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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺が管理する山でデスゲームをするんじゃない
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幕間:母子が似ているとは限らない話

 ――警察署まで送って貰って。暫くしてから、お母さんから迎えに行く、という連絡が入った。


「喜美! アンタホント、ビックリしたわよ! 警察から連絡来て! なに誘拐なんてされちゃってもう、ちょっと、ホントに心配したわよホントォ!」

「お、お母さん……ごめん、あの、来て貰っちゃって」

「何言ってんのアンタ! 娘の大事よ! 帰ってきて当然でしょうが! 課長が『き、君が抜けたらちょっとヤバい』とか言ってたけど無視よ無視ぃ!」


 無視して大丈夫なのかな、それは……具体的な事を言ってないのが、逆に余裕が無いのを表してそうだなぁ。あ、いや、そうじゃなくて……


「し、心配かけて、ごめんなさい」

「アンタが悪いんじゃないのよ私と旦那が悪いの! 週末毎度毎度会社にこもりっきりで朝帰りになってんだから! 一緒に居たら絶対誘拐なんてされなかったでしょうに!」


 ……うーん。そうだけど、その分ちゃんと警報とかは付けてくれてるから。それでも駄目だったんだから仕方ないんじゃないかなぁ。あと、パンツスーツのポケットに手を入れるの、やめた方が良いよ。ガラ悪いよ……


「やっぱり機械任せじゃダメね! 週末は誰かの信頼できる人の家に預けないと!」

「だ、大丈夫だよ……そうなんかいも、誘拐なんてされないって……」

「誘拐は一回あったら三十回ぐらいあるもんだと思わなきゃダメよダメ!」


 お母さんそれゴキブリだよう……そんな沢山誘拐ある訳ないし、もしあったとしたら、そこは治安国家日本じゃなくて世紀末国家ZIPANGだよ……


「でもお母さんももう年だし! 実家は無理ね! 旦那の家も……」

「お、お母さん、とりあえず、家に帰ろうよ」


 ここ警察署前だから、騒ぐと目立つから……あぁ、もう入り口に立って見張りしてる人から『なんだアイツら……?』的な感じで見られてる! は、恥ずかしい!


「ん? あぁそうね! 早く家に帰ってゆっくりしたいわよね!」

「うん、うん、もうそれでいいよ……」

「タクシー呼んであるからホラホラ乗った乗った! 疲れてんじゃない!? ねちゃっていいから!」


 牛頭さんが色々気を利かせてくれたから、疲れては無い……けど。今すぐに眠っちゃって向けられてる視線から逃げ出したくはある。夢の中に。滅茶苦茶恥ずかしいし……うぅ。お母さん声大きいってばぁ……




「で! 旦那の家も同じ理由でダメね!」

「あ、そこから始めるんだね、やっぱり」


 お母さん、変な所で律儀だからなぁ……悪い事じゃないと思うし、だから会社の人から頼りにされてチームリーダーとかやってるんじゃないかな、とも思うけど。


「他の親戚とかは……全部ダメね! 特にアタシのダメ兄弟連中皆アウト!」

「お、おじさん達に失礼だよお母さん……皆しっかりしてる人達じゃない」

「アイツらキッチリしてるように見えて男やもめだから! アンタみたいな若い女の子一人で送り込んだら危ないよ! どうしようもないわねホント男ってのは! 取り敢えず何処か候補が思い浮かばないから取り敢えず置いておこうかしら!」


 男はオオカミだからね、ってその表現は大分古いよお母さん……


「でも本当に良かった無事で! 家探しても何処にも居なかった時は臓物が凍り付いたよ本当に! 旦那は気絶してたわ! 余程運が良かったんだね!」

「肝じゃなくて、全部なんだ……しかも凍り付いてたんだ……」


 いや、言うべきはそこじゃないよね。ちゃんと、助けてもらった事は言わないと。


「……お母さん、森林官、って知ってる?」

「あぁ知ってるよ! 分かりやすく言えばお山と森を守る公務員さんだね! それがどうかしたかい!?」

「実は……誘拐されて連れてこられたのが、山で……その山を担当してた森林官の人に、助けて貰えたの。お風呂とか、寝床とか、いろいろ貸して貰えて……」


 牛頭さんの詳細は言わない。言っても、多分信じて貰えるとは思えないので。私が、お世話になった物凄い個性的な人が居た、という事を覚えていればいいと思う。


「ほうほう、確かにそれは良い人だね! 男かい!」

「えっと……うん」

「前言を撤回しようかな! 大丈夫だったの! なんかされてない!」


 ううん……なにもされてないです。特には。まぁ、された、事はないけど起こってしまったって感じのならあったけど。アレは……うぅ、事故……うん、事故だよぉ。


「なんかされたのね! 絶対に許さないよ! 私が乗り込むとしようかな!」

「えっ、な、なんもされてないって、なにもされてないよ……!」

「いいえ、ちょっと目を伏せて乙女チックな仕草をしてたわよね! 私の目は見逃さなかったわ! なにも無かったって事は無いわよ!」


 お母さんの勘が鋭すぎる……じゃ、じゃなくて。


「ちょ、ちょっとトラブルはあったけど、向こうの人の所為じゃないし……」

「むむ、目を見て言えるって事は本当そうね!」

「そ、それに……それに関して何も言わないで……直ぐに頭を下げてくれたし。そもそも、私が危なかった時に、命がけで助けようとしてくれた、優しい人だから……わ、悪い人じゃないよ」

「無言実行に、命を懸けて誰かを助けるとは男らしいわね! 打って変わって中々にいい男そうじゃない!」


 物凄いクルクル掌回してる……お母さんて、自分の意見に、執着するレベルでは拘らない人だもんね。でも、今はそれがありがたい。


「成程、ちゃんとお世話になったなら私もお礼をしないといけないわね!」

「で、でも……お母さん、その。忙しいでしょ? だから……私が、行ってくるよ。お礼をちゃんと渡したいから」

「喜美がそんな事を言うなんて珍しいわね! 成程……ふむふむ!」


 よ、良かった。納得してくれた……とりあえずコレでちゃんとお礼を渡しに行ける。


「……良し。いいよ! ケーキの詰め合わせとか、そんな感じの物でいいの!」

「うん。だから、その……お小遣い、前借とか……」

「いいよ! 私が出す! それと……ちょっと待っときな!」

「え、うん」


 どうしたんだろう。ボールペンなんて持って行って……


「――出来たよ! ホラ、コレを一緒に持っていって!」

「便箋……?」

「そう! ケーキは明日買って帰るから、それを一緒に持って行きなさい! 私からのお礼のメッセージも書いてあるよ!」


 あ、なるほど。


「じゃ、じゃあ今度の週末に……」

「行ってきなさい! しっかりね!」


凛々しい女性を書くつもりが、なんか大阪のオバちゃんっぽくなったのはなんでなんだろう。

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