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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の乗ってる船でバイオテロを起こすんじゃない。
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天に月、船にサメ

「食べましたねぇ……本当に。食べました」


 たっぷり食って腹も満ちた……昼間頑張って、報酬も出る。こんな美味しい食事もなんて最高の日じゃないか……もう、文句なしに大満足だよ。


「普段こんな食べないから、お腹……もうポンポンで……」


 そして有馬さんの幸せな笑顔で、完璧満点。いやぁ、最初に疑ったのが申し訳なくなるくらいには凄い歓待を受けたというか。サラダバーを思わず三回程空にしてしまったよ本当に。うほほ。


「もう食べられませんし、牛頭さん。折角だしちょっと海でも見て行きませんか」

「――ゥゥム」


 それも良し。食ってばかりも些か雅さに欠ける……なんて。食事で栄養をとって、更にはち切れそうな、このパーフェクトモードな筋肉と雅さは、正反対の場所にある場所だからなぁ。


「暗いですね、夜ですから当然と言えば当然ですけど……」


 まぁ、見えにくくはあるけど。でも音は間違いなくこっちに響いて来てる。ザザーンとしっかりした波の音。船の上じゃないと聞けないね、こういうのは。


「……なんか、怖いですねー。夜の海って。飲み込まれそうで」


 巨大な怪物が出てきてもおかしくないですねー……クラーケン……イカ天。まあ食えないけども、でもアレだけの数の天ぷら食べちゃうと。本来食べられないモノも食べたくなってしまうのだよなぁ。


「でも、怖いだけじゃないですよ。綺麗、っていうか……月も出てて」


 否定はしない。夜の海に吸い込まれそうになるっていうのは、恐怖からだけでも無くてそういう魅力からでもあるって事だよ。ウーン、若干詩人というか。お腹に余裕があるとやっぱりこういう事も言えちゃうのかなぁ……


「――ゥウル」

「何言ってるかは分かりませんけど、凄い得意げなのは分かります」


 得意げっていう訳じゃないけど。まぁ概ね合ってるから否定はできないというか。しかしこうして海を見ていると、かつて葛飾北斎が海を描いたのも納得が出来るというか。


「あ、ねぇ見てください。何か跳ねましたよ。イルカですかね」


 うーん、デカい気がする。イルカにしては。でもあんなイルカも居るかもしれない……なんて。こんなオヤジギャグ言ってしまう位にはちょっと調子いいぞ今の俺は。


「パーティ、楽しかったです……でも、そろそろ寝る準備しないと」


 そうだねぇ。別に酒飲んで夜中まで騒ぐようなパリピな年齢でも無いし……健康優良少年……いや、一応中年か俺は。兎も角、健康に過ごす為には、早めに寝て、そして早めに起きるのが重要だ。


「でも、もうちょっとだけ、海を見てから……」


 あんまり夜更かしは駄目よー……まぁ、最悪適当な所で切り上げさせればいいか。


「ゥゥウ……」


 しかし、今日は本当に、本当に良い日だ。美味しい物を食べて、こうやってノンビリ海でも見て。そして最後にはイルカも……お、噂をすればまた飛んだのが見えて……?


「――……ォォウ?」

「あ、また跳ねましたよ。元気ですねぇ」


 ……イルカに似てない事も無い、けど……おかしいな。あんなデカかったっけ? イルカって。うーん。酒とか飲んでないから、幻覚見てる、とかではないと思うけど。


「……あれ? ねぇ、牛頭さん」

「――ンー?」

「気のせいですかね……さっきより近寄って来てるような、気が……?」


 近寄ってる? あぁ、だからデカく……いやまて、それにしても些かデカすぎる気がしないでも……そして、凄いスピードで、近寄ってきてない? ちょっとシルエット見えたかな、位だったのが、あっと言う間に大分見える位に……!?


「ォウッ!」

「――ふえ?」


 違う。イルカじゃない。見えた。あの背びれの形は……! 万が一って事もあるからできるだけ離れておいて。有馬さんゴメン。ちょっと抱えられててね。


「ど、どうしたんですか、なんで私抱えられて……」


――ザッパァン!


「……っひぃいい!?」


 やっぱりあのヒレの形、サメだったか!? しかし、活きが良い、こんな所まで海の中から跳んでこんなデッキの上あたりまでくるとは……! 離れてなかったら有馬さんが持って行かれてたかもしれん。危ない危ない。


「な、ななななん、なんですか!? アレェ!? サメェ!?」


 サメですねぇ……あの形。完全に。THE・サメっていう形してらっしゃいましたよ。大口開けて、ギザギザの歯が揃っててと……映画で見た、そのまんまのサメだった。まぁ色が結構茶色だったし、別種だとは思うけど。


「さ、サメなんて泳いでるんですね……この辺りって」


 あんな高くまで派手にジャンプするなんて活きのいいサメだった。まぁ旅の最後のハプニングって事で、丁度良かったんじゃないかな。まぁでも、流石に船に体当たりして跳ね返され……あれ、でも水に落ちた音が聞こえなかったけど……?


「――ン……ォウ!?」

「え……? あえっ!? なんで!? 張り付いてる!?」


 マジかよ、さっきの茶色シャークめ、落ちてない。船の側面に張り付いてやがる!? だ、だがなんで張り付いてるんだ、いやそもそも、あんなつるっつるの腹で、ツルツルの船にどうやって張り付いてやがる!? 


「ご、牛頭さん……」


 いやな予感がする。二度あることは三度ある、というし、凄まじい厄介事な香りがするぞコレぇ! ど、どうにか張り付いてるアレを引っぺがさないと……大変な事に!


「――おい、船に何か貼り着いてるぞ!」

「えぇ? ってこっちもだ!」

「こ、こっちもです、何でしょうアレ……サメ?」

「向こうもだ!」

「船尾にも……な、何だこのサメ!?」


 ――嫌な予感が既に成就しようとしている……! そんなハイスピードで向かってこなくて宜しいから本当に。畜生、どんな進化を遂げたサメだよ……!


月に叢雲、花に風みたいなもんよ。

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