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ユウガな軍神 街獣総力戦  作者: にのい・しち
二章 邪眼の中の侵略者
30/34

非常にエスニシティな

 ユリナ知事は彼らへ語気を強め返す。


「先ほどから、こちらの案を否定する意見ばかり目立ちますが、皆様で何か代案がおありなのでしょうか?」


 内務大臣がイラ立ちを隠さず噛みついて来た。


「それを話合う為の会議であって、端から最良の案があれば、こうもがんを突き詰めることなどない」


「でしたら私の提案で一つ、策を講じて頂けませんでしょうか?」


 引かないユリナ知事へ防衛大臣が真っ向から否定した。


「双方が生きるか死ぬかの狭間で、得られる物は限りがある。答えは明白ゆえ机上の空論なのだ。無駄な議論に陥るのが目に見えている」


 無駄かどうかを含めて話合う会議なのに、建言の停滞と否定が、より無駄な時間を生んでいる。


 内務大臣が話の腰を折り総理へ進言した。


「総理。そろそろ新聞社、ラジオ局へ向けた記者会見を打ち立てねばなりませぬ」


 総理は口を歪めて返答。


「今後の方針を聞かれるよね。まだ何も決まってないのに……仕方ない。アレ(・・)をやろうか」


 内務大臣が「アレ、しかありませんな」と返すと他の大臣もその返しに同意した。


 大臣達の妙な連帯感の中、場の空気が掴めないユリナ知事は話に置いていかれるも、ここに集う政治家に期待を寄せることは出来なかった。


§§§


 アイム総理は新聞社やラジオ局の記者がくり出す質問へ、目まぐるしく解答して行った。


「総理。今回の事態をどうお考えですか?」


「非常にエスニシティな問題として受け止めております」


「総理。被害に付いて何か救済措置は考えておられますか?」


「目下、エスニシティな意見を元に、エスニシティな試行錯誤を検討し、エスニシティな解決を見いだす所存です」


「総理、はっきり答えて下さい! これからの市民の生活は保証されるのですか!?」


「今回の非常事態に際して、政府、市民合わせ、エスニシティに取り組んで行く次第です」


 総理の受け答えを目の当たりしたユリナ知事は、言い様のない不安で目眩がした。


 まともな受け答えもせず、ただのらりくらりと言い逃れ

 この街に生きる人々の命運を、今の政治体制に預けて、本当に良いのだろうか?


§§§


「何言ってるかわかんねぇな? 何で大人って難しい言葉を使うんだよ?」


 見える世界が変わった日、奇跡的に生還を果たした俺ことディノン様率いる三人だけの愚連隊は、今日も学校をサボり電気店に置かれたラジオを聴いていた。


 ぼんやり黄金の空を眺める真っ黒クロ助のクリムはさておき、政治家の四男坊タロが得意気に話題を広げる。


「わざと難しい話で曖昧にしてるんだよ」


「だから、なんで?」


「言いたくないことを行ったように思わせたり、面倒くさい質問をされないようにだよ」


「出た。大人の汚えねぇやりくち」


 街の裏面、第三層は災害に見舞われることが無かったので、人通りはいつもと変わらず退屈な風景だった。

 それでも小走りでどこかへ行く人、災害支援の募金を呼び掛ける人を見ると、自分の知ってる日常が徐々に変わっていくのを感じる。

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