どこぞのゾンビゲーでも似たような奴がいた気が
「……文明の利器より、力強いミノタウロス。文面の利器の敗北って、儚いですね。牛頭さん……あはは……うぅ……人間の、文化の粋って……」
いや、別にこの船の倉庫の信頼を上回るのを目的としていた訳ではないんですけども。有馬さんを助けようとして頑張っただけだし……その為に斧を振るって触手を悉く薪にしてやっただけで。
「――ヌフゥ……ゴゥフ」
「……まぁ、こうやって暴れまわってスゴイ体温になって、体中から湯気巻き散らしてるような人に、勝てって方が無茶なのかなぁ……しょうがないよね」
こうやって暴れた後ッてちょっと体から湯気が出ちゃうのはまぁ、筋肉量が多いからちょっと許して欲しいけど。まぁそれは良いんだよ。取り敢えず倉庫で暴れてた奴は、無事水を吸い上げようとしてる根っこは切除したから、収まったっぽいし。
「……船の底に穴開けるなんて、本当に怖いですね、あの根っこ。牛頭さんが案内した部屋で、船員さん、目をまんまるにしてました」
「……ン」
で、倉庫の様子を見に来た船員さんを無理やり連れて行って、さっきの部屋で現状を見せたら『脱出!』と言う結論になった訳だが。沈没する前に伝えられて良かった……ただあんまりにも逃げようとするから無理矢理根っこの通ってた辺りに頭を押し付けて現状を把握してもらったけど。
「えっと、それで。さっきの船員さんが言うには……外の緊急用のボートで逃げるんでしたっけ?」
ですねー。まぁ、完全に穴が開いたってのが分かったんだし、そりゃあもう『この船ヤバいだろう』って思っても仕方ないというか。
「海上保安庁の皆さんも大変ですね……こんな危ない船を調べないといけないなんて」
否定は出来ない。木が暴れまくる船とか調査したくもないです。俺だって……しかも海上保安庁が到着した時にはもう沈んでるんだろうし。地獄以外の何物でもない。
「で、でも私達が対処するよりは上手くいきますよね、きっと」
まぁお相手さんも海のプロだし……しかし、大丈夫なんだろうか。船に張り付いて餌を探してる、っていうのがマジだとすると海上保安庁とかの巡視艇とか、良い餌じゃないのだろうか。
「――さっきの着ぐるみマン、まだ着ぐるみ着てるぞ、こんな状況なのに。筋金入りのキャストだなぁありゃあ……」
「しっ、あの人の協力で根っこは抑えられてたんだから、そんな茶化す様な事を」
筋金入りは筋金入りでも森林官だから俺。某夢の国みたいな着ぐるみキャストじゃないから。そんな皆様に奉仕するかのような心意気はありません事よ? あの木の根を切除しようと思ったのは、有馬さん保護する為だし。
「……と、取り敢えず、良い感じに覚えて貰ってよかったですね?」
まぁ、この船の皆様、または後からやってくる海上保安庁の皆様と連携取る時にそういう信頼関係を築いておいた方が良いとは思うけれど……そんな機会あるか? 森林官、海上保安庁と組めるタイミング無いだろうに……
「――グゥゥゥ」
しかし、救命ボードで逃げ出すって言ってもそう上手くいくかどうか……だって、あんな木の根が物凄くアグレッシブに動き回ってるのに、ノンビリ脱出させていただけるのかしら……?
「……どうしたんですか? 怖い顔してますよ」
怖いっていうか、懸念しかないというか……こんなあっけなく終わる気が全くしないというか。まぁ、あの、心配性だね、って言われちまえばそれまでだけどさぁ。万が一って事もあるじゃない。
「何か心配なんですか? もしかして……そうなんですか」
頷かざるを得ない。なんだったらもう嫌な予感以外がしない、と言いたい。絶対何かしら面倒が起こって、脱出が阻害される……そんな気がする。だって……根っこを張るって事は本体も成長して然りなんじゃないのかなぁ、と
「――ヌゥウ」
「あ、ちょっと、牛頭さん」
万が一の場合があり得るからな。もう一回だけデッキを改めるだけだ。別にそれ以外に何かしたい事があるワケでも無いし……取り合ずの行動だからね。うん。
「うぅ、どこからあの根っこが出てくるかも分からないのにぃ……」
それは分かってるが、もし俺の恐ろしい想像が……当たってたりしたら洒落にもならんのよなぁ。当たってない事を祈って、取り敢えずデッキを……?
「――本当だって! デッキの方から物音がしたんだ!」
「馬鹿野郎、お化け触手が居るのは船内の方だ。デッキはまだ安全だろう?」
「それだけじゃないだろ!? まだ船内に入れてない人が居るのかも……! 船内に入れない方が良いだろうが! 外の方が安全なんだぞ!?」
「んな訳ないだろう、何度確認したと思ってるんだ、ホラさっさと出るぞ」
……ん? デッキの扉の前に誰か……船員さんか? さっき全員集合って言ってたけど予備の人員は置いてたのかな?
「ん? あぁお客様。すいません、ちょっとお待ちください。今開けますからね」
「だからやめろってお前! 開けない方が良いって!」
「馬鹿、船長からの命令だぞ! 急いで救命ボートで逃げる準備しろって言ってたの聞こえなかったのか!」
物音、ねぇ。ふーん。なんか嫌な予感が現実になりそうな予感ビンビンするぞぅ……良し分かった。次に扉が開いたら真っ先に出て行ってやろうじゃないか。
「し、知らねぇぞ俺は、どうなったって……!」
「臆病もんが……あ、開きましたよお客様ってうわぁっ!?」
はいちょっと横を失礼! 扉の向こうのチェックだオラァ! 何も無ければ万々歳だけどイヤな予感しか……? とか思ったが、案外普通……だな? なんか新しく触手がデッキの上まで伸びて出てくる奴を捕まえようと……とかあり得るな―とか思って……?
「……」
「……」(サメ―)
あ、どうもこんにちは。いやー今日もいいお月様だ事で……あっはっはっ……
「――ヌグゥオオオオオオオッ!?」
「――ッ!?」
右ストレートを鼻頭に叩き込んで全力スパーキング! ゴリゴリと硬い手ごたえを気にせず全力で押し通して穿ちぬけるようにするのがヒケツゥ! ええいやっぱり面倒になってるじゃねぇか!
この話を書いてからそれを知りました。




