ド根性なアレ。美味しいかは不明。
「ご、牛頭さん! 帰って寝た方が宜しいんでしょうか……! 私達……!?」
うーん、寝てしまってすっぱり忘れて、それで解決すればまぁそれに越した事はないんだけども……船に態々何匹を張り付いてる時点で危なすぎるんだよなぁ。
「な、何のためにあんな一杯、張り付いてるんでしょうか……ひ、日向ぼっこ?」
日も出て無けりゃ、海の近くは寧ろ寒いくらいだから少なくとも、というか魚が乾いたら間違いなく調子悪くなるし、日向ぼっこだけは絶対にないと思うけれども。
「――ンゥウ……!」
「う、うぅ。サメさん……あそこから離れませんね」
うん、さっきからピクリとも動かないし暴れないし……さっき飛び上がってきたのが嘘みたいに大人しい。死んだんじゃねぇか? とか思ったけど、偶にびくって動くから間違いなく生きてはいるらしいが……
「――皆さん、落ち着いてください。張り付いたアレ等に対処する為に、海上保安庁には連絡は取りました。対処が終わるまで今しばらくお待ちを!」
おぉ、お上に連絡が付いたが。そりゃあ有り難い。コレで解決……するにも時間はまだまだかかるか。ったくもう、なんて迷惑なサメだ。
「万が一の事もありますし、皆様はお部屋にて……アレの近くのお部屋にご宿泊の皆様には新しいお部屋をご用意いたしますので! 兎に角、お部屋にてお待ちください!」
……一応、さっきの出来事を有馬さんが説明してくださったので、アイツらがデッキに上がってくる可能性は警戒しているようだ。万が一、とは頭につけているが。
「えっと……そちらの、筋肉隆々のお方と、お嬢様も……急いで船内にお戻りいただけるとありがたいのですが」
あ、はーい……アレが何をするのかは分からないままだが、俺が何が出来る訳でもないからねぇ。俺の専門は山と森だし、海での活動は特異じゃないのよ、残念ながら。
「……それで、えぇ……明らかに……見た事なくて……はい、はい」
うーん発言が不穏。この船沈まねぇか? 大丈夫か? ったく、折角の楽しい客船パーティだってのに、とんだケチが付いたというか。
「……行きましょうか」
「――ゥォウフ」
まぁ巻き込まれないならそれに越した事ないし……流石に自然界の生物とまで殴り合う趣味はねぇよってね……ん? そう言えば……
「私たちの部屋って、どの辺りでしたっけ」
……まぁ、サメ君の近くで無い事を祈るしかないというか。アレだけの怪物が居る近くで眠れるかってなるとなぁ。うーんいや無理だよなぁ。
「うぅ、万が一が有ったりしたら嫌だし……ちょっとだけ、見てみますか?」
そうだねー……まぁ窓から怪物染みたサメさんが『ハロー』とか言って覗いていたりする可能性が無きにしも非ず。そしたら速攻で逃げるしかないし。
「……じゃ、じゃあ、一緒に、一緒に、ちょって、覗きますから、その……ね?」
「――ォウゥフ」
はいはい。ちゃんとタイミングを併せますから、ちょっと待ちなんし……えっと、三回タイミング取ったら? はいはい、分かりましたよ、と。そっと覗くだけなんだし、そんな警戒する事も無いと思うんだけどもねぇ。
「3……2……1……はい……」
勢い良く開けるんであれば掛け声も必要だけど、こんなそっと開けるんじゃ意味ないんじゃ……な――……んだぁ? こりゃあ?
「――え? 壁……何、あの模様……?」
白い壁が……茶色いのが、放射線状に広がってるが。いや、コレは放射線状、というか……めっちゃ見た事がある気がする。これ、真上から見た根っこのまんまな気が。
「え、えぇ!? サメさんだけでもいっぱいいっぱいなのになんですかコレぇ!?」
「――ォォアフ」
いや、こんな怪奇現象、いっぺんに一度も二度も起きてたまるかってんだ。それにあのサメの茶色とこの茶色……似てるっていうか同じ色じゃない? いやだからなんだって話な訳だけど(ミシッ)……ん? 何だ今、ミシッて音が聞こえたような。
「……ご、ごずさん、かべ、かべ」
壁……何だ、別に何か変わった訳じゃないじゃん。ただ壁の模様がちょっと立体的に浮かび上がって来てるだけで……いやこれ盛り上がってるぅ!?
「――オゥゥフ!?」
ちょ、ちょどうなってるんだなんで模様がモコっと……モコっと……んんん? この毛様、近くで見て見ると……いや……でも、なんでこんな所に……?
「ど、どうしたんですか? 物凄い勢いで触りだして……?」
「……オゥ」
「え? 触ってみろ、って? え、え、触っても大丈夫なんですか……?」
うん。少なくともこれそのものは触っても無害だと思うよ? 今感触で確かめたけど、まず間違いなく、俺の知ってるそれだと思うから……
「……う、うぅ……ちょ、ちょっとだけですよ、ちょっと触ったら……あれ?」
うん。なんか、気持ち悪い触手っぽい感触かと思ったら全然違うでしょコレ。いや、模様からして、分からなくも無いけど、その気持ちは……でも、コレは違うよね明らかに。めっちゃ、ガチガチに固いもん。
「……えっと、これ、間違って無ければ、ですけれど……えっと……木、っぽいですよね。多分、えっと」
森林官の仕事として、木を丸ごとひっこ抜くみたいな仕事もしたことあるから分かるよね。間違いなく地中に埋まっている部分……根っこだよね。間違いなく。
「あ、やっぱり木ですか……でも、なんでこんな」
……木の根、根を張る……動かなくなる……それに、あのサメの色……偶然か? コレは。いや、この前の山での一件を考えると……常識を捨てるべきなのか……?
「なんで、木がこんな……ぁ!? ご、牛頭さん窓々! 窓ォ!」
ん? 窓? 何、虫でも……ってそんな訳ないだろうなぁ。あー今、見えました。見えましたよごっつい鼻先が。やっぱり居やがったか、サメ野郎が。
「こ、この部屋の隣に……くっついてたんだ……急いで離れましょう牛頭さん。ここは危ないですよ! 急いで別の部屋に……」
――いや、ちょっと待ちなさい。調べたい事がある。
実際植物の力って凄いらしいんですよね。




