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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺のホームパーティを邪魔をするんじゃない
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賢いならそりゃあ殴り合いは選ばないでしょうよ

「おぉ、何としっかりとした足取り! 滑らかな二足歩行! 知能の賜物だな!」

『それは感謝していますが……申し訳ありません教授。貴方の命令を実行する訳には行きません。本当に、申し訳ない』


 ……あれぇ? おっかしいな。凶暴な見た目にそぐわない物凄い理知的なセリフが。


『あぁ、申し遅れました。えー、一応高度知能実験体、と教授たちからは呼ばれてます』

「しかし、言語を話す予定では!? 唸り声しかあげていません!」

「……その辺りは、やはり調整不足であったとしか言えんか……! 悔やまれる!」


 いや、めっちゃ俺と会話してるけど。凄い流暢にこっちの言葉話してるけど、何なのコイツ? え? 作られたばっかりなんだよね?


『……も、申し訳ありません。どこか会話に不備がありましたでしょうか』

『え、っと……コレはご丁寧に、どうも、と申しますか。あの、とてもお上手です』

『あぁ良かった。ちゃんと聞こえていたようですね。外の会話から一応言語の解析を行って話していたのですが……間違って居たらどうしようかと。カタコトな言葉は誤解を生みますからね』


 いや解析を行って、じゃねーんだわ。なに? なんで俺に話しかけて来てる訳? めっちゃ怖い。見た目とのギャップがえげつなくて怖いわ。


『あの、えっと。実験体さん。なんで、俺と話してるのかな。しかも……俺の国の言葉で。態々。あの、その辺りを……』

『ああいえ申し訳ありません。教授たちには聞こえず、尚且つやり取りを行うのであれはそちらの言語の方が都合がいいかと、此方で勝手に判断を……』


 あ、そう、ですか。はい。なるほどね。ほーん……いやなるほどね? それは俺の言語を使っている理由だね。肝心の俺に話しかけてきた理由は今の所サッパリだねぇ。ちょっと、そっちもさ。詳しく


『それで、なのですが……此度の一件、穏便に済ませたいと、此方は考えています』

『穏便に……話し合いで、ってこと?』

『それが出来れば理想なのですが、今の教授たちにその様な事を言っても無意味かと思います。意地とプライドでここまで来て、退くに退けなくなる可能性が高いです』


 すげぇ、そういう感情の微妙な不備とかもちゃんと考えてモノ言ってる! 賢いとかそういう問題じゃない! 


『……そもそも、どうして俺とやらないんだ。アンタは俺と殴り合いするように言われてるってのに』

『私の知能を発展させる為に使われたデータは膨大です。その中には当然。貴方のデータも含まれている……計算しなくても、貴方相手に殴り合いをする不毛さも分かりますし。折角会話が出来るというのに殴り合う、というのは折角の知能が無駄に……』


 な、成程なぁ……言われてみれば、確かに。折角知能がある、って言われてるんだからそりゃあ殴り合いで決めたくはねぇわな。うん気持ちは分かる。


『君、其方の教授さんよりよっぽど賢いね本当に』

『教授達の賢さはベクトルの違うそれですから、比較はできないかと』


 うわぁ……目覚めたての赤ん坊とは思えない程に賢い。ちゃんと「お父ちゃんも賢いから全然、ね」的な他人を立てる発言をするというか。本当に赤ちゃん? 悲しい出生の筈のなのに余りにも人間が出来過ぎている……!


『……取り合えず、このまま睨み合ってても教授たちに怪しまれるので、ここは構えて頂いて……万が一我々が和平を目指している事がバレると中止になる可能性があるので、話し合いを続ける為にも、ここは、一応、殴り合っている……フリだけでも』

『えっ? あ、あのえっと……了解しました。プロレス、という事で?』

『そうですね。私たちの会話は聞こえないと思うので、フリはそう難しくもないかと』


 赤ん坊がプロレス対戦っていう余りにも高度な時間稼ぎを……!? よ、よーしオイラ人生で初めてプロレスするぞー……えっと、じゃあ。


『行きますよおおおおお先ずは右ストレートです!』

『あ、了解です避けますね! ……コレがプロレスで宜しいのでしょうか?』


 私もプロレス初挑戦なんでわからん! という事宣言右ストレート! めっちゃ手加減バージョン! 行くぞゴラアアアアア! 避けてくださいねお願いします!


『予告通りの右ストレート有り難い! さて、これで……此方もストレート行きます。それで、この流れを断ち切らないといけないのですが、どうすればいいんでしょうか』

『あ、はい分かりました……どっちかが負けないと収まり着かないと思いますよ、其方さんの教授方々は。全くもって』

『恐らくは……負けるなら私の方が宜しいかと。教授たちは自分達の最高傑作が負けたとなれば、いよいよ諦めもつくと思うので』


 自分の負けも計算に含めて仕事をしに来るとか精神的にもう極まってる気がするのじゃが、ううん……しかし、凄い状況だな。人の取り出した最終兵器と冷静にこの場を丸く収める作戦会議を……しかもプロレスしながら。


「いけっ! そこで噛み付け! 組み込んだマシンの出力で噛み付けば、計算上容易くかみちぎれるはずだ!」

『……という事で噛み付きで行きます。それで、どう負けるのが良いんでしょうか』

『はいはーい。ぱっと避けますねー……しかし、どう負ける……うーん』


 おー、大口開けてのその噛みつき素晴らしい。まるで人型バキュームカーだ! いや人間じゃねぇけど、吸い込みもないけど。なんでも飲み込む勢い的な、それで一つ……しかし、負け方、か。


『いやぁ、そう言われましても、そういうのはあんまり、考えた事も無くて』

『……やはり負ける、というのは悔しい事ですから。誰でも経験したいではありませんか。申し訳ありません、考えて発言をするべきでしたね』


 うーん人が出来過ぎている……! こんな良い人……いや、この鮫だなコレ。うん。人じゃねぇ。まぁ人が良いってのは間違いないけど。


『……提案なのですが、パンチで一発ダウンとかが宜しいのでは? それが一番情けないというか。私の見かけとか考えると、それが一番情けないかと』

『あの、痛いですよ私のパンチ、多分ですけど』

『いやぁ、構いませんよ。この場を丸く収める為ですから』


 ……この人、どうしてこんな形でしか出会えなかったんだろうなって。人生の奇妙さを実感してしまうよ。


ロマンを追い求めるなら関係ない模様。

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