フェイタルキルゥウウウウ……
――あークソッ! しおっかれぇ! オマケに冷てぇなおい! 夜の海って見るに限るわ! 入るのは馬鹿のやる事だなぁオイマジで! あのサメ野郎! 遂になりふり構わず海にご招待して来やがった!
「――ゥ、ゥ、ゥゴッ!?」
ッ……なんか、ぶつかった。結構痛いが。まぁ、ぶつかってくる相手なんざ限られてるだろうけど。あ、今ヒレが見えたな。というか、アイツよく考えたらよく水の中に潜れるな。木製だってのによ。アレか? ちゃんと沈めるように体が進化してるんか?
「――――ッ!」
オーオーいよいよ普通のサメと変わりなくなったな! ゴゲッ!? ……けど海の中のサメって普通にヤベェじゃねぇか。畜生、やっぱり海でもデッキの上でも、動きはほぼ変わんねぇな。
「――ッォウ!」
「――ッ! ――ッ!」
「グゥオ……ッ!?」
それに比べて俺は……チクショウ、海の上で拳を振るうのって面倒だってのを実感するだけで終わってるよ! ちぃっ……そして、コレはっ! 必死に足で水を蹴ってるけど……これダメだ! 俺の筋肉が重くて普通に沈んでる!
「ッ!」
「――グゥゥ! ヌゥオア!」
「――ッ」
筋肉モリモリマッチョマンは水に浮き難い……と聞いていたが、まさにそうだ。此奴は、沈みそうになる! 沈んだらダメだ。いよいよもって水中は奴のテリトリー、そんな中で真面に相手なんかできる訳ない……となれば!
「――ッォォウ!」
留まってたら終わりだ……ならば、奴ほどのスピードは出ずとも、奴ほどのスタミナは存在せずとも、此方も移動しないといかん! となればこの俺が最速の速度を出す泳ぎ方は一つ! すなわちは……
「――ォォッ!」
「――ッ!?」
バタ足だァアアアアアア!! ドルフィンキックでも良いんだけどこっちの方がケイデンス上げられるから! えっ? ケイデンスはそう言う話じゃない? 良いんだよ別に! こういうのはニュアンスが大事なんだ!
「――ッ!」
「――ォォウ!」
水の中を進んでるからまぁ見えにくい……だが、少なくともその場にとどまるよりははるかに安全、かどうかは分からんけどまぁ止まるよりはマシ、マシ……いや見えないってのは致命的じゃないか? い、いや大丈夫だ……きっと!
「――ッ! ――!」
「――ォオオオオオオオ!」
少なくとも船がどっちかくらいかは分かる! 少なくとも船にぶつかって無様晒すなんて言う悲しい出来事はあり得ない筈……イデッ! でもやっぱりぶつかってくるのは避けらんねぇか! ええい、それでも一か所でサンドバック代わりよりはマシだ!
「――ッ」
「……ヌグゥ! オッォ!」
痛い、痛いっての! ぶつかってくんな! こうやって逃げるのも時間稼ぎが精々だなやっぱり。どうにか時間を稼ぎつつ、アイツを仕留める機会を伺うしかねぇか。水の中で動き回るサメを捕らえる、またはぶん殴るなんざ、土台難しいかもしれんけども……やらなきゃ俺がお陀仏だよ!
「――ッ!」
背びれ……見えたっ! 真正面! タイミング早速来た! この野郎、絶対に捕まえてやろうじゃねぇか! この、絶対逃がしやしねぇ!
「ゥォウ! ヌグッ……グォオオオッ!? ウォオ!」
「――ッ! ――ッ!」
つ、かまえた……けど、くそ、ダメだ! 此奴、滑る! ぬるぬるしてやがる! サメ肌じゃない木の肌だからか!? 捕まえて、おけねぇ……ち、力を込めても、滑って、力が逃げる……! ええいパワー全開にしたのに、ここで裏目に出るか普通!?
「――ッ!」
「ォオオッ……!?」
ち、畜生……! 逃げるっ……ダメだっ、やっぱり捕まえて置けない……! やっぱり拳で粉砕するか!? アゴッ!? い、痛い……早く泳がないと、アデッ! あ、あの一瞬でも止まったらこれ幸いとゴンゴンぶつかるのやめーや!
「――ッ」
「――ガァアア!」
このッ……ダメだっ、闇雲に振り回しても当たるもんでもねぇ! 落ち着けッ、さっきみたいに機会を伺わないと……だ、だが拳だってさっきみたくつるっと滑ったら! どうする、何か、何か彼奴に決定的にダメージを与えられる、一手を!
「――ッ!」
……後ろ、水音、しまっ――
「ッォオオオオオオ!?」
お、される……ッ! 眼の前、船ッ……船に、叩き付けて、身動きを止めようってか! マズイ、背を向けてるから、対処も出来ねぇ……ッ! あがっ!?
「……ォ、グ」
い、痛ぇ。チクショウ、流石に金属の塊にぶつけられたら、痛いっての……ちょ、抑えつけるなこらやめろ、ちょ、沈む、沈んじゃう! コイツ良い様に遊びやがって……?
「(ガララ)さっきから何の音だろう……牛頭さん大丈夫かなぁ。ちゃんと、戻って来るよね……?」
「――」
……はっ、勝利の女神は俺に微笑んでくれてたみたいだな。サメ野郎。残るスタミナを全力で振り絞れ俺! ヌォオオオオオ背筋を使え! 背筋で押し返せぇ!
「ッウゥン!」
喰らえ背筋パワー! 押し返してやったぜ……そして、船の側面、ちょっとした凹みに指をかけて……最後の体力を使ってアイキャンフライ!
「ッッォオオオウ!」
「ヒャッ……な、なに今の咆哮。って、咆哮するのなんて牛頭さんくらいしっギャアアアアアア!?」
ヨシッ! 窓を開けてくれて助かった……! まさか、俺の部屋の真下に運んでくれるとはな! ヤッホーハニー! ちょっとお助け願おうか!
「ごごごごごごごごずしゃん!? ま、まどぉ!?」
急いで! お願い! 吹っ飛ばしたアイツがもう一回迫ってくるから、ちょっと、酔ってておいて来ちゃったアレを! こっちに持ってきて!
「え、え!? 後ろ!? 後ろって……お、斧ですか!? え、えっと……よいしょ……はい!」
「ゥム!」
掴んだッ! 野郎、好き勝手やってくれやがって……
「――ッ!」
海から飛び出て来たそこが狙い目だ……ドタマカチ割られて、あの世に行けぃ! 魚類か植物か良く分からん謎生命体が! 喰らえ! 斧投擲!
「――ヌォオオウ!」
「ッ……」
っしゃああああああ脳天直撃! というか頭部が激しく砕け散ったなオイ……自分で言うのもなんだけど、俺ってこんなにパワーあったっけ。アレかな。良いご飯食べてたから筋肉の質が。い、いや今はどうでもいい。
終わったッ! 鮫退治、完了!
参考にしたのはとあるFPSです




