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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺が管理する山でデスゲームをするんじゃない
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幕間:巻き込まれ女子生徒が見たもの

「……うぅ」


 昨日まで、普通に学校に行って。普通に本を読んで、普通にお母さんの卵焼きが好きなだけの普通の女の子だったのに……どうして山奥のログハウスで、こんなクローゼットに隠れるような事態になってるんだろう。


「……ううん。私は、幸運なんだ……他の人達は、山の中に行っちゃったし」


 あそこで蹲ってなかったら、私はこうして人……いや、あの人は、人じゃないけど……兎も角、保護して貰えることも無かったのだから。その代わりに凄いショック受けたけど。


「保護してくださったのが、凄い牛面の……というか牛そのものな人なんだもんなぁ」


 昔、本で読んだことがあるミノタウロスそのものだった。いや、凄いモンスターとかじゃなくて、凄い登山家な格好してらっしゃる牛頭八太郎さんだったけど。


「大丈夫かな」


 見た目は兎も角、私を助けてくださった恩人だ。怖い人達に酷い目に……うーん、酷い目に……なんかこう、暴力的な目に……


「あってる予感がしない。全然、寧ろ反撃して勝ってそうだ……普通に」


 よしんばあの人たちがナイフだとか、バットだとか。そう言うのを持っていたとしても多分、牛頭さんのパンチ一発の方がはるかに強いと思う。凄い筋肉だったし。


「……そういえば、牛頭さんはどうしたんだろ」


 私をクローゼットに押し込んでから、どっか行っちゃったけど……うぅ、外の様子がちょっと見たい。こうやって何もわからない状態で居るの、怖いよ……


「……あれ?」


 これは……穴? 虫とかが食べたのかな、扉にちょうど、覗けるくらいの。ここから何か見えないかな。よいしょっと……!?


「……ご、牛頭さんなにしてるの……?」


 私の視線の先に……黒い、凄い角度のパンツ一丁で、えっと、マッチョなポーズ? 的なものをびしっと決めて動かない牛頭の変態が一人いるんですけど……


「もしかして、まさかとは思うけどアレで隠れてるつもりなのかな……」


 隠れてるっていうより見せつけてるけど。全然。凄い、遠くに居るのに凄い、暑苦しいという感想しか出ないくらいに、がっつりポーズ決めてる。私、あの近くに居たら多分あっと言う間に倒れちゃうと思う。


「――ったく、アレどうする!? 縄から解き放っていいのか!?」


 っ!


「馬鹿言え、俺達が死ぬ。ここの住人を餌に逃げるんだよ。ったく何が他の遭難者に釣られて俺達は目に入らない、だ。それ以前の問題じゃねぇか」


 は、入ってきちゃった! ご、牛頭さん早く隠れないと! アレは全然隠れてないって事分かってないよあの人! 多分! じゃなきゃあんな格好しないよ! どうしよう、どうやって伝えれば……


「……っぅお!? ビックリしたア!?」

「な、なんだどうした……ううげぇ!? ば、化け物!?」


 あぁそりゃあ見つかっちゃうよ……! ど、どうしよう。牛頭さんが危ない……のかなぁあの状況。私自信持てない。どっちが危ないんだろう、アレは。


「……って、唯の人形だろ。動かないぞ」

「な、何!? ……そ、そうか。冷静に考えれば、そうか人形か……あんなのと普段からせっしてるから、つい……クソが、ビックリさせやがって!」


 っ! い、いきなり蹴っ飛ばした!? 酷い……でも牛頭さんがピクリともしてない。あんまり痛そうに見えない。それに、あれ、もしかして……バレてないのかな。


「っち、固いな……倒れもしない。重いぞ結構」

「ここの住人は何考えてこんなもん飾ってんだよ。つーか、玄関からここまで誰にも会わなかったけど、留守かよ……どうすんだ。電話かけれねーぞ」

「戻るしかないだろう。多分、戻ってもたっぷり嫌味を言われるだろうがな」


 全然気が付いてないや。で、でも普通、アレが本物なんて思わない、か。私も牛頭さんが動いてるところバッチリ見てるから、驚いたし、本物だって思ったし……


「ったく、ここの奴、見つけたら俺達で……ん?」

「イラつくより、表のアイツを回収するやり方を考えろ。アレを引き摺って本部まで行くわけにいかないだろう。暴れ出して俺達に向かってきたら、終わりだぞ」


 あ、あの怪物、あの人たちが……でも、なんだろう。牛頭さんが居るせいか、あんまり怖くなかったけど。けど、もし見つけて貰えてなかったら、私はアレに追いかけられたのかも。そう考えると……なんか、怖くなってきた。


「あ、あぁ……つーか、可笑しいよな。アイツは例え格闘技のチャンピオンだって相手にならない化け物の筈なんだろう? なんで簀巻きになってんだよ」

「……さっきは冗談で言ったが、ここの住人は、本当に猟銃でも持っているとかか?」


 もっと怖い話ですけど、その方は牛頭さんが素手で制圧しました。思い出したらアレに追いかけられるとか、そんな大したことじゃないのか、とか考えちゃう。


「――それこそ、このデカい置物みたいな、怪物に殴られたとかか?」

「馬鹿か。この山に居る怪物はアレ一匹だ。というか、この世にあんな怪物が他に居てたまるか。全く。アホな事言ってる暇があったら行くぞ」

「分かった分かった……?」


 ……あ、良かった、もう行くんだ。全然こっちとか気にしなかったなぁ……牛頭さんの事凄い気にしてて、他とか全然見てなかったなぁ。


「……なんだお前、さっきから後ろを見て」

「いや……なんか、ちょっと、この像から、フローラルな、香りが」

「はぁ? 何言ってんだお前……いや、本当にちょっといい香りすんなこれ」


 ――あ。


「なんで置物に香りなんか付けてるんだ……ん?」

「どうした?」

「いや、この像の腕ってこんな角度だったかなと……気のせいか?」


 あ、あの。気のせいじゃないです。あの、結構大胆に動かれてます。それで、もう貴方達の首の後ろ辺りに……


「がっ!?」

「げっ!?」


 あっ、掴まった。す、凄い締め付けられてる……っ!? も、もがいてるってああいうのをいうのかな。凄い、叫んで、暴れて……あ、でもちょっとずつ動かなくなってきた。


「が……な……に……」

「――っ! ――っ……」


 ……止まっちゃった。ご、牛頭さん手振ってるけど。えっと、もう大丈夫って事、だよね多分。ぶらーんてしてるけど、し、死んでるとかないよね?


「あ、あの……大丈夫なんですか? そちらのお二人は、えっと」

「(コクコク)」


 あ、大丈夫みたい……で、でも相当痛そうだったなぁ……あ、白目向いてる。そりゃあこんな凄い逞しい人から首グッてやられたら、凄い、痛いよね。や、やっぱり牛頭さんの方が怖いな……?


首をキュッとね。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんな、昔の柔道漫画みたいに言われてもw
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