ブロッケン山
狭間の季節がやってきた。夏から冬へと移り変わる季節の境目。
そんな時は境目の生き物が活性化する。
地味な黒髪をお下げにし、べっ甲ぶちの眼鏡をかけた少女は眼鏡を投げ捨てた、そして窓を開けて編み上げた髪をほどいて風になぶらせる。
人と魔の狭間の生き物と化した少女は月にその手を伸ばした。
長い髪をなびかせた魔女は自らの愛機にまたがった。
開いた窓からひらりと飛び立った。
ブロッケン山に向かうのだ。
窓から愛機にまたがった少女は煌々と照らす月に向かって飛ぶ。
鳥が飛ぶほどの高さになったとき、少女の周りに魔女たちが集い始めた。
ずんぐりした長年の愛機にまたがったぽっちゃりとした魔女が飛んでいた。
ノズルに馬のように手綱をかけて紡錘形の本体に腰かけて駆け上がる、コンセントプラグがしっぽのように揺れていた。
丸や三角のボード状のロボット掃除機の上でくるくると回る若い魔女。
黒いドレスと長い髪がゆらゆらと揺れた。
風になびくスカートから白い足がのぞく。月と星の音楽を浴びながら踊り続ける。
昔ながらの箒にまたがっている魔女はとても年老いた皺んだ魔女だけだ。
ほとんどの魔女は掃除機にまたがっている。
箒にまたがっているように見える魔女も実際にまたがっているのはスティッククリーナーだった。
男の魔女はスチームクリーナーにまたがって豪快な蒸気を立てている。
ほかには車の洗車用具にまたがっている者もいた。
魔女たちの祭りが始まる。
ブロッケン山に向かうのだ。
魔女たちは続々と集まっていく。
少女はスティッククリーナーにまたがって月の光を浴びながらくるくると旋回していた。
祭りの時間を楽しみながらくるくると回る。
なんとなくの思い付きです。ルンバに乗って踊る魔女が思い浮かんだんです。なんだか序章みたいですがネタが思いついたら書きます。