体育祭の日、宇宙人が空から降りてきた
人文字を見つけて降りて来たのだろう。あたしたちが『GO!GO!』と空に向かって皆でカラフルな文字を作ってるところへ、突然アダムスキー型のUFOがCOMEしてきた。
校長先生が長話をしたあたりに着陸すると、壇の上に緑色の宇宙人たちが銃を持って上がった。高度な文明なのか翻訳機を通じて『ノウミソ、クワセロ』とか演説を始めた。
どうなっちゃうの、今年のあたしらの高校の体育祭!?
「楽しみだぜ、長距離走」
燃が一人、張り切ってる。
「早く俺の出番になんねーかな」
「それどころじゃないから」
あたしは普通にツッコんだ。
「この長距離走、勝ったらおまえに告白するんだ、結!」
「今断るから。それどころじゃないんだからバカなことはやめて」
「そうかドラマだな? 感動的な勝利のドラマを見せつけてやればおまえの心は打ち震え、世界に♡がいっぱい飛び出すんだな!?」
「何があってもごめんなさいだから、やめて」
「ウゴクナヨ?」
壇上からあたしたちに銃を突きつける宇宙人。
「ウゴイタラ、クウゾ?」
「うおおおっ!」
燃が、動いた。
「出番なんて待ってられねーぜ!」
「オイ!」
びっくりする宇宙人。
「ウゴクナッテ、イッタダロ!?」
宇宙人を無視して燃が走り出す。
スタートの合図も無視して一人でトラックを猛烈に走り始めた。
「オイッ! キサマ!」
UFOから出てきていた宇宙人七体が、全員で燃を追いかけ始めた。
「トマラント、クウゾ! 」
「うおおー!」
止まらない。走り始めた燃は誰にも止められない。
「軍隊ヲ呼ビニ行クツモリダナ!? ソウハサセン!」
バカな宇宙人たち。ゴールで待ってればどうせ燃はトラックを一周して戻ってくるのに。
ズダッゴワッシャー! 燃が派手にゴールした。元気ビンビンだ。
宇宙人たちもゴールした。でも体力がミジンコ並みだったのか全員ヘロヘロだ。
何をする力も残ってない宇宙人たちを、先生たちが取り押さえ、校長室に連行して行った。
燃がまっすぐあたしの前にやって来た。
「どうだ? 見ててくれたか、結!」
一人で体育祭と地球を救った彼の健闘を称え、あたしは微笑んだ。
「うん、かっこよかったよ」
「感動したか!?」
「うん。感動した」
「お……、俺と……」
何を言い出すのかはわかっていた。さっき聞いたし。
「俺と付き合ってくれえぇっ!」
差し伸ばされた手の、広げた掌に、あたしは前髪を乗せた。
「ごめん。バカは嫌い」
そう言ってUFOに駆け込んだ。追いかけて来てくれたら考えてあげる。