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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の行きつけの里で神隠しをするんじゃない
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地下(迷宮に非ず)

 ……暗い。そして階段から転げ落ちて物凄い痛い。絶対あざ出来てると思う。角が折れてないのがせめてもの救いだと思いたいです。ウグググ。


「――ハッ!」


 なんて言ってる場合じゃない、ここが何の部屋であれ、兎に角、どっかしらに隠れてまた逃げ出す機会を……序に、なんか向こうに不利な要素があればここでも探し出しておきたいところ、なんだが……


「――まさか、ここに入り込まれるなんて……いよいよ逃がすわけにいかなくなったわ」

「大人しく寝ていてくれれば、ここに放り込むだけで済んだんですけどね。お婆ちゃんも後で入れる積りだったのに……ですが、追い詰めましたよ」


 う~ん。ここ、まさかの……地下牢かよ。しかも、ガチの金属の格子の奴。木とかじゃない奴。そして当然ながら、ここは袋小路、か……普通に立っても問題ないくらいに、天井が高いのが救いか。


「貴方はもうここから出られない。大人しく、コイツに切り刻まれなさい……!」


 吹かすな吹かすなチェーンソーを。怖いから。畜生、地下牢、追い詰められた状況、完全にホラー映画のバッドエンドだな。クレジットの後に新しい犠牲者が担ぎ込まれてる奴や。俺が脱出しないと悲惨な事になる。


「それにしても、お父様、遅いですわね」

「着替えに手間取っているんでしょう? あの人が来る前に……」


 警察が来るのにどれくらいかかるのか……せめて、何かしら時間を……ん? 床に倒れてるのって、もしかして……良し!


「三人で追い詰めた方が」

「そう言ってる間に仕留めた方がっ……!?」


 そりゃあ、地下牢にも灯りは居るだろうし、有っても不思議じゃないよなぁ……この燭台。しかも、しっかり金属製と来た。暫くは、時間も稼げそうだ。


「――グフゥ……!」


 取り敢えず、足踏みして威嚇なんぞしてみる。しかし……この燭台、短いなぁ。片手でもって、棒切れみたいに使うのが精いっぱいな気がする。


「地価の一本道、巨大な牛の怪物……」

「いよいよもってこの世の光景共は思えないけど、良いわよ、やってやる」


 相手が一歩。こっちが一歩。相手が一歩。こっちが一歩……いよいよ、互いの得物の間合いだぜ、さぁ……行くぞ。


「――っえい!」

「――ォオ!」


 ……分かってる。娘さん。そんな目で見てくれるな。こっちは金属製品、向こうも金属製品なんだ。そして、チェーンソーが暴れるとどっちにとっても危険なんだよ。つまりこうやって……お互いに精一杯腕を伸ばして、先っちょを、触れ合わせるのが、安全!


「お、お母様? そんなへっぴり腰で、伸ばして、ちょんちょん、って」

「コレが一番安全なのよ。思い切り振り切ってぶつけて、衝撃で跳ね返ろうものなら私が死ぬわ」


 お互いに安全策で動いてて草も生えない。向こうからしても、先っちょから、ちょっとずつ詰めて行って、どれくらいの力で振れば安全かな、っていうのを探った方が良いだろうし。


「……くっ、でもこの中に入り込んで行ったら何かの事故で私が……近寄れない!」


 そりゃあなんかの拍子に変な跳ね方しようもんなら娘さんに当たるだろうしねぇ。


「と、兎に角お母様! 早く、早くそれを当てて! 急いで! バリケードを見られて中を調べられる前に! 隠さないといけないから!」

「そう、言われても……! これくらい、あ、これダメね。これだとバーンってなるわ。もうちょっと、こんな感じで……あ、行けそう」


 ……冷静に考えたら大分シュールな光景だよね。へっぴり腰でチェーンソー持ってる女性と、燭台持ったマッチョマンが、それぞれの得物をギャリギャリ突き合わせてるんだからさ。ギャグかって話よ。


「この、いい加減諦めなさい! もう貴方はここから出られないのよ!」

「――グフゥウ!」


 だからって、それで諦める理由に……! ああうんだからこの、幼稚園のチャンバラみたいな状態で気合れても傍から何処かへ抜けていく、ダメだ、真剣になりきれん。


「ふ、先程よりも迫力が無いわね。文明の利器に気おされたかしら、怪物!」


 いや、この状況でマジモード維持できるアンタが凄いのよ。メンタル面は最強だよ奥さん。全くもって褒めちゃいないけども。脳味噌が明らかに変なスイッチ入っちゃってると思うから逆に哀れに思うレベルだけども。


「いいわ、このまま、バラバラにして……生きている奴よりは価値は劣るけども、キッチリ贄にしてあげるから、感謝しなさい!」

「……ゥウオ」


 ほらー、その証拠に完全にさぁ、瞳孔開いちゃってるじゃん。それなのに腰が入ってないへっぴり腰っていうのは……おかしいな、結構俺ピンチの筈なのに、全然そんな感じがしないぐらいに、物凄い目の前の景色が! シュール!


「お母様頑張って! 腰を入れて振って! ガッチリ噛み合わせて!」

「任せなさい! こんな感じかしら!」

「全然ダメです! 九十歳が七十歳になっただけです! せめて四十歳くらいまで若返ってください!」


 い、いや気持ちを入れなおせ。さっきから緊張する要素が一切ないのは分かってるけどそれでも何とか……根性入れて! 死にたくないし!


「美憂! 外はどう!?」

「大丈夫です、サイレンは来てません、警察は……」

『印部さーん! 印部さーん! ちょっと開けてくれませんかぁ!? ちょっと、お話を聞きたくてですね! あのー、駐在ですぅ!』


 なにっ!? 駐在!? って事は……有馬さん達がやってくれたのか!


「……あれっ?」

「美憂!?」



この光景、最早コントだとおもう。

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