人ではない部分での反撃である
「ウォッホ……ォォォォォオオオ! ォオオオオオ!」
こ、この野郎! おもちゃを手に入れたゴリラの如き喜び方しやがってこの野郎が! お前ら上等だ、上等だよ! ロープ強奪とか……とか……
『ちょ、ハチまだ脱出出来ないの!? こっちは三人がかりだから、ちょっとキツイ、けどそっちは未だ二対一でしょ!? 何とかならない!?』
『なんともならん! なんか、何だろう……女騎士チックに掴まれて、力が入らん!』
『いやなにその女騎士って!? どうしたの!?』
……ついソシャゲで覚えた謎知識が。いや、この腕が縛り上げられちゃって上に上げられちゃってるのさぁ、捕まえてるのが屈強なゾンビ野郎の両腕じゃなければ……いや、あの、俺も筋肉隆々だから絵面物凄い暑苦しいけども。
『と、兎も角今は此奴らを吹っ飛ばして脱出するのが先決だ! 急げ!』
『急いでも脱出できないんだよ! 助けて母さん! ちょっと、マジで動けないから!』
そ、そうだお袋! 今は見に徹しているけどここまでピンチなら流石に助けてくれるかもしれないし……! 頼む! 助けてくれお袋、ここは親子の絆をですね!
『さぁハチ選手、タウロス選手、群がるゾンビ軍団に苦戦中! ハチ選手に至ってはお茶の間の子供たちには見せられぬあまりにもセンシティブな……』
『ゴルァアアアアアアア!? そこの馬鹿親ぁああああ!?』
何を、何を実況解説を楽しんでるお前ええええ!? ぶん殴り飛ばしてやりたくなったけど今は無理だから勘弁してやらぁ!
『もうちょっと頑張りなさいよー、ひっさしぶりの運動なんだから、頑張りなさーい』
メッチャやる気あるから! それでもこの状況だから! 俺だって好きで女騎士みたいな格好にさせられてる訳じゃ……オイちょっと待て。
『お袋なんでこの格好がそうだと知ってる……?』
『最近のパソコンゲームって楽しいわよねー。色々知識吸収出来るわー』
此奴、なんぞ如何わしいゲームをその年でやってやがる……! 変な所に興味ばっかり持ちやがって! 年相応にパズルゲームでもやってろってんだ! バーカ!
『いやぁ、置いて尚盛んって奴よ。アンタも見習いなさい?』
見習ってたまるかってんだそんなヒヒ爺みたいな生き方! 俺の家には偶に女性来るんだぞ本当に! そんなの見せたら良くない影響受けちゃうでしょうが!
『ええいもう良い! お袋にはもう頼らんわ! 自力で脱出してやる!』
『ちょ、母さん冗談ですよね!? 止めてくださいね本当に! まさかこの地獄みたいな状況で放置とか無いですよね!』
多分放置だよ! 俺達は力強く生きるしかないんだよ残念ながらな!
『あ、兄貴……取り合えずアンタだけでもなんとか、脱出頑張って! お願いします!』
『そんなこと言われても、やれるもんならとっくにやってるっての!』
ですよねー。
『やっぱり俺が脱出するしかないか、こっちの方が人数も、少ないし!』
「がんば……れ……おまえら……こいつら、確実に……弱ってる……ぞ」
うるせえ弱ってないわ! まだまだ元気満タンだってんだよ! とはいえ元気満タンだからってこの状況を打開できますって訳でも無いけれども!
『そして急いでほしい……そろそろ、ちょっと噛みつかれる痛さがシャレにならないレベルになってましまって、マジで、コレ食い込みそうになってるから!』
ええいそんなこと言われても……いや待てよ。俺は今メッチャ抵抗してるから、此奴らは凄い抑え込もうとしてる訳だ。でも、逆にいきなりこっちが力を抜いてやれば。
『――いやそんなもん人間相手じゃなきゃ通じないかぁ』
『ちょ、何力抜いて!?』
えっ、あっ。
『しまった』
『ばかあああああああ!? もう抜け出せないぞきみぃ!』
やっちまったゼ(笑) イヤー兄貴の事言えませんねぇ……あーもう、これ完全にガッチリと掴まれちゃったなぁ。いやぁ抵抗しようにももうどうしようもないというか。ハハハハハ。あーどうしよう。ゾンビの腹筋しか見えな……?
『――ちょっと覚悟決めるか……もう怪我くらいは覚悟してもらうぞこの阿呆!』
久しぶりだなぁ……この角を、こういう目的に使うのはっ! よいしょっ!
「――ォギョォウ!?」
『っし、どうやら触覚自体は死んでないらしいなヤッパリ! 喰らえ、こうやって脇をつついて、つついて! 親戚のガキにやったら、身をよじらして喜んでたね!』
くすぐったがってただけともいう! 兎も角、触覚があるならコレはちょっと通じる筈と思ってたらもう効果出て来た、大分力緩んだねお前。
「――ォオウ!?」
『隙を見つけりゃ即反撃! っしゃ先ずは拘束突破ぁ!』
そして下のお客様にもちょっとご退場願わないとな! ハーイお客様お触りは厳禁です事よパーンチ!
「ォウエ!?」
『脱出……! 良かったミノタウロス生まれで! 角に感謝!』
コレからさらに角に磨きかけないといけませんねぇ……感謝も込めて全力で。はっはっはっ、とかやってる場合じゃない、兄ちゃんがゾンビの餌にされちまう!
『ちょっと待ってろよ、今助けるから……! オラッ! お客様おしゃぶりはご遠慮クダサーイ! 兄貴を餌にするのはご遠慮クダサーイ!』
三人が揃ってむしゃぶり尽く姿は正にスプラッター映画そのものと申しますかええいこのマジで離れろ……この、あらよいしょっ! どっこらせっともさ!
『兄貴、無事か!?』
『なんとか……何本か毛を持ってかれたけど……』
あ、ホントだ。ちょっと脇の毛薄くなってる。大丈夫大丈夫、こんなん何時か生えてくるって。それよりもしっかりと歯形がついちゃってるのが痛々しいというか。
『大丈夫、血とか出てないかい?』
『ギリッギリセーフ。でもしっかり噛み付かれてるのは分かるな』
『噛み跡残ってるじゃん! あーチクショウがぁ! 好き勝手やってくれやがってあのクソッたれが……! ちょっとムカついて来たぞォ!』
『おう落ち着けよ』
兄貴ちょっと、その、口調が完璧にチンピラ化してますよ? 落ち着いてください! 兄貴が暴力的になるのは……まぁいいか、暴力的になる分には別に。兄貴が暴れてくれるなら。うん。その分俺も楽になるってもんだし。頑張れ兄貴。
尖ってる先でツンツンされたら、そりゃあ、ねぇ?




