キラーファミリー対ミノタウロス
「……これって、声、でしょうか……?」
そうね。多分、間違いなくこれは。内部の様子を伺いたいところだ。しかし内部を伺えそうな、小窓。あの高さは流石に俺でも……ごめん有馬さん、ちょっと力貸してくれ。
「な、中に誰か居らっしゃるんで……牛頭さんすみませんちょっとなんで私を抱え上げてぇっ!?」
頼む有馬さん……! 彼奴らが俺達を発見する前に!
「あ、ここの小窓から……って事かな? えっと、中の様子は……あ、待ってください牛頭さん、田中のお婆ちゃんです! 倉庫の床に倒れてます……!」
まぁ隠し場所のお約束だろうなとは思ってたが、本当に早めに見つかってくれて助かったよ……後はここから救出すればいいだけだが、とはいえここの壁ぶち破るのは、我がマッスルを以てしても不可能。扉は可能性があるかもしれんが、時間かかり過ぎる。あ、有馬さんありがとうね。今降ろす。
「よい、しょ……ど、どうしましょう。田中のお婆ちゃんを、見捨てて……っていうのはちょっと、無理です。罪悪感とかで……倒れちゃいますよぅ……」
そりゃあ当然でしょうよ。野菜の恩もある。犬問題は十中八九ここの奴らの仕業だろうし……こんな事するような人たちだ。アレが態とじゃない、敵な態度をしていたが、説得力はオブラードより薄く、存在感も無くなった。
「助け、るん……ですよね。そうですよね」
あぁ。俺達二人であの三人の度肝を抜いて、囚われのグランマを解放、見事ここから脱出する。それが最良。最悪、俺が障害罪でぶち込まれる事覚悟で全員ぶちのめせば脱出は出来るが、間違いなく今の仕事クビになるので、ホントの最終手段にしたい。
「私も、出来る事は頑張って、やってみます……でも、何からすれば」
先ずはグランマの開放が先決だろうな。この、結構固そうな蔵から。
「ここ、つまりお婆ちゃんを助けるところから……でもこういう蔵って、鍵……かかってると思うんですけど、ここはどうなんでしょう」
さっき見た時確認したけども、でっかい錠前がかかってたね。しかもご丁寧に錆びてるモノじゃなくて、がっつり新品同様のものが。厳重にもほどがあるからもうちょっと油断をして欲しいです。
「……かかって、るんですか? じゃあカギを探さないと……そこからですかね。でもどうやって」
そこは……上手い事、潜入して、探すとか……しかし俺はそういう方向は致命的に不得意、というか向いてる向いてない以前の問題なレベルな気もするし。
「やっぱり、家に入るしか……ない、ですよね? で、でも……」
まぁ、家の中に侵入=敵の領地に潜り込む、だから見つかれば外で見つかる以上にヤバいけど。見つからなければ良いんだが。そう簡単に行けば誰も苦労は……
「――あの量で足りなかったなんて! 不覚! 一体何処に!」
「家の中に姿は無かったわ、となれば、外の何処かに居る筈……探しましょう」
――っと、バレちまったか。全員外に出てきやがった。
「犬たちを庭に放つ。逃がすよりは多少ケガしていても確保を優先しよう」
「けれど、私たちまで巻き込まれないかしら」
「大丈夫さ。流石に飼い主にまで噛み付くほど、見境なしじゃないだろう」
念入りに対策を練っている……仕方ねぇ。一人さえ自由に動けて居れば上場、でもってそうするには……もう一人が注意を引くしかないだろう。
「ば、バレちゃいましたよ! どうしましょう……って、牛頭さんなんで立って……」
「――ォオオオオオオオオァアアアアアア!」
突撃ィ! チャージ! アタックゥ! お前らぁ! お前らが見るのはこの牛頭八太郎唯一人だけだ! 有馬さんには一切視線を向けさせんぞォ! オラ、こいやぁ!
「な、なんだアイツ!? 何の迷いも無くドンドコ突撃してきてる!?」
「いやぁ酷い事される!?」
「お父様お母様落ち着いて! 大丈夫ですよ幾らなんでも慌てすぎいいえごめんなさい目の前に広がってる光景は正気じゃ兎に角一旦退きましょう!」
待てぇい! 逃がさぬ! 主らに恐怖を植え付けて、二度と我らの前に立ち塞がれぬようにしてくれる……と言う建前の囮行動だ! 有馬さん、今の内に行ってくれ!
「――!(コクコク)」
良し、伝わってくれたか。俺が時間を稼ぐのも、そうそう長くは出来まい……俺が注意を引いている内に、何としてもカギを見つけて欲しいものだ。
「――ォオオオオオオオオ!」
「ひぃいいいいいいっ!? こっち来ないで! 来ないでぇ!」
「お、おのれ化け物が! 美優、番犬共を庭に放つんだ! 急いで!」
「は、はいっ!」
ぬぅ、一人屋敷から離れていくか……だが離れる分には構わぬ。屋敷に逃げ込むのであれば先回りもするつもりだったが。こうして俺に釘付けになっててくれるのであれば、っと、こっちの両親様は逃がさん!
「し、しまった家への退路を……! あなた!」
「大丈夫だ、美優の連れてくる番犬共と、じゃれている間に逃げ込めば」
というか、番犬共って、アレ一匹じゃなかったのか、飼ってたの。まぁ犬を複数飼ってるくらいは何処の家だってやってるし……
「――お父様、連れてまいりましたわ!」
っと、もう来やがったか。数は……結構いるな、七頭くらいか。さっきの奴も居る。とはいえ、もうビビってる様子も無い、と……
「全く……逃げ出す奴を捉える為に飼っていたのに、こんな事に使うとは」
「と、兎に角、今の内に!」
だが、全くもって甘い。森林官は、山の野生動物を相手取る事もそれなりにある。
「――ゥゥゥウウ」
「……!? お、お前たち、何を怯えているの! 行きなさい! 所詮は図体のデカいだけの……牛面の……所詮、何が所詮……?」
そう言った奴ら相手に鍛え上げられた胆力を舐めるな……飼い犬風情にビビる程俺は肝っ玉は小さくないってんだ! さあ、来いよ、向かって来いよ……! オラ、このビクビクと唸る、俺の筋肉に向けて、噛み付いてこい……牙が通る物ならな!
「――キュゥン……ッ」
「だ、ダメですお父様……まるで使い物になりません! 皆、皆怯えて腹を!」
「ば、バカなっ!?」
……いや、そこまでビビられてもちょっとショックと言うか。さっきはビビらせて、暴れないようにしたよ? それどころか全部まとめて怯えるとか何なの? 失礼の極みなの?
まるで題名がZ級映画じゃないか……




