飲んでから判別する係男子
「ビックリしましたよ。急に雄叫びを上げて走り出すんですから」
「……雄叫びを上げて走り出すとは、やはりなんというか……」
「お父さん、関係無し、でしょ? 気をしっかり持って。ね?」
いやぁ、大変申し訳なく……もう大丈夫です。そして、お茶に湯気が立っている。やはり熱々の者に変更されていて、若干戦慄すら感じる。ガチで冷えただけでお茶を変えたのか。凄いお持て成しガチパワー。
「す、すみません。牛頭さんはちょっと……その、そう言う部分が合って」
いやどういう部分? いや、自分でも奇行した自覚はあるけれども、だからってその言い方だと俺が常に奇行に走ってる変人みたいじゃないか。訂正してくれ。ちょっとショックだぞ俺。
「そうなんですか……まぁ、長い人生、そんな事したい時もありますよね」
流さないで。突っ込んで。少しはどうして走り出したかとか聞いてもバチは当たらないから……どうして俺が変人扱いされてこんな目に。畜生、文句をしっかり聞いて貰いたいから日本語講座受けようかな。
「それで、あの、私達そろそろ、お暇したく……此方のワンちゃんも、無事、送れましたし。あまり長居するのも申し訳ないと、その」
「あら、そんなこと気にせず、ゆっくりなさって行って下されれば……」
有馬さんと揃って首をブンブン。ゆっくり何て、そんな、速攻で帰らせていただきます。はい。
「ではせめて、入れなおしたお茶だけでも。折角ですし」
「わ、分かりました。それだけ飲んだら帰ります。はい……」
流石に湯飲みいっぱいに入れられたお茶を無視は出来ないし、コレ位は……まぁ。
「あぁ良かった。入れた甲斐があったというものです……あ、申し訳ありません。私共少し、席を外しますね。お見送りの時は必ず参りますので」
「い、いえ大丈夫です! ひっそりと帰りますから! はい!」
「そうですか……? では、お二人共……ごゆっくり、と」
……最後までにこやかに去っていったなぁ。若干違和感すら感じたけど。あそこ迄行くともう。まぁ、ああいう人も居るんだな、って事で納得するしかないか。
「……取り合えず、飲んじゃいましょうか」
そうねぇ……まぁ、この量なら一気に飲めるし、先飲んじゃおう。
「うわ、一気に飲んじゃった……熱くないんですか?」
まぁ熱いけど、そこまで量も多くないから、そんなには……そんな……?
「……私も、頂こうかな。さっき飲んだ時、凄い美味しかった――ドヒェッ!?」
ストップ。飲んじゃダメよ。ゴメンね、顔の前に手を差し込んで。しかしちょっとコレを飲ましちゃうのはね。危ないから。
「な、なんですか……?」
この口の中に広がる、違和感……苦味ともエグみとも言えない、独特な……ゴクッ、コレは何かしらの薬っ! 間違いない!
「え、あの、私の湯飲みを持って何方へ?」
ちょっとお池の鯉の皆様、失礼します……お茶をドバァ!
「何してるんです!? ちょ、鯉が! 鯉が! ……え?」
何と、相当な即効性だったか。入れてそう時間も経ってないのに、次々と鯉が浮かんで来てる。死んでいる、訳じゃないなピクついてるし。麻痺系?
「……あ、あの、これって、これって、何かの冗談だったりしません?」
……ふむ、あんまりにも歓待に全力過ぎるとは思っていたが、コレを見てるとアレもちょっと見方が変わって来るな。そもそも、この家に引き込むのが目的だったりしたのかななんて。
「って!? 牛頭さん飲んでましたよね!? 大丈夫ですか!? 吐いて!? 反芻してお願い反芻を!」
俺を何だと思っているんだ(激怒) 出来るか反芻なんて。俺は牛じゃないんだよ。吐こうと思ったらこの自慢の腕で横隔膜辺りをドスンってやれば一発だよ。
「牛頭さーん! お願い、しっかり……しっかり、しっかり?」
大体、この程度の薬や何やらで俺をどうにかしようなんて……は、甘い甘い。
「……もしかして、効いてなかったりします?」
「――オァ!」
「凄いニンマリとしている……!? 凄い平気そうだ!」
生まれてこの方健康優良青年! この程度の薬ならどうという事も無い。この体を形作るパワフルな細胞が駆逐してくれるというもの。
「だ、大丈夫なんですね……あ、あの、それでコレってどういう事なんでしょうか?」
どういう事って言われても……分からん。急に薬なんざ盛られてこっちも大混乱中な訳ですし。いや、混乱しすぎて、一周回って冷静になってるけれど。
「兎に角……逃げ出した方がいいんでしょうか」
うん。多分間違いなく逃げ出した方が方が良いと思う……思うんだけどなぁ~凄い気になる点があるんだよなぁ~……まぁ何れにしても、まだ逃げない方が良いと思う。
「え、まだ逃げないって……どうしてですか、こ、こんな薬使ってる人達の家からは早めに逃げた方が……!」
いやぁ、こんな手を使う相手だからこそ、万が一逃げ出そうとしてるのを見つけられたら、それこそ凶暴化してこっちに襲い掛かってくるかもしれないですし……
「角が生える……怒って……首を絞められる……あっ」
ジェスチャーで理解してくれて非常にありがたいです。
「じゃ、じゃあ穏便に、気付かれないように出て行くしかないですよね……!?」
全くその通り。どうしたもんかね……っと、門の方に誰かってうわぁ。
「アレって、印部の旦那さん……なんで外に……ちょ、見つかっちゃいます」
伏せろ伏せろ! 急いで伏せろ!
「な、何しに……あれ? 牛頭さん、門が、なんか……おかしいような」
うん。めっちゃなんか、塞がれてるねぇ。ガラクタとか積み重ね……いや待てバリケードかなんか作ってるんだろうけどもうそれはバリケードとかの範囲越えてるぞ最早ガラクタの山だぞコレ。絶対出さないつもりやんガチなのアンタ?
「よし……後はあの二人を、田中さんと同じところに……」
えっ……田中のおばあちゃんもアレ飲まされてたの!?
ペロ、なんて時代遅れ、これからはゴク、ですよ奥さん。




