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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺が管理する山でデスゲームをするんじゃない
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幕間:杞憂に揺れる少女

「……『そろそろ警察の人が迎えに来る』……ほ、ホントですか?」


 牛頭さんがこっちに見せてきたパソコンには、待ち望んだ知らせが記されていた。そのパソコンの上の、人より圧倒的な歯のむき出しスマイルを見ても、嘘はついていない、とは思う。牛の顔してるのに、あそこ迄笑顔が分かりやすい、と言うのも凄いとは思う。


「あぁ、なんか……安心して、力抜けちゃった……あ、笑わないでくださいよ」


 柔らかいソファの上に全身を預けると、ブフブフと空気を漏らして笑っている牛頭さんの姿。そりゃあ、大分だらしない恰好を今してると思うけど、でも笑う事は無いと思う。


「うー……あ、そういえば」


 こうして私は助かっている。でも、他の人はどうかは分からない。むしろ、奇跡的に私は牛頭さんに保護して貰ったけど……無事なのだろうか。


「あ、あの。牛頭さん……他の人達って」


 何々……『全員、警察や山の専門家さんが保護して無事だよ』。あ、良かった。私だけ助かる、っていうのも凄い申し訳ないし、誰もケガしてない、というなら、気が楽になった。なんか、『なんでアンタだけ助かったの!』とか言われたら……うぅ。


「安心しました……後は、私が帰れば全部終わり、なんですね」


 この山に来た時は、本当に、なんで山なのか、どうやって帰ればいいのかも分からなかったけど……でも、終わって見れば怪我も無く、無事で……


「……ん?」


 私、この後迎えに来てもらう。それはいい。けど……牛頭さんの所に直截来るのだろうか。それとも山の麓まで牛頭(ごず)さんが連れて行ってくれるのだろうか。どちらでも、全然かまわないのだろうけど。どちらにも致命的な問題がある気がする。


「――フゥー」


 目の前で、マグカップに入った液体……多分、コーヒーだと思うんだけど。それを飲んでいる牛頭(うしあたま)の、マッチョマン。簡単に言えばミノタウロスさん。この人と警察さんが鉢合わせする事になるのだけれど……


「警察の人って……牛頭さんと面識のある人なのかな」


 もし初めて会う人だったら、間違いなく誤解を受けると思う。私も、最初は本当に殺されると思って逃げ出しちゃったし……今では凄い失礼な事したな、とは思うけど。でもある意味しょうがない、とも思う。

 驚くだけなら、良いと思うけど……最悪の場合、は。


――ここに来た場合。


『ブモォオオオオオオオ!』

『な、なんだこの怪物は……こんな奴が山に住んでいたというのか!?』


 山小屋に潜む、遥か過去からの刺客……愚かにも彼のテリトリーに迷い込んだ警察官達は、その圧倒的な怪物からの絶望的な逃走を始める事になる。果たして、牛怪の棲む魔の山から、生きて帰れるものは出てくるのだろうか……

【巨牛の山】


――こっちから向かった場合。


『ブモォオオオオオオオ!』

『ば、化け物だぁアアアアア!? 山から化け物が下りて来たぞぉおおお!』


 それは山からの刺客。人知を超えた怪物が、秘境より降りて猛威を振るう。日本警察の威信も、誇りも、何もかも。その巨怪を討ち果たすために投げ捨てて。リアル・モンスターハンターが、今始まる。

【シン・ミノタウロス】


 ……パニックサスペンスか、怪獣映画か。どちらにしても最悪の場合、大惨事になるのは間違いないと思いました。有馬です。じゃなくて! ど、どうしよう! わ、私を助けてくれた人が大事件の原因になってしまいそう!


「あ、あの……牛頭さん? 警察の人って……ここに来てくれるんですか?」


 えっと……頷いたって事は、ここに来てくれるって事かな。となると【巨牛の山】なるのかな。ど、どうしよう。私だけで警察の人と一緒に降りた方が良いのかな。そうした方が危なくない……のかなぁ。


「ご、牛頭さん。あの、その……」


 でも言えないよぅ……『警察とトラブルになるかもしれないから牛頭さんは家の中にいてください。』とか正面から言える訳ない……命の恩人なんだよ……? そんな酷い事言えるわけない。言えたら人の心が無いと思う。


「――? ――!」


 ん? どうしたんだろ。スマホ見て……で、外を……あ。


「――!」


 あぁ、肩をポンポンされた。間違いない、来たんだ警察の人! ど、どうすればいいんだろう! トラブルにならない事を祈る!? で、でもそんな悠長なこと言って、牛頭さんが怪我したりしたら……あわわわ。


「あ、あの牛頭さん、そのですね……わ、私……」

「――?」


 あぁぁああああダメだ、凄いお目目が綺麗だ、凄い透き通ってる……純粋な目っていうのはこういうのを言うんだろうなぁ。こんな綺麗な目をしてる人に、酷い事を、うぅ……昨日は私の面倒を見てくれて疲れてるかもしれないのに……はっ! そうか!


「……牛頭さんも昨日から色々と疲れてますよね! ね、ね!」

「――!?」

「わ、私一人で行けますから! 大丈夫ですよ!」


 う、上手い事言い訳が出来た……!


「それじゃあ、あの、お世話になりました! ま、また改めてお礼に伺いますので! 失礼します!」


 い、急ごう……悲劇の時が来る前に……!


「……おっ、出て来たな。君が連絡の合った女の子だね」

「は、はい、そう、です」

「じゃあこれから、我々が付き添って車で来れるところまで送るから、足元に気を付けて」

「は、はい行きましょう! 直ぐに行きましょう!」

「お、おう」


 牛頭さん、本当に……ありがとうございました……せめてものお礼に、トラブルの種は私が連れていきますので……!




「……なぁ牛頭」

「――?」

「お前なんかしたのか? ……いや、出来る訳ねぇか、お前牛だもんなぁ」

「――!」

「怒んな怒んな。ここにお前が赴任して、顔合わせした時からの仲だろ。まぁそんだけ期間たっても、言葉は結局わからねぇけど……しかし、お前ビビられなかったか?」

「――……」

「だろうな……まぁ、お前何度か逮捕されかけたもんなぁ。だからこんな辺鄙な所に引っ越してるんだし……どうしてビビられるんだろうって? いや、まぁ、その体だしなぁ」

スマホで事件の事を報告している=ある程度面識がある人が居る

この数式に最後まで気が付かなかった少女の物語ともいう。

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