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バッティングハンター  作者: いんじんリュウキ
第1章 卒業後の進路
18/48

アポロス再び

 翌朝、タフィたちは朝食を干し芋で軽く済ませると、帰路についた。


 途中、ヴァーベン村で食事をとることにしたのだが、またしてもそこでアポロスと出くわしてしまったのだ。


「待っていたぞ平民」


 村へと続く道のど真ん中で、アポロスは腕組みしながら立っていた。


「なんでまたいるんだよ……」


 タフィはうんざりした顔になる。


「だから待ってたんでしょ。ベルツハーフェンへ帰るにはこの道を通らないといけないから、待伏せするのは簡単だし」


 カリンが言ったように、情報を得ることができなかったアポロスは、包丁を探すことを諦め、探しに行ったふりをしてここで待ち構えていたのだ。


 なぜそんなことをしたのかといえば、その方がタフィへの嫌がらせになると思ったからである。


「平民、伝説の包丁は手に入れられたのか?」


「……」


 タフィは無視して歩き始めた。


「包丁は手に入れられたのかと聞いているのだぞ、平民」


「……」


 アポロスが語気を強めたのに対し、タフィは歩くスピードを速めた。


「こら! 無視するな平民!」


「……」


 アポロスはついに怒鳴り声をあげ、タフィは走ってその横を駆け抜けた。


「待て……待てって……待てよ!」


 タフィの後を追って、走り出すアポロス。2人の追いかけっこが始まった。


「……バカ2人が走っていっちゃったよ」


「どうしますカリン姉さん?」


「ほっといて村へ行ってもいいけど、おもしろそうだからちょっと見てようか」


 カリンとボイヤーが興味半分で見ているなか、タフィはアポロスを振り払うため、道を逸れて草むらの中へと走っていく。


 なお、包丁の入った木箱はカリンが持っている。


「はぁ……はぁ……そろそろあのバカ息子は体力が限界だろう」


 チラッと後ろを振り返ると、アポロスは顔を真っ赤にしながら息を切らして走っており、距離もどんどん離れていた。


「はっ……はぁ……は……こ、こうなったら、意地でも止めてやる。はぁ……はっ……くらえっ!」


 アポロスは振りかぶった右手から、勢いよくウォーターボールを解き放った。


「あんにゃろう、魔法撃ちやがったな」


 背後から迫ってくる魔力を敏感に感じ取ったタフィは、振り向きざまにバットを出すや、体勢を崩しながらも左手一本でウォーターボールを打ち返した。


「わっ、こっち来た」


 打ち返されたウォーターボールは、小フライとなってアポロスの手前に着弾した。


「とっとと失せろ、このバカ息子!」


 タフィもさすがに無視し続けることはできず、アポロスに向かって怒鳴り声をあげた。


「うるせぇ。そっちこそとっとと手に入れたか教えやがれ、この平民野郎!」


 アポロスは罵声とともにウォーターアローを放った。


「おい、お前どこ目掛けて放ってんだよ」


 タフィがせせら笑ってしまうのも無理はない。アポロスが放った魔法は空へ向かって飛んでいったのだ。


「バカめ、それは真上から襲いかかってくるんだよ」


「なんだと!?」


 真上を見上げると、タフィ目掛けて水の矢が垂直に降ってきていた。


「真上から来るやつは打てないだろ、ざまぁみろ」


 アポロスは高笑いした。


「なめんなよ。真上からだろうが、バットが届きゃあなんでも打てらぁ!」


 タフィはグイっと体をのけぞらせると、降ってくる矢を叩き落すかのように思い切りバットを振り降ろし、ウォーターアローを打ち返した。


「くそっ」


 アポロスは悔しそうに地団太を踏んだ。


「どうだ、まだ撃ってくるか?」


 タフィは挑発するようにアポロスをバットで指した。


「覚えてろよ!」


 捨て台詞を吐いたアポロスは、馬車が停まっている方へ向かって走り去っていった。


「ふん、てめぇのことなんざ忘れてやらぁ」


 タフィはひょいっとバットを担ぎ、カリンとボイヤーがいる方へ向けて、満足そうな足取りで歩き出した。


「兄やんのバッティング見事でしたね。けど、あの人は何しに来たんでしょうか?」


「何しにって、嫌がらせに決まってるでしょ。たぶん、包丁を手に入れてたら力ずくで奪うつもりで、手に入れてなかったらバカにするつもりだったんでしょうよ」


 カリンはアポロスの思考を的確に読んでいた。


「なるほど。だからしつこく『手に入れられたのか』って聞いてたんですね。……あ、兄やん、お見事でした」


 タフィはドヤ顔でボイヤーの褒め言葉に応える。


「俺にかかれば、バカ息子なんて一捻りよ。それより、さっさと飯にしようぜ。俺腹ペコだよ」


 思わぬ邪魔は入ったものの、タフィたちは無事にまともな食事にありつけたのだった。

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