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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の行きつけの里で神隠しをするんじゃない
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お持て成しガチ勢

 ……うーん。庭が綺麗だなぁ。お池に鯉まで居る、立派な日本庭園だ事で。まぁそれは良いんだが、もうこんな和室まで案内されてしまったら、『大丈夫ですから帰ります』とは言いにくい。畜生、勢いに流されてしまった……さっきの犬もどっか行っちゃったし。


『少々家の者を連れてまいりますので、お待ちください』


 家の者を連れてきてどうするんだろう。謝罪でもするとしたらやめて欲しい。申し訳なさで限界を迎えて体がスライム状になる気がする。ミノタウロスだけど。


「……ど、どうしましょう。流れでここに座っちゃいましたけど。お茶まで飲んじゃいましたけど……取り合えず、お茶飲んで待ちましょうか」


 何を待てばいいのかも分からんが、取り敢えずは賛成。この美味しそうな緑茶を飲んで、カテキンで冷静さを取り戻し、冷静に話す為の心の下地を整えねば……


「(この和室に全く似合わない人が隣に居るせいで、六週くらい回って冷静になれているなぁ。あ、いや違う。多分冷静になってる気がするだけだ。多分。混乱してる今も)」


 ずずっと……お、これは。美味しい玉露。親父がお土産に買ってきた日本土産の茶葉の味そのもの。これ明らかにいいお値段する奴だろうなぁ。うん。やっぱり帰った方が良いかもしれん。最初の茶でコレって、謝って、ちゃんと犬をどうにかして貰えれば良かったのに。完全に過剰だ。


「……こっそり帰っちゃえば、バレないでしょうか」


 成程、その手があったか。流石有馬さん天才。思わず赤べこ染みた首振りもしよう。


「そう、ですよねバレないですよね多分そうと決まれば帰りましょうか」


 そうね。さっさと帰ろう。これ以上は申し訳なさで胃が崩壊する。すいませんお茶一杯飲んじゃったけどすみませんそれはお見逃しください……!


『お待たせしました。お父様とお母様を連れてまいりました』


 着席っ!


「……まに、あわなかった……っ!」


 全くもって同感です。おぉ神よ。何故私達を見捨てたもうたのか。教え給う。


「――失礼いたします。すみません。少々話をするのに手間取ってしまって」

「いやぁ、申し訳ない。この度は私たち共の飼い犬がとんだ粗相を……っ!?」

「失礼いたします。この度は、本当にご迷惑をおかけして……?!」


 あ、どうも。お二人共、和服の似合う美形ですな。ご迷惑? いいえ、私共、そこまで被害も受けてないので即刻帰りたい次第で……どうしてそんなにおめめを擦ってらっしゃるのですか?


「……お父様、お母様! お一人は着ぐるみを着ていると言ったではないですか」

「い、いや。アレは着ぐるみとか、そういう……」

「えぇ、そ、そういう感じ……じゃ、ない気がするのだけど……?」

「ご本人たちが着ぐるみ、と言っているのだから、それでいいじゃございませんか!」


 いや俺は一切、着ぐるみとか着ています、とかは言ってませんけれど。


「それに……()()()()()のには、関係ないでしょうそんな事?」


 ……か、関係ない。いや、そうかもしれんけど、俺の毛皮は天然物なんだけど。なんか人工物扱いされるのは、ちょっと。色々、こう、複雑……


「――まぁ、それもそうだね。ご迷惑をかけたのだから、お礼をしなくてはいけないし」

「ごめんなさい、ちょっと混乱してたわ。申し訳ありませんお客様、こんな些事に拘ってお手間を取らせましたわ」


 あの、いや、その……うん、もういいや。気にしててももっと悲しくなるだけだ。


「えぇと、それで改めて……印部家当主、功也と申します」

「妻の、日和でございます。私共の飼い犬が、大変な失礼を致しました」


 い、いやいや! そんな頭を下げなくても! 大袈裟ですって!


「あ、頭を上げてください……っ、私達、ケガとか、全然してないですし」


 可笑しい……何かが可笑しい……私たちは、あの犬の事について色々言うつもりで来たのにどうして俺達はここまで追い詰められた挙句、頭を上げてくださいとか言ってるんだろうか。分からない。


「いえいえ、娘ももうしました通り、全ては私共の責任でございますので」

「こうして頭の一つも下げねば……本当に申し訳が……あ、里奈。そこでぼぉっとしてるだけじゃなくて、新しいお茶を! もう冷えてしまっているでしょうし」

「はい。しばしお待ちくださいねお客様」


 あ、ちょっ! 待って、冷えたからってそんな良い感じのお茶を……あー、もってっちゃったよ。か、歓待の具合が……って!?


「……」


 有馬さぁああああああああん!? ビクビクしながら白目を剥いてる!? なんてこった罪悪感で限界を迎えちまったか!?


「――ゥォオッ!」

「あ、何方へ? というか、その子抱えて!? え、ちょ、待ってください!?」


 ちょっと仕切り直し! 有馬さんが失神しそうな勢いなので! はい! 失礼いたします! 大丈夫、すぐに戻りますから! いや、そのまま帰るかもしれないけど!




「ありがとうございます……心が、心が、本当に限界になってて」


 うん。気持ちは分かる。そうなってるのがどうしてなのかはサッパリと分からんけど。でも今はアレに負けている場合じゃない。いや、謝って貰ったから目的は果たしたと言えば果たしたけども。


「……田中のお婆ちゃんも探さないといけないんですし、帰った方が良いんじゃないでしょうか。取り敢えず……物凄く申し訳なくはありますけど、謝ってもらいましたし」


 そうねぇ……うん。


「……一応、一言言ってから帰りましょうか。何も言わずに出て行くのも、その、流石に色々、失礼といいますか。ね?」


 新しくお茶も用意して貰ってるしねぇ……仕方ないか。


「それにしても、なんでこんなに丁寧に感歎して下さるんでしょう。私達、ワンちゃんの事についてちょっとお話に来ただけなのに……」


 分からん。ちょっと気味悪いくらいだけど、そういう人なんだと納得……いや出来ねぇよなぁ。ちょっと不気味位の勢いなんだよな、ホント。


ゾッとするくらいお持て成しをしてやるってんだよ。

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