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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺の行きつけの里で神隠しをするんじゃない
20/122

山から筋肉マッチョな牛が降りてくる

 ――最近、ルーティンが増えた。


『昨日、自衛隊の基地で不審火が発生した件について、警察は、原因が食堂の火の始末のし忘れである可能性が高いという事を発表し……』


 朝のニュースを確認しながら、当たり前にコーヒーを淹れ、当たり前に食パンを焼き……サラダを準備する。で……その間に、フライパンに油を引いてベーコンを焼く。カリカリになるまで。


「――」


 当然ながら、俺が食うための物じゃない。最近、週末になるとここに滞在する、お客人の為の物だ。食えない訳じゃないが、どうにも舌に合わない。タンパク質は大豆で十分だろう……今は、その大豆すら食べられるか、微妙だが。


「――!」


 朝食がそろそろ出来る。この前の週末は見事に焦がしてしまったが、今回は上手く出来そうだし。熱々を食べてもらいたいところなので……おぉ、やっぱりこの位の油で良かったんだなぁ……まぁ、練習の為に油がだいぶ減ったんだが。


「おはようございます」


 ったく間抜けだ。今日のパトロール終わりにでも……あ、お早う。


「――!」

「いつも朝食ありがとうございます。美味しそうですね」


 まぁ、お客さんって言っても有馬さんなんですけどね。ここに泊まるのは今回で三回目だけどそろそろ馴染んできてくれたようでなにより。


「火事怖いですねぇ……山とか、火事が一番危ないですから。気を付けないと。あの人たちが落としたドローンとかも、危ないですよね」


 まぁ、火事にならんようにパトロールはキッチリやってるし。そして、パトロールの最中に彼らが落としていったドローンとかは俺が回収する役割だし……警察の皆様におかれましては心身新進の方々を一切容赦せず取り調べていただきたい。俺の恨みの為にも。


「……鼻息でサラダが宙を舞ってる。大分怒ってる……のかなぁ? 」


 っと、食材を台無しにしちゃいかん、頭を冷やして。そう、パンも焼けてるだろうしパンを食べて。お腹が空いてるから頭がイラつくんだから。さ、有馬さんも食べて食べて!


「パンありがとうございます。マーガリンを借りたいんですけど……」


 あぁゴメンゴメン。今持って行くから……っと、おや? 待ってくれ、このマーガリン大分、この……軽いね。いや軽いっていうか……これは……


「どうしたんですか……あ、無い」


 そうね。開けてビックリ中身が存在しないんだけど。折角上手い事ベーコンが焼けたってのに。最悪のタイミング。うーん、マーガリンって、これ一個しか買ってなかったんだよなぁ。で……もって。


「――……モゥ……」


 そう。昨日、有馬さんに夕食を振舞った段階で気が付いてはいたのだが……大分冷蔵庫の中身が少ない事に。いや、朝、いやさ昼までは持つと思っていたが見通しが甘かった。まさか、朝までも持たないとは……ぐぬぬ、見通しの甘さに不甲斐なさ大噴火。


「……パン美味しい。あ、ベーコン凄いカリカリ……」


 まぁ、流れで預かる事になったとはいえ、大切なゲストには間違いがない。食事はお持て成しの重要な項目。ここは……買い出しに行かないという選択肢はない。


「――あれ? もうパトロールですか? あ、ちょっと待ってくださいね。ご飯食べちゃいますから」


 あ、いいよいいよ。準備に時間かけるし。落ち着いて食べていただければ。


「大丈夫、ですか? そう言う訳には。私にも準備がありますから。虫よけとか」


 あ、そんな物まで持って来てたのか。まぁコレで三回目だからなぁ、有馬さんと一緒のパトロール。というか、預けられてるんだから家に置いて来る訳にも行かないし、強制的に連れて行くわけだからね。そりゃ慣れもするか。


「それに、もうちょっとで食べ終わりますし……はく」


 そして予想以上に速い食事スピードに牛頭さん思わず困惑。


「……なんでそんな口だらしなく開けて……そんな驚かなくても、一応、女子高生ですから。朝をぱぱっと済ませる位は出来ますよ?」


 あ、そうなの。




「今日はいいお天気ですねぇ。日差しが、気持ちいいです」


 そやろ。山ってのはやっぱり朝方が一番こう、極まってる気がするのよなぁ……こうして右肩にかかる僅かな重みも、もう慣れたもんだ。だからと言って落としたら危ないので油断はしないが。


「……それにしても、何時もと道筋が違いますよね」


 おや、お分かりになりますがお若い人。


「気のせいかもしれませんけど……今日は、別の所に向かってませんか?」


 大正解。まぁパトロール終わりに買い出しに行くだけなんだけどね。


「あ、頷いてくれたって事はやっぱり……というか、これって、真っすぐ降りて行ってるような……?」


 そりゃあまぁ。降りてますよ。里に買い出しに行ってるから。っと、万が一って事もあるし、一応道順を確認。山だったらまず迷わないんだけど、里に下りる道は、偶に間違えちゃうからなぁ。


「……携帯に……地図……えっ、待ってください街に降りるんですか?」


 え? そうだけど……あぁ、ちょっと有馬さん。俺の携帯見たでしょ、ダメよーそんなことしちゃぁ。プライバシーはね、大事にしないと。


「携帯見ちゃったのは、その……い、いやそうじゃなくて。大丈夫ですか?」


 街に降りるのが? 迷わないかって事かな。いやいや、ちゃんと地図確認したから大丈夫大丈夫。万が一迷っても、俺はこの山の事は洞穴の奥まで知っているのだ。迷っても立て直すのに、何ら支障はない。


「……だ、大丈夫かな。騒ぎにならないかな……」


 騒ぎ? ……あ、いや待てよ。騒ぎになる可能性……十分あるな。

 なにせ、俺は有馬さんを担いでいる。こんなゴリマッチョが女性を担いで街を闊歩していたとなると、まじで誘拐されたんじゃないかとか思われかねないかも……? い、いや大丈夫だ。着いた所で降ろせば!


「首を振ってるって事は……大丈夫、ってことですか? ……そうかなぁ、何かがズレてる気がするなぁ……?」


 大丈夫大丈夫! 滅多なことはないよ! きっと!


そも誘拐とかいう以前に、『シン・ミノタウロス』確定。

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