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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の行きつけの里で神隠しをするんじゃない
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剥製に悪戯すると物凄い怒られる

 向こうは、手を出してこない。かといって、俺も彼らをポポポーンと彼方へ殴り飛ばすわけにもいかない。結果、生まれたのが、現在行われている謎の睨み合いタイム。


「「「シャーッ!」」」


 三人が手を繋いで大きく広がり、此方を包囲するように威嚇する姿はまるで小動物の集まりの様だ。そして威嚇してるのはまさかの俺である。俺草食動物なんだけど、威嚇される必要はないと思う。つーか毒盛ってるのに自分達が被害者みたいな顔やめろ。


「と、兎に角近寄らせちゃいけません、絶対です! 全力で威嚇なさい! シャーッ!」


 だからってそんな原始的な手段を取りますか普通。ったく、まぁそうやって俺に意識を向けてくれるうちはありがたいから別に特には何も言わないけど……さて、有馬さんは無事家の中に入り込めただろうか。


「で、ですがこうして威嚇しているだけでは、シャーッ!」

「分かっている、どうにか状況を打開しないといけないけど……シャーッ!」

「――……ウォ」

「「「ッ、シャーッ! シャーッ!」」」


 シャーシャーシャーシャー言うんじゃありません、蛇かお主らは! とはいえ、若干面白い事は間違いないのでまぁ、止めはしないけど……


「――だ、ダメです。お父様、このまま威嚇し続けても埒があきません。私達が時間を稼ぎますので、家にお戻りください。鉈があった筈です。それでなんとか」

「そ、そうね……丸腰じゃどうしようもないわ。せめて何かしら武装の一つでも」


 止めないとまぁ、何かしら行動に移そうとはしますよねぇ。


「分かった……二人共、無茶はするなよ!」


 決断速いし逃げ足も速いなアンタ!? だが、残念がら……逃がすと思うているのか貴様。奥に向かうのであれば、当然標的はお前だ、旦那さん。悪いが有馬さんの探索の邪魔はさせぬ!


「ウォオオオオオオオオオ!」

「ひっ、あ、あの人の元にはいかせない……って私達眼中にない!?」

「ぬ、抜けられました、追わないと!」


 ふ、誇り高い森林官が回り道などと……男は黙って直球ど真ん中を抜けていくものよ。城門を打ち破って本丸に突撃した真田何某のように……! 赤くは無いけど。しかし下駄のまんま縁側、そして部屋へ上がって室内へとはマナー違反も良い所だ……俺なんてずっと裸足だぞ!?


「――ォオ!」


 どっちに行きやがったあのオヤジ……ん?


「……ん? 扉が開いて……」


 み~つけたぞゴラァアアアアア! そこを動くな犯罪者ぁ!


「――ォオオオオオオオオ!」

「な、なにぃ!? 態々追いかけて来たのか! しつこい! 来るな! 来るなぁ!」


 捻り潰してくれる! 逃げるな、この犯罪者! 有馬さん、時間稼ぎはしてるから早めに蔵の鍵を開けて頂戴ね! 頼むよ! そして部屋で座ってた時は兎も角、廊下を走る時は狭いな!


「う、うわぁあああああ助けてぇえええええ!?」


 ええい部屋を大回りしても無駄だ! 貴様をこの家から追い出すまでは決して貴様を逃がしはしな……あれ、向こうの扉が開いたぞ、出てきたのは……奥さんか! 


「ま、待ちなさいっ! 夫に手を出すな! 化け物! これでも喰らいなさい!」


 あん!? 元はと言えばアンタらが先に仕掛けて……(ザクッ)……んん? なんか今顔の横を掠めて、何かが、刺さった……気が……!?


「――ンモォオオオオオ!?」


 お、顔の、顔の隣に包丁が見えるんですけど!? なんで!? 何に刺さって……いやすまん現実逃避はやめよう。真横に刺さって、痛くも無い……つまり、つまり、コレが刺さっているのは……


「やったわ! 角に刺さったわよ! お台所の包丁も中々に切れ味がありますわね!」

「お母様! やりましたわ! 化け物に一矢報いてやりましたわ!」


 ……く、くくくくく。貴様等、きゃいきゃいと喜んでくれて。やったな。触れてはいけない一線を軽く踏み越え、ちょっと行っちゃいけない場所まで入ったな。禁則地に!


「ふふ、まだまだお鍋等ございますから折角です、受け取っていただければ!」

「お母様、此方の土鍋等……待ってください凄い勢いでこっち来ますわよ!」


 そっちが確か台所と言っていたな。大丈夫だ、凶器を持ち出すつもりはないよ。


「ひっ……あれ?」

「居ない、ですわね……いえ後ろに居ます!?」


 ふむ、あったあった。台所だし、まぁあるとは思ってたけど……手ぬぐい。ふむ、やはり乾いているか……なら、しっかりと濡らさないとね。絞れるくらいは、しっかりと。


「て、手ぬぐいを……濡らして、るわね」

「いやな予感しかしませんし……逃げませんか……?」


 うむ、映画なんかで見てたんだけど、ある程度水で重さが出た布製品っていうのは、全力で振るうと……確かね。


 ――バァン!


「「ぴっ!?」」


 ふむ。やはり結構威力が出るな。一発直撃で壁の塗装に……いや、もうちょっと奥までヒビが入ってるな。コレだけの破壊力が出るとは……映画知識も馬鹿には出来ないねぇ。


「――フゥ?」


 さて、コレを持ってどうするか……君達は、察しているかな? どうした? なぜそんなに怯えて下がるのだ。君達だって台所のモノを凶器に使っただろう? それの応用の様なものじゃあないか。ね?


「ひ、ひ」

「いやぁ……お助け……」


 お許しは、傷ついた俺の角に乞うんだな……毎朝磨きかけて来た、自慢の角だったんだよ。傷もつかないように、丁寧に、丁寧にさぁ。


「――ゥオオオオオオオオ!」

「「いやぁあああああああ?!」」


 逃がさぬ! 主らの尻を猿のように真っ赤っかにするまでは! お主らの追跡は決してやめぬ! 決して! 大人しくケツを差し出せぇい! グハハハハ! どうせ有馬さんがカギを探すのには時間がまだかかるであろう、その間、じっくりと追いつめて……!


「牛頭さん! 鍵! 鍵! 見つけましたよ!」


 あっうんそうかそうか分かった……ちょっと無念です。はい。

濡れタオル、あれマジで痛いですよホント。

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