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ユウガな軍神 街獣総力戦  作者: にのい・しち
二章 邪眼の中の侵略者
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エスニシティ条約(1)

 街の被害状況と救助派遣地域の確認、及び侵略行為の精査により閣僚会議は有事が起きてから、五時間後に行われた。

 場所は街の第二層裏側、総理官邸会議室。


 集まった議員の面々が頚に巻くイチョウ型のネクタイは、傾いていたりほどけかかっていたりと、各々の疲労を形にしていた。

 Vの字型の会議テーブルに着席した議員達の顔にシワがより深まっていたが、比例するように目は綴じることを許されないとばかりに、見開かれていた。

  

 Vの字が合わさる位置を上座に総理大臣が着席し、その両脇を議員達が囲む。

 上座から見て右辺は順に内務大臣、大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、文部大臣、商工大臣。

 内政に関わる各大臣が顔を並べる。


 左辺は防衛大臣、外務大臣、司法大臣、通信大臣、拓務大臣、企画院総裁。

 街の外へ方針を打ち立てる各大臣が並んだ。


 開いたハサミのような会議テーブルの周辺に複数の長方形のテーブルが置かれ、事務次官や各地域の行政担当官が着席していた。

 街の行政を包括するユリナ知事は、財務大臣の後ろで影になるように別のテーブルで着席。

 手元に配られた資料を眺めながら総理は、鼻で笑うように話題を持ち出す。


「【城塞街獣ユウガ】……こんなセンスの無い名前、誰が名付けたんだろうね?」


 総理の左辺で着席する防衛大臣が小さく返した。


「歴代の総理大臣です」


「え? そうなの?」


 現総理は無知からくる気恥ずかしさを、誤魔化すように話題を変える。


「それにしても、ついに軍神が目を覚ましましたか……」


 内務大臣が話題に便乗。


「しかし、何故、もっと早くにこの事態を予期できなかったのか。さすれば避難誘導や相手方の対処など、先手を打てたはずなのですが……」


 後方で話を聞くユリナ知事の眉が痙攣する。

 それを前日の定例会で報告したのに、あっさり蚊帳の外に置いて、どの口が言わせているのか?

 責任の所在を別へ転化し総理へゴマをする、典型的な官僚上がりの政治家だ。

 見苦しくても大臣の椅子に座れるのだから頭が痛くなる。


 総理は探るように質問した。


「災害に伴った被害はどれくらいですか? 内務大臣」


「はい。被害は街の表側、第二層から第三層。上層階の崖崩れにより第四層に二次被害が出ております。あくまで暫定的ですが避難者はニ万人、倒壊した世帯は八千戸、負傷者は三千人、行方不明者は二百人、死者は百人に上ります」


「なるほど、行方不明者の無事を祈りますが、いずれその数が死者に上乗せされるかと思うと、気が重くなりますね」


「現在、街の裏側の被害は地震により交通機関の麻痺。建物、防壁のひび割れ等が確認されていますが、死傷者はありません」


「全く、これだから街獣(かいじゅう)は嫌なんですよ。なんでもかんでも壊すのに子供には人気があって、破壊の尻拭いは大人の仕事なんだから…………で、相手方のジャガン・エスニシティが言う表明をどう解釈すれば良いですか? 外務大臣」


 上座の左辺、防衛大臣の隣に着席する外務大臣は、待ちわびたように力を込めて説明した。


「街を形成している街獣には共通の協議【エスニシティ条約】が結ばれています。我々の街は安住の地を得る代わりに、他の街獣への攻撃は許されず、また他の街獣が我々を攻撃、侵略することを認めないのです」 


 外務大臣は一息挟んで後に少々長めに話を足した。


「ですが相手方(ジャガン)の言い分は我が街が進行ルートを妨害していると申しました。街獣の進行ルートは街獣が摂取しなければならないエネルギーを散策する行為で、街に住む市民にとっては資源を確保する為の旅路です。条約にもこれを妨げてはならないとあります」


「矛盾があるね。我が街は他の街獣が進むルートの邪魔にならない場所に、ずっといるのに、相手方はルートの邪魔をしてると言い張ってる」


「ご説明します」

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