20 皇帝からもらった鏡の使いみち☆
古代史の謎に迫る怪異伝奇ロマン?
「ムーンライトノベルズ」へアップした短編集からの移植で、R18要素を抜いています。
【短編集】それぞれの愛欲の果て
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「姉さん! 逃げろ!
神殿が燃えてる! 逃げるんだ!
…………。
あれっ? 光っているだけか? 煙も出ていないし……」
「ねえ、すごいでしょ!
ピッカピカよ! 大成功だわ!」
「あわわわっ! これ鏡じゃないか!
前庭一面に並べて……。
百枚全部なのか……。
おいおい、魏の皇帝から贈られた大事なものなんだぞ!」
「ふふふふっ、大変だったんだから……。
ちょうど正午に反射光が神殿を照らすように、一枚一枚、傾きを調整したのよ」
「まったくもう、何を考えているんだよ。悪戯にも程がある」
「そんなんじゃ無いわよ。
神聖だって、私が神々しいって見せ付けるためよ!」
「まあ、理屈は成り立つけどな。でも、これを目にするのは近所の連中だけだ。
遠くの奴らを従えるためには、この鏡をそいつらに配る必要があるんだ。
ありがたい舶来の鏡なんだぞって、もったいぶって下げ渡すんだ。
周囲を統率する道具として下賜するんだ」
「そんなこと、解っているわよ。
でも、私がもらったんだから、一度ぐらい、いいじゃないの。
日頃、楽しみなんて私に無いし……。
生まれてからずっと巫女で、相手は神様だけ。
話す相手もいないし、ましてや男の人だって弟のあなただけ。
せっかくの美貌なのに、恋も出来ないのよ」
「美貌? 美貌ねえ。確かにな。身内びいきなら、そういえないことも無いか。
分かった。今回のことは大目に見る。ただし、終わったら、全部、没収するぞ」
「ああん! お願い。一枚だけ、いいでしょ。一枚くらい、私に頂戴よ」
「一体、何に使うんだ? 姉さんには必要ないだろ。誰にも会わないんだから、化粧とは無縁じゃないか」
「あんまりな言いようね。私だって女なの。
タライの水鏡は、映りが悪いのよ」
「しょうがないなあ。一枚だけだぞ」
「ありがとね」
◆
あちゃあ! なにこれ! ヘンテコな模様ね。こんなの、みんな、気味悪がっちゃう。ゴツゴツしたケモノがオドロオドロシしいわ。夢に出てきそう。一番の出来損ないよね。あいつ、姉の私より政治のことの方が大事なんだ。仕方がないかな。
まあ、鏡は平らな面が命なんだから、裏面はどうでもいいか。
すごいなあ! 立てても映せるわ。水鏡とは大違い。
ほら、寝転んでも、使える! さすがは大陸の皇帝だわ。
あははっ、くるくる回せる!
「鏡よ、鏡、鏡さん。世の中で一番美しいのは、だ~れ!」
「くるりん、ぱっ!
ははははっ!
私よね。映るのは私。私が一番よね」
「クルクルー、パッ!」
何度やったって同じ。ワ・タ・シ! あははは!
長い髪が素敵よね。横顔がいい。神秘的よね。
これで相手がいないっていうんだから、もったいないよね。
オッパイを見てよ。これで、男はイチコロなんだけどなあ。
あっ! 貫頭衣が邪魔して判らないか……。
よいしょっと。全部、脱いじゃった。
乳首はムシャブリつきたくなる桃色よ。ふふふっ。
オヘソもいいでしょ。
腰のクビレなんて最高よね。
オシリをフリフリフリ、一発で悩殺なんだけどなあ。
残念ながら、ここ、男っ気が無いのよねえ。
そうだ!
ワレメだ! ワレメを見てみよう。
普段は身体を丸めても、ちゃんと見えないのよねえ。
仰向けのまま、膝を立てて、おマタを開く......っと。
おおっ! エロッ!
チラリとピンク色が、はみ出てる!
こりゃあ、よく見えるわ!
あれっ? あれあれっ?
ボヤケてきた……。鏡、どうしたの? カスミが懸かったみたい。
私の湯気?
おっと! 晴れてきた。黒いのは人影? 誰? 髭モジャ? 男?
「お~いっ! いいものを見せてくれたな。極楽ゴクラク」
ぎゃー! しゃべった!
「おいおい。オレは皇帝だよ。この鏡を贈った本人だ」
「あっ! そうなの? ありがとう」
「これ、神仙霊鏡っていうんだ。くれてやった百枚の内で一枚だけな。
しかし、よく当てたなあ。
会話できるのは、韻多根津斗という魔法だ。音声は自動翻訳な」
「ねえ、ねえ。私のだけ見て、ズルくない?
あなたのも見せてよ」
「何を? あっ! あれか。とんでもないことを言い出すんだな。
いいだろう。見せてやる。どうだ! 百戦錬磨の宝刀だぞ」
「うわー! たくましい!」
「そりゃあ、お前のを見たんだから、パンパンだ」
「もっと、よく見せてよ」
「よし! ここで鏡を二枚使うぞ!
神仙霊鏡をなん枚も、オレは持っているんだ。皇帝の特権だな。
これを向かい合わせて立てるんだ。そうすると不思議なことが起こる。
合わせ鏡だ!」
「あっ、あっ、無限に続いてる! 隧道!」
「ここへ、突っ込むぞ! 黒光りだぞ!」
「ああっ! 来た来た!
すごぉーい」
「どうだ。見惚れるだろ」
「うん。これ、欲しい」
「おおっ! うれしいことを言ってくれるじゃねえか。
まぼろしだけどな。
おれも、お前が好みだよ」
「じゃあ、二人、あの世で一緒になる?」
「そうしようか。楽しみだな」
「「指切りげんまん、嘘ついたらハリセンボン飲〜ます」」
◆
とうとう、お陀仏になっちゃったわ。いつかは、みんな、こうなるのよね。
あっ! そうだ! 皇帝を探さなきゃ! 確か、先に来てるはず……。
「あっ! いたいた! 天国ってすごいなあ。思念で動けるんだ」
「おい。久しぶりだな。
髭も衣服も無いけれど、イメージを思い浮かべるだけで判るだろ」
「かといって、裸体というわけでもないし……、不思議な感じね。
あの鏡を一緒に埋めてもらったんだけど、持ってこれなかったわ。残念」
「まあ、不要だけどな。念だけで自由自在なんだからさ」
「そうなのよね。あなたのあれ、握ってみたかったのになあ」
「ははっ、自慢のあれも現世に置いてきちゃった。ごめんな」
「ところで、となりの女性は誰? あなたの横に立っている人よ」
「ああっ、この娘か? 陪葬妃というやつだな。
オレが死んだときに、一緒に埋められたんだ」
「……」
「ただな。天国って、みんな平等だろう。皇帝も平民もないんだよ。男女もない。
その一方で、オレには負い目があるからね。この娘に奉仕しているんだよ。
だから、お前とは一緒になれないぞ。すまないな」
「そうなの。せっかく楽しみにしていたのになあ。
『指切りげんまん』って約束したけど、その指が無いものなあ」
「おい。それはそうと、お前の後ろに続いている群衆は何なんだ?
あっ! そうか! お前と一緒に葬られた奴婢百余人か!」
ぎゃー!!!! どういうことなの?
私、頼んでいないのにぃー!
ーー 完 ーー
すいません。魏志倭人伝の内容とは若干のずれがあります。





