06 裏:あれもこれも頑張るしかねえ☆
ぶっ飛び気味で、倫理観に欠けています。
「おいっ、帝国の皇太子は登場しなかったんか?」
朝一番で父親、すなわち国王に拝謁したら、開口一番がこれだ。こりゃあ『乙女に捧ぐ永久の誓い』を知ってるな。誰だろう? 野球部のメンバーで雰囲気からすると……、
「大沢啓三か?」
あの、お飾りの監督だ。一瞬、固まったものの、すぐにニヤりと笑った。
「そういうテメエは、そうさなあ……、宇一郎か? あはははっ、当たりか」
というわけで、この調子で話が進んだ。
転移したのは十年も前で、ボクの母親、前の王后が亡くなった直後だという。『乙女に捧ぐ……』は、ベンチに健太が忘れていったもの。カバーが掛かっていてコーチングの本だと思って手に取ったら、それだった。読み始めたら面白くて直ぐに読了。だから、筋は知っている。でも今世は、だいぶ狂ってきてるらしい。
ということで、後妻に今の王后を選び、ついでに愛妾を四人、見繕って後宮ハーレムを作った。好き勝手やった報いがこのところ出ていて、国内が物騒だ。どうしようかと思案していたという。そうか、コイツの影響でウィリアムは狂ったのか。
「オメエら四人が揃ったんなら鬼に金棒だ。オレはこっちに専念するから、あっちはよろしくな」
「おいおい、あの王后、何とかしてくれよ。ボク、何度か殺されかけたらしいよ。それにカボチャパンツとピンクブロンド。こいつらもグルだ」
「王后か。ありゃあ締まりが抜群でな。それに鳴き声なんか堪らねえんだ。あれだけは絶対に手放さねえ。それに愛妾四人がこれまた美味え。一人目は熟女、二人目はマッスル、三人目は清楚、四人目はロリータとな。これらを五日のローテーションで回してんだ。極楽だぞ。テメエもやってみろ。病み付きだ。
あっ、王后のことだったな。それなら薬を盛って脳ミソをグチャグチャにしてしまおう。駄目か。猿ぐつわして手足を縛って檻に入れるってのは……? 猟奇プレーが楽しめるぞ。あっ、これも駄目。面倒な噂がたっちゃう……。じゃあ希望の星である第二王子を殺ってしまうのは……。やる気を失って大人しくなるぞ。うん、これだな、これ。
そうじゃないってかあ。じゃあどうするんだ」
思い付きが鬼畜すぎる。世間から隠蔽できれば事の善悪なんて糞くらえという姿勢は前世と同じだ。
「しょうがないなあ。じゃあ、少し手間がかかるが、策を二つ執る。一つは、まず、賢くなったボクをアピールする。これ、国王も協力してくれ。それと健太を宰相に起用して善政を敷く。この線で国民の信頼を得る。第二は、江里子……エスメラルダと子作りしてボク直系の跡取りを作る。スペアに一人追加できれば上出来。これで、王后・第二王子派は平和裏に壊滅だ」
「おうよ、流石だ。野球部の功績の半分は健太の腹黒兵法だったが、残りの半分はテメエの親分肌だったんだ。自覚が無かっただろ。オレはチャンと見てたんだよ。そんじゃなきゃ、あそこまで勝ち進めねえよ」
まあ、こんなエロジジイでも誉めてくれりゃあ嬉しい。
「一つ、忠告しておくが、江里子には気を付けろ。テメエが試合に勝って、女の子にキャアキャアと囲まれ、鼻の下を伸ばしていただろ。そのときのアイツの形相と言ったら鬼だったぞ。とんでもなく嫉妬深い。アイツを選んだら、オレのようなハーレムなんて夢のまた夢だ」
そうだろうな。きっと、そうに違いない。ピンクブロンドを愛妾に囲うのは諦めるか。
その足でマクシミリアン公爵邸へ出向く。先触れは出さなかったけれど、応接間に案内してもらえた。このあたりは身分の有難さだ。直ぐに公爵と令嬢が入室してきた。
「昨日の騒動は誠に申し訳なかった。婚約破棄は無かったことにしてほしい。父親である国王に叱責された(これはウソ)。反省している。ヨリを戻したい」
王族らしく高飛車に上から目線で告げると、公爵は「ほんとだ。お前の言うとおりだ。別人だ」と驚いている。「娘が承知なら、我が家としても不満はございません。では二人で」と言い残して退席してくれた。
ここからが本題。
「昨夜、カボチャパンツに切った啖呵なんだけど、どうしてあんな大袈裟な物言いをしたんだい。帝国皇太子が助けに出てくると確信していたのか」
「そうなのよ。期待していたのに……」
「たぶんな。江里子の勢いに怖気づいたんだろう。そりゃあ、ボクだって怖かったよ」
「もうねえ。私、一度死んでるじゃない。怖いもの無しっていう、カ・ン・ジ。宇一郎はどうなの」
「ボク、あっちで死んだのかどうか、全然分からないんだ。机に向かって仕事をしてたのは確かなんだけど、気がついたら、目の前に江里子がいたんだ」
「ふふふっ、ということは、私が生まれて初めて眼にした人物ってわけね。雛鳥でいう刷り込み。インプリンティング。最初に見たものが母鳥っていうやつよ。じゃあ私の言うことは絶対ね。逆らっちゃだめだからね。さあ、私の部屋に行くわよ。これから一発、ヤるよ。倫理観なんて言葉は私の辞書には無いんだから」
「ええっ、昼間っから? おいおい、母子相姦になっちゃうぞ。ぶっ飛んでるなあ」
「何、言ってんの、母妻兼務よ。父も早く作れっていってる。襲ってでもやれって。男はオオカミっていうけど、メスだっているんだから。飢えたメス狼よ」
そうか、ヒツジにもオスがいるよな。というわけで、ここからが本番。天蓋付きの可愛いベッドの上。クンズホグレツの大立ち回り。うん、エガったよ。前世では分からないけど、今世では正真正銘の童貞と処女。本当かと疑うほどの白黒ショーを演じたのだった。観客はいないけどね。
さて、お忍びの帝国皇太子は、調べさせると留学生の中に見つかった。呼び出して話をしたら、小心者だった。予想どおり、江里子の物言いに恐れをなしたようだ。こりゃあいいと、下手に出て仲良しになった。外交々渉で有利な展開に持ち込めるぞ。徐々に手柄を上げていこう。
君江さんは国王に頼んで某侯爵家の養女にしてもらい、すぐに健太へ嫁がせた。これで大きな貸しが出来た。健太は、官吏に登用して徐々に位を上げ経験を積ませている。ボクの国王即位と同時に宰相就任の目論見だ。
王太子のイメージアップ作戦は、基本的に君江さんの文才に頼った。王太子が大活躍するラノベをシリーズで刊行してもらった。国庫から補助を出して安めの定価にしたからね。大評判となった。
そして、リーダーシップはお手のもの。まず、大きな声で叱る、次に、細かいところを見ていて、誉める、おだてるを使い分け。国民へのオベンチャラも、お任せあれ。観客や応援団への感謝セレモニーで慣れているからね。そして、お飾り監督の指示の下、屁みたいな地獄の練習に耐えた身だから、兵士の訓練も堂に入っていて、兵力は倍増だ。体力や反射神経の育成技術は筋金入りだよ。教育改革は健太に任せた。貴族の奥様方は、江里子の内助の功に頼って、硬軟両面で把握。あいつ、公爵家の暗部を牛耳っている。
ピンクブロンドには、帝国皇太子を人身御供としてアテガった。あっ、逆か。二人とも喜んでいたよ。互いに好みだって。皇太子は正式な婚約者が怖いといい、彼女は愛妾でも満足だという。なにせ帝国だからね。贅沢ができるよ。末永く続けばいいね。
カボチャパンツは、落とし穴を掘ったら、ものの見事にハマってくれた。そのまま土を掛けて埋め、足で踏んでおいた。あっ、タトエだよ。喩え話ね。言葉通りに解釈しないでよ。うふふふふっ。
国王は、離宮に籠って淫らな鬼畜生活を堪能中だよ。国民にバレないように鉄壁の警備を敷いている。本人は事前に睡眠薬を盛って、寝ている間にパイプカット手術をしておいた。相手をする五人は喜んでいるよ。ときどき、覗いてみるが、至って元気。長生きしそうだ。
公爵邸には日参して、プレゼントをしまくった。江里子女王様の御命令なんだ。婚約者の段階で既に女王様だよ。その度に犯された。「覚悟をおし」。「女王様、許してえ、赦してー」。体力、もたねー。
結婚式は、膨れた腹を誤魔化すのに四苦八苦。国民の手前があるからね。本人は、こっちの気も知らないで至って呑気。十月十日の辻褄は超早産という嘘八百で乗り切った。その後もポコポコと産んだ。コイツの生命力には呆れる。国庫を圧迫 そんなわけアルカイダ。
シマリのことだけど、良すぎた。どんな鍛え方をしてるんだか。こっちは、もう千切れそう。徹底的に搾り取る。搾乳器もかくやとばかり。ああ、搾精器ね。出産しても直ぐに復活。一度、咥え込んだら、抜かせてもらえない。こっちも負けずにパイオツにむしゃぶりつくが、あごが疲れてギブアップ。地獄だあ。どっかへ転生させてくれよー。
-完-
結局、ストーリーが支離滅裂、クダラナい話になってしまいました。お詫びします。表題に二つの意味を持たせていることをご理解いただければ幸いです。
監督の名は、もちろん某親分のモジりです。無人島ゼロ円生活は、よゐこでしたか。「男は狼なのよ 気をつけなさい」と歌ったのはピンク・レディーでしたね。
R18ムーンライトノベルズの『【短編集】それぞれの愛欲の果て』とダブルポストです。https://novel18.syosetu.com/n6723if/