映画において船は沈むものと見つけたり。
「――ゥウオウ」
この、これで……何本目だ! 引っこ抜いて引っこ抜いて! もう若干イヤになってきたよ! 俺の部屋より全然多いぞこん馬鹿野郎が! いや、馬鹿鮫か! まぁ本当に鮫かどうかは確信持ててないけどさ!
「――ヌゥ」
とはいえ、コレで何とかなったかな? 本当に薪に出来そうな位には積み重なっちゃったけど……持ち帰って本当に薪として使えれば上等かな。真面に使えるかと言えば……生木なんて使えるもんじゃないし、そもそも薪ストーブに使う位でそんな量は要らんけど。
「――ヌゥウ」
しかし……さっきからちょっとずつ、木が、畝っている、というか動き出しているよコレは間違いなく。動き出すくらいまで成長する……直前だったか? まぁいい、叩き潰してしまえば動きようも無いだろう!
「――グゥウウウウ……ンン?」
いや、待って一本程手遅れになったのが物凄いビキリと音立てて、ズルんて出て来てるぞオイこの野郎! ええい生命力の高い枝だ事で! というか、コイツどっから栄養を得てこんな成長してるってんだよこの植物は?
「……」
目の前でまた一本伸びて……待て、部屋通り越して下へ、でもって早えな伸びる速さとかこれ一本だけ凄いな! ったく、この、あんま活き良く伸びるな、諦めて帰れ!
「――ヌゥウウウオオオオオ!」
っし、ヒット! 伸びたばっかりだってのに、まあ随分と硬い事……! だがしっかりと食い込んだ、後は、上手い事引っこ抜いて……うん?
「――ン?」
先っぽが、コレ……濡れてる? なんだ? どっか液体の貯蔵庫でもぶち抜いたか? 船の液体……ジュースとか、アレかな。キッチンとかぶち抜いたかな?
「……ヌゥゥゥ……グゥルウルル……モゥ?」
いや、この匂いって……どうにも、生臭いというか。この匂いは、嗅ぎ覚えがあるというか……嗅ぎ覚えしかないというか。これ、船の上から嗅いだことがあると申しますか。
「――ヌ?」
塩、というか……明らかに、これ……ペロっと。うーん、しょっぱい。この濃度は間違いなく、海水だなぁ。え、海水ってまさか! ちょ、おい。もしかしてだけど。お前まさかとは思うけど。
「……」
聞こえる。というか聞こえた。そこの方から聞こえる、このバッチャンバチャン言ってる音って海か? この野郎、まさか船底ぶち抜いたか?! あ、いやもう下の方からバシャバシャ漏れ出してる音がしてるんだけどこれもう間違いなくアウトだぶち抜いてる。
「――ヌゥウウウ」
しかし、なんで船底までぶち抜いてるんだよコイツ。船沈めて人間をゼッコロするような知恵があるようには思えないんだよなぁ。じゃあ別に理由が……ん?
栄養……下が海水……でもって、根っこは下から……おい、まさか。
「――……オゥゥ、ヌォウ……」
木って地面から水とか吸ってるけど、と考えるとこの根っこが行く方向にある水はそりゃあその気が求める水って事になりますわなぁ。って事は此奴海水をこんなゴクゴク飲んで成長してる、って事なのか……
「――ン?」
って事は……あいつ等が外に張り付いてるのはなんでだ? 別に海をスイスイ泳いでるだけでも栄養は得られるだろうに。あ、いや、鮫だから口からの食事も取ってるのかな。
「……ンアゥ」
食事、船。成程……うーんコレは間違いなく船の内部のお人を食事にするお積りですね成程! 完全にアレだ! 映画みたいな感じだ成程成程……成程じゃねぇな!
「――……!?」
有馬さんがやべぇぞ! いや、あんなゴツイ部屋に入ってれば大丈夫、となる気がしないでも無いけど、こういう時はその油断が命取りとか普通にあり得るから……いや映画と同じ展開になるとは思わないけども! 万が一って事もあるし……
「――ウシ!」
万が一の事もあるし、俺が保護していこうか!
「いやぁああああああ助けてぇえええ!?」
「根っこが! 根っこが壁ぶちぬいて生えて来たぞおおおおお! 凄い本数が!」
あぁ言わんこっちゃない! と言うかもしかしたらワシのセリフがフラグだったりしませんか? そこは詳しく考える必要ないか! とにかく今は有馬さんの救出を!
「牛頭さんヘルプ! お助け下さい!」
「――ヌォウ!」
任せろ! このスットコドッコイ木の根が、預かってきたカワイイJKに触れるなズンドコ! ドラア! ぶち壊しぬけてやるぜ……! オラッ! 薪にする作業! 腰を入れて振り下ろし、割る!
「――グォウ!」
ウゥッシ! 良い感じで割れてる! しかし、この数は……さっきのよりちょっと数が多いというか、馬鹿じゃないの? 成長の度合いが凄まじい! まぁ海水が栄養なら凄まじい成長しても仕方ないとは思うが!
「ご、ごずしゃあああん……そうこよりたのもしいです……」
ふ、無機物に負けるような有機物ではございませんとも! いや比べるタイプの性質じゃないけど。ミノタウロスと倉庫じゃ役割も何も全然違うし。否定はしない。しかし。コレで二か所目か! 向こうさんは……うーん終わるのを期待してたら危なそうだなぁ。
「きゅ、急に生えてきて……私が、先に気が付けたから……誰も、まきこまれませんでしたけど」
おぉ、そいつはお手柄……では、こっからは俺の仕事だな。これどうにかした後はあの根っこの脅威を教えておかないと。船に穴開けてまで水を飲みに来る、ってことは……沈むぞ、この船下手しなくても。
どうやって船の底までぶち抜いてるかって?
隙間とかうまい事縫って突破してるんでしょう……




