アクアマリンの空へと
『ちゃんと受け見取れよぉ! 俺の極み投げをよぉおおおお!』
『なんですか極み投げうわぁああああああああ!?』
極み投げは、故郷に居た時に身に着けた……まぁ、荷物運びのやり方というか。まぁそれは良いでしょうよ。問題は飛んで言ったアンタの方で、これ大丈夫か?
「か、怪物……! あの実験体を、軽々と!?」
「落ち着け! 大丈夫だ、投げつけられたくらいでは死なない! 死体実験体をベースにしているのだ、投げられたぐらいでは死なない……死ぬものか! 私たちの実験体が!」
お前主人公を応援するヒロインみたいだなそのムーブ。全くもってヒロインっぽくないけれどもな、その髭面皺くちゃじゃ。寧ろ吐き気すら催す。それはどうでもいいから、先ずは鮫君の生存確認を……!
『結構勢い良く投げちゃったからなぁ、間違って首グキ゚、とかなってたらもう死んでるんだよなぁ……殺人事件起こして逆転逮捕劇とかコメディだよ最早』
しかも逮捕されんの被害者の俺だろ? もう、予想外の展開越えて顰蹙もんだよ。視聴率九割減少、企画打ち切りまであるよ……まぁ、それは兎も角として。
『大丈夫かい!?』
『な、なんとか……これが痛みというものなのですね……』
あ、なんか生み出されたばっかりの生命っぽい事漸く言ったな。あるよね、初めての感覚にこう、戸惑ったり、感動したり、はたまたそれを冷静に解析して不気味さを演出したりとか……うんうん。
『しかし、成程……痛みというのは、生きている実感なのですね、はい』
こうやって穏やかに悟り開いてるみたいなのは凄いレアケースだとは思うけれど。凄いよ、あの真っ黒な目がまるで天上の果てを見通しているが如くだもんね。
『こうして生きている実感を得てしまうと、死ぬのが少し、惜しくなってきました』
『そうだろ……いや、今から殺すみたいな言い方止さない? 俺君を生かそうと必死マンよ? その辺り自覚して?』
『あ、はい。そうですね申し訳ありません……』
何のためにここまで連れて来たと思ってるのか……とはいえ、このプランも上手く行くかどうかは正直神の味噌汁と申しますか……いや、神のみぞ知る、か。
「い、居ました! 実験体は……ピンピンしてますよ!」
「よーしよし流石ワシの生み出した実験体! まだまだ試合は始まったばかりじゃ!」
いや、その試合もうそろそろ終わらせるんですよ。どうせ時間かける程の茶番劇じゃないんだ。カカッと最終段階の準備をしてみようじゃないか。
『じゃあ……右の方に寄ってくれる? ちょっとずつ』
『あ、分かりました。えぇっと、崖の端ギリギリで止まればいいですかね』
『あー、いや。途中で加速してもらう感じで。その勢いでこう、もつれ合いつつ』
『成程……一応確認しますが、大丈夫ですか?』
とは思いたい。大丈夫じゃなかったら俺の犯罪歴が生まれてしまうから。そんな悲劇は全力で避けたいと思うミノタウロス人生です。
『まぁ、八割は大丈夫だと思う。その八割が信用できるかは君次第だけれども』
『八割、八割、ですか……いっやぁどうなんでしょう、ゲームでの八割、というのは外れて当然、というデータが……あるのですが』
『それ何処の廃人の意見なんだろうね。ホント色んなデータ詰め込まれてるな』
だからこそこんなにご立派な人格が生え申したとは思うんだけれども……まぁ、それは兎も角としてだ。
「――っ! 動き出しました!」
「双方が間合いを取りつつ……立ち合い特有の現象だな。迂闊に距離を詰めず、機を伺って戦う。先ほどとは全く別次元、実験体は更に進化を遂げているのだ!」
君達の思う進化の段階はもうとっくに通り越してると思うけどね。まぁそれはそれとして確かに……如何に茶番劇とはいえこの独特の緊張感、なんだろう。凄い覚えがあるというか……あ、そうだ。
『……某花札メーカーの名作テレビゲームのミニゲーム、こんな感じだ』
『えっ? どうしたんですか急に』
『いや、昔の話。小っちゃい頃の思い出が、こう、染み出して来たと申しますか』
桃玉と剣士玉が僅か一瞬の刹那のタイミングに全てを賭けるあのミニゲーム、兄貴とやって喉からっからにしてたっけか。懐かしいのう。
『まぁそれは兎も角として、行くよ。タイミング合わせないとどっちも危険だから』
『はい、分かってます。どっちがどっちに合わせますか?』
『そっちに合わせるよ。どっちもこういうのは素人だろうし、だったらここは大人が若い方に合わせて動くのがセオリーでしょうよ』
精神年齢的には向こうの方が圧倒的に高いかもしれないけれども。
『了解しました……じゃあ、先ずは加速しつつ殴りに行って、そこから、後は流れで』
『おぉっと意外にも結構アバウトな指令が。オッケー、後は流れで行こうじゃない。要するに臨機応変に、柔軟な態度で対応する、だ!』
ダッシュからの右ストレートを受け止めつつ引き寄せてごろごろ転がり……取っ組み合いの形。ただ何方も気を抜いて、あくまで取っ組み合ってるだけ。暴力を振るう意識も無い様に。
「よ、よし! マウント取りました! コレは行けますよ!」
「いや、実験体を投げ飛ばす程の身体能力を持っているんだ。これで終わるとは」
賢いねぇ。だが気付いた時にはもう遅い!
『じゃあ行くぞ、覚悟決めろよ!』
『分かりました……必ず生きて帰りましょうね、お互いに』
『当然だ、こんな所で死にたくはないからなぁ!』
どん、と後ろに押し返しつつ……崖の端に背を向けて倒れ込んだ鮫君に対しするのは当然ながら……必殺のタックル!
「あ、まさか!」
「こ、コイツ諸共に……!? 逃げろ! 逃げろ実験体!」
二人諸共に崖の外、アバンチュールフライングじゃい!
続きはCMの後って出て、次回予告になる奴。




