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20 皇帝からもらった鏡の使いみち☆

古代史の謎に迫る怪異伝奇ロマン?


「ムーンライトノベルズ」へアップした短編集からの移植で、R18要素を抜いています。

【短編集】それぞれの愛欲の果て

https://novel18.syosetu.com/n6723if/

「姉さん! 逃げろ!

 神殿が燃えてる! 逃げるんだ!

 …………。

 あれっ? 光っているだけか? 煙も出ていないし……」


「ねえ、すごいでしょ!

 ピッカピカよ! 大成功だわ!」


「あわわわっ! これ鏡じゃないか!

 前庭一面に並べて……。

 百枚全部なのか……。

 おいおい、魏の皇帝から贈られた大事なものなんだぞ!」


「ふふふふっ、大変だったんだから……。

 ちょうど正午に反射光が神殿を照らすように、一枚一枚、傾きを調整したのよ」


「まったくもう、何を考えているんだよ。悪戯にも(ほど)がある」


「そんなんじゃ無いわよ。

 神聖だって、私が神々しいって見せ付けるためよ!」


「まあ、理屈は成り立つけどな。でも、これを目にするのは近所の連中だけだ。

 遠くの奴らを従えるためには、この鏡をそいつらに配る必要があるんだ。

 ありがたい舶来の鏡なんだぞって、もったいぶって下げ渡すんだ。

 周囲を統率する道具として下賜するんだ」


「そんなこと、解っているわよ。

 でも、私がもらったんだから、一度ぐらい、いいじゃないの。

 日頃、楽しみなんて私に無いし……。

 生まれてからずっと巫女で、相手は神様だけ。

 話す相手もいないし、ましてや男の人だって弟のあなただけ。

 せっかくの美貌なのに、恋も出来ないのよ」


「美貌? 美貌ねえ。確かにな。身内びいきなら、そういえないことも無いか。

 分かった。今回のことは大目に見る。ただし、終わったら、全部、没収するぞ」


「ああん! お願い。一枚だけ、いいでしょ。一枚くらい、私に頂戴よ」


「一体、何に使うんだ? 姉さんには必要ないだろ。誰にも会わないんだから、化粧とは無縁じゃないか」


「あんまりな言いようね。私だって女なの。

 タライの水鏡は、映りが悪いのよ」


「しょうがないなあ。一枚だけだぞ」


「ありがとね」


         ◆


 あちゃあ! なにこれ! ヘンテコな模様ね。こんなの、みんな、気味悪がっちゃう。ゴツゴツしたケモノがオドロオドロシしいわ。夢に出てきそう。一番の出来損ないよね。あいつ、姉の私より政治のことの方が大事なんだ。仕方がないかな。

 まあ、鏡は平らな面が命なんだから、裏面はどうでもいいか。


 すごいなあ! 立てても映せるわ。水鏡とは大違い。

 ほら、寝転んでも、使える! さすがは大陸の皇帝だわ。

 あははっ、くるくる回せる!


「鏡よ、鏡、鏡さん。世の中で一番美しいのは、だ~れ!」


「くるりん、ぱっ!

 ははははっ! 

 私よね。映るのは私。私が一番よね」


「クルクルー、パッ!」


 何度やったって同じ。ワ・タ・シ! あははは!


 長い髪が素敵よね。横顔がいい。神秘的よね。

 これで相手がいないっていうんだから、もったいないよね。

 オッパイを見てよ。これで、男はイチコロなんだけどなあ。

 あっ! 貫頭衣が邪魔して判らないか……。

 よいしょっと。全部、脱いじゃった。

 乳首はムシャブリつきたくなる桃色よ。ふふふっ。

 オヘソもいいでしょ。

 腰のクビレなんて最高よね。

 オシリをフリフリフリ、一発で悩殺なんだけどなあ。

 残念ながら、ここ、男っ気が無いのよねえ。


 そうだ!

 ワレメだ! ワレメを見てみよう。

 普段は身体を丸めても、ちゃんと見えないのよねえ。

 仰向けのまま、膝を立てて、おマタを開く......っと。


 おおっ! エロッ!

 

 チラリとピンク色が、はみ出てる!

 こりゃあ、よく見えるわ!


 あれっ? あれあれっ?

 ボヤケてきた……。鏡、どうしたの? カスミが懸かったみたい。

 私の湯気?


 おっと! 晴れてきた。黒いのは人影? 誰? 髭モジャ? 男?


「お~いっ! いいものを見せてくれたな。極楽ゴクラク」


ぎゃー! しゃべった!


「おいおい。オレは皇帝だよ。この鏡を贈った本人だ」


「あっ! そうなの? ありがとう」


「これ、神仙霊鏡っていうんだ。くれてやった百枚の内で一枚だけな。

 しかし、よく当てたなあ。

 会話できるのは、韻多根津斗という魔法だ。音声は自動翻訳な」


「ねえ、ねえ。私のだけ見て、ズルくない?

 あなたのも見せてよ」


「何を? あっ! あれか。とんでもないことを言い出すんだな。

 いいだろう。見せてやる。どうだ! 百戦錬磨の宝刀だぞ」


「うわー! たくましい!」


「そりゃあ、お前のを見たんだから、パンパンだ」


「もっと、よく見せてよ」


「よし! ここで鏡を二枚使うぞ!

 神仙霊鏡をなん枚も、オレは持っているんだ。皇帝の特権だな。

 これを向かい合わせて立てるんだ。そうすると不思議なことが起こる。

 合わせ鏡だ!」


「あっ、あっ、無限に続いてる! 隧道(とんねる)!」


「ここへ、突っ込むぞ! 黒光りだぞ!」


「ああっ! 来た来た!

 すごぉーい」


「どうだ。見惚れるだろ」


「うん。これ、欲しい」


「おおっ! うれしいことを言ってくれるじゃねえか。

 まぼろしだけどな。

 おれも、お前が好みだよ」


「じゃあ、二人、あの世で一緒になる?」


「そうしようか。楽しみだな」


「「指切りげんまん、嘘ついたらハリセンボン飲〜ます」」


         ◆


 とうとう、お陀仏になっちゃったわ。いつかは、みんな、こうなるのよね。

 あっ! そうだ! 皇帝を探さなきゃ! 確か、先に来てるはず……。


「あっ! いたいた! 天国ってすごいなあ。思念で動けるんだ」


「おい。久しぶりだな。

 髭も衣服も無いけれど、イメージを思い浮かべるだけで判るだろ」


「かといって、裸体というわけでもないし……、不思議な感じね。

 あの鏡を一緒に埋めてもらったんだけど、持ってこれなかったわ。残念」


「まあ、不要だけどな。念だけで自由自在なんだからさ」


「そうなのよね。あなたのあれ(・・)、握ってみたかったのになあ」


「ははっ、自慢のあれも現世に置いてきちゃった。ごめんな」


「ところで、となりの女性は誰? あなたの横に立っている人よ」


「ああっ、この娘か? 陪葬妃というやつだな。

 オレが死んだときに、一緒に埋められたんだ」


「……」


「ただな。天国って、みんな平等だろう。皇帝も平民もないんだよ。男女もない。

 その一方で、オレには負い目があるからね。この娘に奉仕しているんだよ。

 だから、お前とは一緒になれないぞ。すまないな」


「そうなの。せっかく楽しみにしていたのになあ。

 『指切りげんまん』って約束したけど、その指が無いものなあ」


「おい。それはそうと、お前の後ろに続いている群衆は何なんだ?

 あっ! そうか! お前と一緒に葬られた奴婢百余人か!」


 ぎゃー!!!! どういうことなの?

 私、頼んでいないのにぃー!


      ーー 完 ーー

すいません。魏志倭人伝の内容とは若干のずれがあります。

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