19 本気のXXの果てに☆
おおっ、頼もしい。それでこそアリシアだ。さっき泣いたカラスがもうワロた。
オレは夜着のままベッドに横たわる。
アリシアの手のひらが胸を撫でる。くすぐったい。乳首は勘弁してくれぇーい。必死に堪える。腹筋の膨らみを確認している。シックスパックではないけどね。と、上に乗ってきた。身体に跨る。内股で下半身を挟む。えっ、頭を掴んで、ガハッ! 口唇を合わせてきた。胸と胸が重なる。あぁ柔らかい。ウナジに口唇を這わせる。
こりゃあ官能小説を読みこんでいるな。よくぞ神殿に持ち込めたものだ。
こっちからも、あれこれ、技の限りを尽くして攻め立てる。アリシアはヨガり始める。そりゃあ、メスが感じればオスは、うれしい。興奮する。いつしか暴発寸前に追い込まれた。
しかし、そのときだった。
おかしなことに、頭が冴え渡ってきた。本来なら、歯を食いしばって噴火に耐えるところだ。この極限状態で、精神が凪いできたのだ。海綿体が充血の絶頂にある一方で、理性は凪の様に穏やかだ。我が頭脳は、国の隅々まで俯瞰する高みに登った。国民の日々の暮らし、国家統治、貴族社会、官僚組織、軍隊、神殿、前の妻である王后、二人の子ども、そして、聖女を、アリシアを、全て見渡した。
これらを統べからく、オレは護れるのか?
そうなんだ。あらん限りの力を絞り出せば、守りきれる。自負自信がタギる。
我が愛するアリシアを、聖女の軛から解き放つ。今、このときをもって、救い出すのだ。一時の欲望に血迷ったのではない。オレは決して快楽の亡者ではない。己の退路を断つのだ。
改めて愛撫を始める。しばらくしてアシリアの身体は、受け入れる準備が出来た!
よし!
ときは来たれり!
ユックリ覆い被さり、五体を重ね、貫いた。
得も言えぬ充実感が全身体に満ちる。
アリシアの霊力が我が身に移る。
そのまま二人は固まった。
◆
どれほど時が流れたのか。アリシアは動かない。そっと身体を離して、鼻腔を確認する。呼気が感じられる。生きている。後始末をしてやる。
オレは自分自身の身支度を整えて部屋を出る。戸外は白み始めている。神殿の最奥、参拝所にたどり着く。
聖女に仕える巫女がオレの顔を見るなり、静かに言葉を絞り出す。
「結界が消滅しました」
「よし」
そう答えて、神殿正面に出る。大声を発する。
「馬を持て!」
愛馬に跨ると、再び叫ぶ。
「者ども、つづけ!」
単騎、要塞へ駆ける。兵が追ってくることなど、お構いなしに。
国境にたどり着くと、鬼人と化し、十里の魔物を駆逐する。向かうところ敵うものはいない。アリシアの加護により無敵だ。これで五年は大丈夫だ。
ことが済むと城に戻った。オレは退位し、息子を即位させた。前の王后に王太后の称号を与え摂政とした。そしてオレは無冠となり、アリシアの許に帰った。そして、身分を隠し要塞の近くに居を構えた。万が一への備えだ。
アリシアは男女の双子を産んだ。
五年後、いくら待てども神託は降りず、新たな聖女が出現することはなかった。でも我が国軍は無敵を維持した。
二人は、四十五と四十になった。アリシアが言う。
「ふふふっ、まだ、出来ますね」
そう、我ら夫婦は未だに元気だ。死ぬまで、ヤれる。ヤるつもりだ。
ーー 完 ーー