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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の乗ってる船でバイオテロを起こすんじゃない。
52/122

死者を出さないで行くスタイル。

「こ、こっちから聞こえました! 急ぎましょう!」


 暴れ木の根ってなんだよ一体。暴れ牛とかじゃないんだぞ。ったく、どんな風に暴れてるのか見せてみろってんだこの野郎……!


「あなたぁああああああ!? やめて! ちぎれちゃう! ちぎれちゃう!」

「ぎゅぐ……ぐぴ……」


 本当に木の根がグネグネ暴れてるぅ!? しかもお一人様程仏に掴まってるし、胴体から大変悲惨な事になりかけてらっしゃる! や、やべぇ考えてる場合じゃねぇぞこれは! 胴体を千切ろうとしてる奴だけ狙いだ! 己その人を……!


「――グォオオオオオオオオッ!」

「ひえっ!?」


 離しやがれこの木の根風情が! っし、食いこんだ! オラもう一発ぅ! 千切れろってんだこの馬鹿野郎……野郎か!? 男かどうかも分からんが!


「ぎ……かはっ……」


 良し、ほぼ千切れかけだ! 胴体を締めあげてた奴は怯んだぞ! 後は四肢を拘束してる奴を……あらどっこいしょぉ! もう一発! 更に、もう一発! 


「――グゥ!」


 良し、後は……力押しで……結構、固いな、こりゃあ……! っしいったいった! 奥さん旦那様の救出、出来ましたよ! パス!


「あぁあなた! 良かった……! ありがとうございます牛面の人!」


 ふふん、そんなに褒めなくても問題ございませんよ。しかし、そんなに牛面かぁ。可愛い系の俺に取っちゃ、ちょっとベクトルの違う誉め言葉だけど。


「あぁ!? また! また!」


 ぬ? また?(ガシッ) ……うーん? なんか腕が動かなくなってしまったんですけれどもこれもしかして、いやもしかしなくても……チラ。


「ご、牛頭さーんー!? 右手! 右手ぇ!?」


 うん、ものすっごいガッツリ絡みついてらっしゃるね。おーおーガッチリ絡みついてらっしゃって。ここまでグルグル巻きにピクリとも動かせない……


「――ヌゥ」

「全く力負けしてない?! あっさり引っ張り返した!?」


 ……ってなるには些かパワーは足りないけれどなぁ! ふん、こちとら全力出せばベンチプレス二〇〇オーバーだって楽勝なんだよ。手加減は覚えてるからそうは見えないけどなオラァ!


「な、なんて益荒男……!」

「ウゥゥウンンウゥウウウウウ!」


 オラァ! どうした、俺を捕まえてみろってんだ。そんな貧弱な拘束じゃ……えっと、この国じゃなんていうんだっけな……あぁそうだ。赤子の手を捻るより楽に。


「――フゥンヌ!」


 千切れるってもんだ! ウゥッシ! うぅん引きちぎる、この感触。悪くないぜ……というかぶっといなぁコレ。成長しきっちゃうとこうなるのか。うーんさっきしっかり伐採しておいてよかった。


「ご、牛頭さん……! 凄い、という腕大丈夫なんですか!?」


 大丈夫大丈夫、固かったけど、まぁ千切れない程じゃないし。さっさとこの部屋から溢れ出した暴れ木の根を切除していかんと……よく考えてみたら暴れ木の根って何なんだろうね。


「あ、ありがとうございます……あの! 貴方も逃げた方が……!」


 大丈夫さ。奥さん。というか逃げてどうにかなる状況じゃないでしょ今は流石に。ここ船内だぜ? どうにか対処せにゃいかんだろうし……なぁ!


「――グゥオオオオオオオオ!」


 必殺! 森林官スラッシュ! 根っこは死ぬ! オラオラ、もう一発喰らって割れるんだよお前はぁ! この、お前に、明日を生きる! 資格はねぇ! オラァ!


「あ、あなたぁ!? 牡牛様が、牡牛様が暴れておいでだわ……!」

「あぁ、木の根と格闘している……この世の元は思えない光景だ、本当に」


 おう救い主に対してあんまりな態度やないかお前さん達よぉ! ええい、ヒーローは孤独なもんだ、泣くな俺! 強くあれ! 此奴らを全て切除するまでは!


「――ゥゥウン」


 とは、言ったものの……マジでメッチャ暴れてて……うぉっ、また掴みに来たなこの変態触手野郎が! 触んな! この! 絡みついたらまた千切るぞこの野郎! でもアレ結構パワーが居るからあんまり乱発させんといてな!


「え、えっと……私何をすればいいんだろう、この場合……」


 ぬっ、はっ、おらぁっ! 有馬さん、出来れば周りの人を、逃がして! ホラ、奥へ! 首振ってます! 奥に向けて! 全力で首振ってるから! お願い気付いてこのジェスチャー! 届けこの強い思い!


「よ、横にブンブン首を振られても……分かりませんよ!」


 あそっかぁ! ごめんねぇ! でも、周りに人が居るってなると。流石に全力で斧を振るのは難しいと申しますか! 出来ればそちらのご夫婦を、連れて……!


「な、なんだあの触手……なんだあの猛牛は!?」

「う、牛が、牛が斧を振るって触手と殴り合っているぞ!」

「ちょ、こっち来い! とんでもない密航猛牛が居るぞ! いや……居たなデッキに」

「お前冷めるの早すぎないか……? じゃなくて」


 どうしてギャラリーがどんどん集まってきてるんですか……? あーお客様、呼び寄せてはいけません! 増やしてはいけません私が、対処し辛くなります!


「ちょ、写真撮ってSNSに……」

「いや、写真じゃなくて動画だ! 動画取れ! バズるぞ!」


 いやバズるぞじゃなくてさっさと何処ぞへお行きなさい! もう限界ですぞ!


「SNS……拡散……解剖実験……ひえっ!?」


 ぐ、有馬さんにこの思いが、届けば……あれ? 有馬さんどこ行った?


「あ、あのあの触手こっちまで届きますから急いで逃げて! 私のお母さんも……! 今はお父さんがああやって抑えてるけど! 危ないから!」

「えっ」

「ちょ、そんなん聞いてねぇぞ! 逃げないと……!」


 おぉ、有馬お嬢様ナイスゥ! ところで俺がお父さんだと有馬さんの頭に角生えてないとおかしいと思うんだけど、どうなんだろうな……じゃなくて!


「ゥゥゥル」

「……良かった、牛頭さんが解剖される事態だけは避けられた」


 よーし、こっからだ! こいつら、全部まとめて薪にしてやる!

それは当然の事では?

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