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ユウガな軍神 街獣総力戦  作者: にのい・しち
一章 ことの始まりは優雅に
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退屈の牢獄

 一通り悪さを謳歌した後、今日の武勇伝を称える為たまり場にしている公園へ、場所を移す。

 小さい公園で午後になると遊ぶ子供はおらず、丁度、俺らウルヴァリンズの作戦会議に利用しやすくなる。

 俺はジャンルジムの上に登り座った。


 まっ白なキャンバスに何色もの絵の具で塗りたぐるように、今日も盛大なイタズラで色を付けてやったぜ。

 学校で生徒達が俺らのパフォーマンスに話題持ち切りだと思うと、全身がウズウズしてくる。

 明日学校行ったら先生共に叱られるだろうが、そんなことに腰が引けてたら何も変えられない。


 なのにコイツときたら。

 下でジャンルジムに背を預ける相棒のクリムは、マズい飯を食ったような沈んだ顔でボヤいた。


「あ~ぁ。明日学校でこってり絞られるんだろうな? 明日なんかこなきゃいいのに」


「クリム。今更ビビってんじゃねぇよ? 俺達の戦いはこれからだ!」


「今時、流行らねぇ漫画みたいなセリフ言ってんじゃねぇよ。バ〜カ」


「るっせぇな! お前も学校サボってんだからバカだろ?」


 優等生のタロが割って入った。


「二人ともバカなんだね」


 相棒がすぐに降りられない俺の代わりに、タロのキノコヘッドを殴る。

「痛いっ⁉」と叫び、タロは変な髪型の頭を抑えた。


 ニット帽で隠れた眼差しを虚空へ向け、クリムは何か不安をはぐらかすように言う。


「悪さばかりだな、俺ら……ずっとこんなバカやって生きてけんのかな?」


「どうしたんだよ急に? 恥ずかしセリフ言いやがって」


「いや、なんかさ……どんな大人になるのかって、ふと思ってさ。十年後、二十年後も俺らつるんでんのかな~……てな?」


 思春期から来る一種の憂鬱なのだろうか、キノコメガネのタロまでセンチメンタルな言葉を言う。


「僕達、もう十五歳だもんね。そろそろ将来のことも考えないと」


「もう十五歳? 何言ってやがる。まだ十五歳だろが!」


「ディノンはいいよね、バカで。将来のこと何も考えてないんだな」


「タロ、コロスぞ? お前らバカと違って将来ならもう決めてるぜ」


「ウソ? 本当?」


 ウソなのか本当なのか言葉の矛盾をなじりたいが、代わりに俺は勿体もったいぶって答えた。


「あぁ、俺はパイロットになりてぇ」


 相棒のクリムがズリ下がる黒いニット帽を指で上げて茶化す。


「ははは! ありがちだなぁ? 翼を手に入れて自由になりたいってか?」


「うるせぇ! この退屈な街から出る方法は飛行機か戦闘機のパイロットなって、空から脱出することだ。俺は普通に大人になってネクタイの形した鎖を首に巻いて、他の奴と同じスーツを着て囚人みたいに会社へ行くのはヤダね」


「まるで牢獄みたいな言い方だな」


「あぁ、牢獄だぜ。ここは退屈の牢獄だ! で? クリム。お前は大人になったら何になりたいんだよ?」


 相棒はこっちを見やった後、目を反らしてうわ言のように呟く。


「この街じゃ何もねぇなぁ……」


「何もって、なんかあんだろ?」


「なんつうか。今、生きてるのか死んでるのかわからねぇしな」


「は? 哲学か? 学校サボってるくせに」


「くたばれ、バカ」


 相棒は舌打ちの後、何かを思い出したように、右腕を九時に上げて切り上げる。


「じゃ、俺は家の手伝いがあるから、これで帰るぜ」


「え〜!? まだ早ぇよ。この前も同じこと言って早く帰ったろ? 本当のこと言えよ」


「マジで家の手伝いだって」


「お前の親、郵便局の配達だろ? 何を手伝うんだ?」


「おい。配達を見くびるなよ?」


 相棒が帰るのを見計らってか、キノコメガネのタロも便乗する。


「僕も帰るよ」


「お前もかよ? 政治家様の息子は学校では悪い子ちゃんで、家では良い子ちゃんですか〜」


 俺が皮肉を込めると「ムカつく」と、タロは顔を膨らませて威嚇した後に、負けじと水を差す。


「ディノンはどうするの? また一人で【ユウガ岬】行くの? 案外、根暗だよね」


「るせぇよ。あそこの眺めが好きなんだ!」


「でも怖くないの? あそこの崖で人がたまに落ちるから大人が近づくなって言うし、それに……幽霊の噂も」


「崖から落ちた少女の幽霊だろ? だから何だよ? 幽霊がいたら俺が捕まえて見世物にしてやるよ」


「幽霊だから無理でしょ?」


「だぁ~! 大人の言うことばっかり聞いてたら何もできねぇ、どこにも行けねぇよ!」


「はいはい、最後はいつもの屁理屈だね? じゃぁ、また明日ね」


 俺が恫喝どうかつする前にタロは背中を見せて去る。

 

 たくよ。あのチビ助の黙ってられない余計な一言がムカつくぜ。だから減らず口が閉じるまでケツをぶっ叩きたくなる。


 仲間二人が公園の出入り口から姿を消すと、いよいよ俺一人になりユウガ岬へ行くことにした。

 本音は学校で悪さしたことを今頃、家にチクられ帰って母親に説教されるのが嫌なだけだが……。

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