モンスタープロレス、鮫対牛
「やれっ! もっとだ! 全部回避してカウンターを打ちこめば100%勝てる!」
いやそのどんぶり勘定は幾らなんでも無茶が過ぎるんよ。馬鹿なんよ。その理論で行ったら新人ボクサーが無敗の世界チャンピオンを封殺できるのよ。
『……どうやらそちらの教授たちは若干錯乱していらっしゃるようですね……』
『本当に錯乱なのでしょうか。本当にそうなのでしょうか? 貴方がそう思っているだけなのでは? 私はそうは思えないのですよ……』
いや、貴方が言うセリフではないと思うのですよ。言う為の立場が逆なんよ。おかしいだろう君。どうしてそこまで自分の味方にそこまで酷い言い方が出来るのか君。
『博士たちも、諦めるというお言葉をちゃんと理解して頂きたいのですが、取らぬ狸の何とやら……という言葉は入力されているのですか。その意味は理解していらっしゃらないようで』
「良い唸り声だ……声での威嚇は知能的と言えるかは微妙だが、有効なのは間違いない」
物凄い溜息をついているのだが、それを威嚇の何かしらと勘違いするという完全なすれ違いよ……うーん。彼の嘆きを理解して差し上げて欲しい。戦いを好んじゃいないから。何だったら縁側でお茶啜ってたいなぁ、くらいな感じだし。
『威嚇って……教授たちが与えてくださった知能でそんな事しませんよ』
『……君ってさ、その、なんだ……複雑な感情とかは抱いていないのかな?』
普通にこんな見た目じゃなければ……例えばさ、普通になんか、機械とか組み込んでこういう賢くなってるなら、いっそ機械オンリーでアンドロイド的な感じで、そしたらまだ……ねぇ。あるじゃん。
『ないですね。産んでいただいた親を恨みはしません……まぁそれは兎も角として、出来れば思いっきり殴り飛ばしていただければ幸いなのですが。教授たちの野望を散らす為にも、ですね』
そ、そうなんですか……それは大変、そのなんでしょう……なんか、悟っていらっしゃるというか。
『さっきから俺が殴り辛くなってらっしゃるのは……その、分かるかな』
『やはりどんな相手でも話せば情が湧きますからね……そう言った部分も分からないではないですが。まぁこの顔面の濃さを考えれば殴り倒すのに問題は無いと思いますけど』
そんな言う!? 馬鹿なの!? 問題無いと思いますけどーわっはっはっはっ、じゃねぇんだわ! そんなこと言われてさぁ、殴れると思うか!? 殴れると思うならそれはそれで君結構人の心無いよ!?
『とはいえ私か貴方が倒れない事には、収まり着きませんよ?』
『それは……まぁ、そりゃあそうですけどね……だからって、そのぉ……最悪、負けたふりしてもいいよ別にうん。死ぬ振りくらいだったら別に』
『教授たちが絶対納得しないと思うので……諦めましょう。私をぶん殴りましょう』
いやそんなアッサリぶん殴る選択肢を選ばせないでください。
「ええい何を睨み合っているんだ……早くその全力を生かして……!」
「い、いえ教授、隙を伺っているのかもしれません! 相手の隙を冷静に伺っているのだとすれば、その知能を遺憾なく生かしているのかもしれません!」
いやぁただのプロレス中なんですよねぇ……あ、今から右で殴るんですね了解。
「様子見のフック……となれば隙を見つければ一気に飛び掛かって……教授!」
「コレは早めに決着が付くかもしれんな……グハハハハ! 良いぞ、やれ!」
『教授たちも決着を付ける事をお望みの様ですよ。折角ですしご期待に応えましょう』
いや貴方その真逆の事やろうとしてるじゃない。決着というなら確かにそうですけど教授の皆さまがお望みなのは貴方の完全勝利では? と思ってしまうのですが。
『さ、ご期待に応えましょう、頑張って!』
『応援する事ですか!? チクショウ左ストレート行きますよ!』
避けてちょうだ……待って避ける積りが欠片も無いよこのサメさん!? だ、だめだ曲がれ俺の左拳ぃいいいいいいい!? 流石に、こんな、こんな勝ち方はいやぁああ!?
『はっ……あ、あっぶねぇえ! 掠った! 掠った! 危なかった!』
『ダメじゃないですか! しっかり当てないと! そうすればすべて丸く収まると!』
『だからって態とぶん殴らされる訳に行くかぁ!?』
しかも今、今若干拳に当たりに行った節なかったか?! なんてこった、丸く収める為に自分の体を最大限犠牲にしやがってる……!? 一旦、一旦落ち着いて貰わないと。やるにしても俺だって色々覚悟決める時間が欲しい! というか、殴る前提なのがコワイ!
『そ、そもそももし君負けたら、どうなるの!? その辺り分かってる!?』
『恐らくは……殺処分かと思いますけれど』
『殺処分?! ますます無理じゃん! 罪悪感凄いやん!』
こんな理知的な人を殺処分に追い込んだとなると本当に辛いからね!? ワンチャントラウマになっちゃうよ!? もう嫌になってきた!
『大丈夫ですよ、こんな化け物化け物染みた見た目の奴なんて、バッサリと』
『死ぬの怖くないの!? 何なの!? 君の、君の精神構造どうなってるの!?』
それを自覚してるなら頑張って死なない様に立ちまわりなさいよ! 大体化け物染みたとか言ってますけどね、貴方、もう俺からしてみると大分その、おめめがチャーミングに見えてしまってるからね!?
『死は恐ろしい物ですが……平等に訪れるものですから』
『悟るな! 頑張れ! 足掻け! 生きるんだよ!』
どうして向こうが切り札だとか言って出して来たモンスター君の精神構造を心配しないといけないんだ俺は! 俺はぁ……! ええい、仕方ない!
『いいか! ケーオーで終わらせるのは……まぁいい! まぁいいけど……! ここではしないぞ! ここでは!』
『外に出てより派手にやるという事ですか?』
分かりやすく言えばな! でも直接殴って、沈める光景は見せない!
『いいか、要するにやられた様子を見せればいいんだろう!? だったらもっと安全に終わらせる手段位あらぁ!』
殺されようとする系鮫君。




