チェーンソーはホラー映画の基本
「牛頭さん! 鍵! 鍵! 見つけましたよ!」
……あっうんそうかそうか分かった……ちょっと無念です……はい。よっしゃ! 切り替えて行こう有馬さんナイス! いやぁ後ちょっとで感情があふれ出して、濡れタオルでパァン……としてしまう所だったけど、寧ろそうしたかったけど、まぁ、頭も冷えたよ……ところでなんで傍らに旦那さんが倒れてるの? 自分でこけた?
「ひひぃ……」
「あひ……ぁ、まって、かぎって……鍵!? お、お父様の持ってた鍵じゃないの!?」
っしゃあ! 先ずは田中のお婆ちゃんを奪還が先決! 急ぐぞォ! 有馬さんちょっと担がせていただいて……オラそこをどけぇ下郎共!
「……結構思いっきり殴っちゃったけど、大丈夫かな」
良く分からんけど大丈夫でしょ。今はまずお婆ちゃんの奪還が先決だから、ありとあらゆる失態や問題はそれに優先しない、コラテラルダメージと言う奴なのである。
「後は鍵が合うかどうかですけど……お願い!」
合うと信じよう。信じれば救われるっていうし。多分ですけど。では……ガチャリと……ガチャリと……ガチャガチャガチャガチャSSR! そっちじゃない! どうした!? 何故錠前が外れないのだ!?
「……ち、違います!? 鍵が違いますよコレ! ど、どうしましょう!」
うぬぬぬぬ。良く考えれば家の中で使う鍵なんて、複数あってもぜんぜん不思議じゃないし。見つけてくれたのはありがたいけど、この鍵は他の……結構ゴツイ見た目しておいてお前何処のカギだよこのやろう!
「お、お父様! あのカギって……!?」
「う、何か、衝撃が……ああっ!? ちょ、まって、鍵が……日和、美優、そのカギはなんとしても……ぐっ! うぐぐぐ」
「何てこと……美優、その人をお願い! ええい、あの牛許さないわよ! ちょっと待ってなさい。こうなったら、後処理が面倒ではあるけど……!」
いや鉈で終わらせてください。なんだ、またぞろ拳銃の一丁でも持ってくるのか? 日本内にそんな危険物ポンポコ持ち込んでくれるなホント……まぁそういうのは関係なく私はさらばとばかり逃げるんですけどね!
「ご、牛頭さん。どうしましょう。他に鍵がありそうな所なんて……」
いや、さっぱり分からん。有馬さんがこんなに早く鍵を見つけたこと自体が正直凄いと思ったくらいだし……まぁだがもう一回俺が相手を引き付けて、有馬さんに頑張って貰えば何回は行けると思うし。あの日和って人が余程のモン引きずり出してこなければ……
――ギュゥウィイイイイイイイイイ
「……!?」
……ちょっと待ってね? エゲツナイ音がしたんですけど。いや、拳銃とかの、あんまり縁が無いやつじゃなくてさ……凄い想像しやすい奴が出てきたんだけど。主に物凄いぐロイ方向で、さ。
「――みぃつぅけぇたぁわぁよぉぉぉおおおおおお!」
「いやぁあああああチェエエエエンソォオオオオオオオ!?」
はいシリアルキラー御用達のチェーンソーがエントリーだ馬鹿野郎が! ま、まぁこういう山奥だし不思議ではないんだけども……だからって納得できる程俺は人間出来てないんですよ!
「ふ、ふふ……コレを屋外で使うと、処理が大変なのよね、こびりついた血とか……でも今回は、一切そう言った事は考えないわ! アンタ等を肉の塊にしてあげる!」
理性を失っているような発言までそれっぽいですね! アレから出来る限り素早く逃れ無いと洒落にもならない結末になる訳だが……とはいえ田中のお婆ちゃんを見捨てられないので、ここから逃げる訳にもいかず。という事で。
「ひぃいいいいいいい!」
「まちなさ……足速っ!? まって、ちょ、待ちなさいって! 待て!」
どっかしらに隠れてやり過ごすのが正解! そして当然の事ながら、有馬さんを追い回させる訳にもいかないので……何処かで降ろす必要がある。
「ご、牛頭さん! 本当にごめんなさい! 全力で飛ばしてください!」
言われなくてもスタコラサッサだぜ! 家の角を利用してどうにか上手い事撒いて、そして茂みのどっかしらにでもそっと……
「まちなさぁあああああい……!」
「ぴぃいいいいい!?」
ダメだ。万が一見つかった時のリスクがデカすぎる。流石にアレ相手に囮作戦決行できる程勇気が無い以上、有馬さんを傍から離す訳にいかんだろ! だって、見つかったら間違いなく……アメリカスプラッター映画ですよ!
「ゴ、牛頭さん! 取り敢えず何処かに隠れた方が……何処か隠れられますか!?」
ウーンこの図体で俺が隠れられそうな場所かぁ……もっかい室内行って、押し入れにでも詰まってみる? めっちゃはち切れそうになると思うよ? バレバレになると思うよ?
「……静かに首を振ってる辺り、ダメそうですね……どうしましょう」
隠れるのはそもそも無理、逃げるにしてもやはり限度がある……となれば、あのチェーンソーをどうにかしなきゃいけない訳だけど……
「……そういえば、なんで手に布巾持ってるんですか?」
あぁ、そういえばまだ持ってたっけ。此奴で対抗してみる、とか? ちょっと壁を打って牽制とかしてみようかな。よし、ビシィ!
「っ!?」
「あひぇっ!?」
良し、良い音したじゃねえか……だがビビってるのは追っかけてる相手だけじゃなくて有馬さんもか……うん、大して効果も無いし、やめとこう。
「び、びっくりさせないでくださいよ……でも、それそんなに凄い音立てられるなら、凄い強そうだし、あのチェーンソーにぶつけたら……なんて」
いやぁ引き裂かれて終わり……いや? ちょっと待ってよ?
「……わぷっ!? な、なんで頭撫でられたんですか私」
いや、ナイスアイディア、というかその元と言うか……思いついたよ。あのチェーンソーを効率的に封じて、尚且つ確実に時間を稼げそうな妙案が! 良し、そうとなれば。そうとなれば……どうしようかな。ちゃんと、有馬さんに説明できると良いな。
チェーンソーは、聴覚と視覚からして完全にホラー映画用の凶器だと思ってます。




