も確認せずに、俺は礼を言った。


 その言葉に、赤い髪の男――シャンヌ・プリヴァンスは、



「弱者を助けるのが僕の役目だ。そして弱い者達は助けられるのが役目なんだ。気にしなくても良いよ。じゃあね」



と、それだけを溢して、不良少年達と同じ方向に去って行く。



「なんか腹立つわね。アイツいなくてもなんとかなったし」



「まあ助けてもらったことに変わりないんだからそう言うな」



 シャンヌの言い様が癇に障った様子のルミをなだめて帰宅した。



「雨すごいな」



「タイミングが良くて助かったよ」



 特区の天候管理は常軌を逸しており、通常雨などはほとんど降らないが、今日は珍しく天気予報外の雨だった。


「面白い!」「続き読みたい!」など思っていただけた方は、ブックマークや、広告下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、応援よろしくお願いいたします。


作者のモチベーションも上がり、とても喜びます!


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