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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の行きつけの里で神隠しをするんじゃない
32/122

上半身は裸です

 ……こうして、建物の影から確認していると、屋内に退避した二人は、あの奥様を見ないで正解だった、とすら思えてきてしまう。


「どぉ~、こぉ~、じゃぁぁあああ……!?」


 もう完全にキャラが崩壊しておる……チェーンソーをブォンブォン鳴らして、髪を振り乱して、マジでヤバいよ。本物の殺人鬼にしか見えない。なんなの? チェーンソー持った人って大抵殺人鬼覚醒するのがお決まりなのかと聞きたくなる。


「……あの、えっと……説明して貰って申し訳ないんですけど……本当に?」


 そうだよ。こちとら必死になって身振り手振りで説明してる内にあの奥様バーサークしちゃってもう取り返しのつかない所まで来てるんだ……やらざるを得ないだろうよ。


「力強い頷きですね……分かりました。頑張りましょう……」


 少なくともあのチェーンソーを僅かな間でも使い物にならないようにしておかないと。おちおち鍵も探せねぇんじゃ。やるしかあるまいよ……のう? という事で有馬さんをそっと木の上に座らせて……と。ここなら届かないよな? 大丈夫だよな? 気でも狂って投げようとしたら即座に割り込む覚悟は出来てるけど……!


「――ォオオオオオオオ!」


 さぁ、俺はこっちだぞ殺人鬼(仮)! 臆せずして向かってこい!


「そぉこぉかぁああああああ! 逃がさんぞ牛がぁ! ハラミとカルビとタンに仕分けて食ってやる! 覚悟しろぉ!」


 ……今更ながらに思うんだけど、俺もしかして追い詰めすぎたのかもしれない。ここまで人間性を蒸発させた状態に、あの和服美人をさせたんだから……気のせいかもしれんが若干口が裂けてきている様にすら見えるし。


「っ! どこだ、何処にぃいるぅううう……!」


 まぁ俺はもう其処には居ないんですけど。残念、建物の影に移動済みである。


「あ、あの~……」

「っ! きぃさぁまぁもいぃたぁなぁあああああああ!」

「ぴぃっ!?」


 そして有馬さんには、絶対にチェーンソーとかが届かない木の上に待機。要するに囮であります。大丈夫、チェーンソーの刃渡りからして、絶対にあの位置には届かない。


「ええい、そこから降りておいで! 降りれば、楽に送ってやるよ……」

「ど、どこにですかぁ……因みに、降りなかった場合は、どうなるんですか?」

「出来るだけ惨たらしい方法で、送ってやるよ……あの世にねぇぇぇええ!」


 あ、有馬さんの顔がっ! まるで何か悟りを開いたかのように穏やかな顔に! その代わりにエライペースで体がブルブル震えている! ヤバい! で、でももうちょっと頑張って欲しい!


「とはいえ、そこに居られちゃどうしようもないかぁああああ」

「で、ですよね! なので早めに諦めていただけると!」

「じゃあこの木を切り倒そうか。元々はその為の道具だしねぇええこれはぁああ!」

「いぃぃいいいやぁああああ!?」


 やっぱり有馬さんを引き摺り降ろそうという執念に満ち溢れていて凄い此方の思惑通りでいいとは思うんだけども……まぁでも、そろそろ自重していただけると……


「行くわよぉ、落ちるとちょっと痛いから、何時でも降りて来なさい?」

「ひぃいいい!」


 完全に木の方を見たな……そこだ! オラァ! 喰らえこの野郎!


「っ!? し、しまった!」

「――ォオオオオ!」


 絡みつけ! 我が上着! グルグルと! いやお願いしますから上手い事絡んでくれ!


「な、何を……この、刃をこんな布なんかで……あ、ちょ、なんて事! ま、回らなくなって……ちょ、待ちなさい! この!」


 グハハハハ! 俺の上着は山登り用にある程度は頑丈さが保証されているんだよ! そんな物が絡まったんだ、外すまで使い物にはならないだろうよ! そのチェーンソー!


「お、おのれぇ味な真似をぉ! あ、ちょ、待って、降ろして逃げるな、ちょっと!」


 馬鹿野郎。作戦が成功したんだから一目散に逃げるに決まってるでしょうが! 外れない上着に戸惑って、そして苦しむんだなぁ! 有馬さんしっかり掴まってろよ、逃げるぞオラァ!


「ひゃうっ……そ、それにしても、綺麗に上手くいきましたね」


 チェーンソーは物を噛んじゃうと、それこそ役に立たなくなる。特に結構頑丈な布なんか間違って巻き込んだ日にゃあ……まぁ取れない。簡単には。俺もチェーンソーは山の木の剪定なんかに使ってるからね、分かるんだよ。


「これで、暫くチェーンソーは使えない、んですよね」


 そう。そしてあの巻き込みチェーンソーにかかりきりで追跡者も一人は減る。より探索がやりやすくなるという訳だぁ……!


「今の内に蔵の鍵を見つけないと……うぅ、何処にあるのか分かればなぁ」


 今持ってる鍵はなんでか知らんけど功也さんが持ってたからなぁ。重要そうな鍵は家族が持ってるのかもしれない……あれ? その理屈で行くと……もしかすると。


「あれ? 牛頭さん、なんでストップ? あ、あの? というか、すいませんこっちってさっきの女の人が居る方向じゃないんでしょうか!?」


 うん。


「あっさり頷かれた!? ど、どうしてリターンするんですか!? チェーンソーが復帰してたら危ないですよ!?」


 大丈夫大丈夫。一朝一夕で外れるような代物じゃない……そして、ビンゴだ。


「こ、この……コケにして……! こ、こんなにガッシリ、ええい、外れなさいってば」


 今必死にチェーンソーと格闘されている方の腰で、チャリチャリと金属音を鳴らして揺れているのは……なんでしょうね?


「ま、まだ外れてませんし、今の内に……ってなんで一気に突っ込んでいくんですか!?」

「あ、この……アンタなんて、これさえ動けばっ! この! あ、ちょっと、そのカギは!」


 ハーイ失礼しますねー……ふふ、主など凶器が無ければただの人。畏れるに足らずよ。悔しければ早めに俺の一張羅を引き裂いて見せるがいい。いや、でもやっぱりやめて欲しい。結構したんだそれ。それがバラバラに……いや。置いておこう。


「そ、その鍵って……」


 コレが当たりだと良いねぇ。


晒される筋肉美。

なおこれで止まった例は、数少ないそうですが、あるようです。チェーンソーって不思議。

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