銃があればムテキ! 使い方が間違って無ければ。
「……へっ?」
「先ほど、後生大事そうに、木の上に置いていたのを見たぞ。もし、もし大事なら、動くなよ……!」
……なんてこったい……ああもう分かったよ、ホールドアップすればいいんだろう。人質とか卑怯に過ぎると思うんですけど、畜生正々堂々殴り合え! あ、それだと俺が間違いなく殴り勝つか! これでようやく互角くらいか! 成程! 納得している場合じゃねぇ!
「ひえっ!? て、鉄砲!?」
いやこのご時世に鉄砲はちょっと……いや、間違っちゃいないけどさ、ちょっとフンって笑い声がちょっと漏れそうになっちゃったじゃん。ちょっと雰囲気崩壊しちゃうよ。止そう。ちゃんとシリアスしよう。いや別に維持する必要もないけど。
「っく……ふう、動くなよ、そこの女。お前、も……死、にたくは無いだろう」
ほら豪華スーツのおっちゃんも笑っちゃってるし―……笑いながらじりじり距離詰めてんのは抜け目ないなって思うけどさ。
「あ、貴方、昼間の……! きゃ!?」
「お前を守ってた、そこの怪物に世話になったよ……どうやら、今も律儀に守り続けているみたいだな、この牛は……もしやお前の飼い牛か何かか?」
飼い牛ってなんだよ。現在の住宅事情で牛を飼おうとするとか至難の業だぞ。というかそこじゃねえよ、俺は牛じゃねぇ。ふざけてんのか。
「まぁ、いずれにせよ構わん。こんな怪物はさっさと始末するに限るからな!」
マズイ。有馬さんを、盾に……く、だが動こうにも動けば彼女に害が及ぶ……!
「ぴっ!?」
「よし。そのまま動くなよ。化け物。この子の目を抉られたくなければ、大人しくそこに棒立ちで居ろ。一発一発、確実に撃ち込んでやる……!」
コレは完全に俺のミスだ。あの豪華スーツだけでも、何かしらで拘束しておくべきだったな俺。本当にバカ野郎め……だが、それで彼女を巻き込むのは、違う。せめて彼女だけでも無事に逃がしてもらえるよう確約を。
「……――!!」
「っ!? な、なんだ急に震えて吼えるな! 抉るぞ!」
出 来 な い! お、俺の言葉はアイツに届かない! さっき有馬さんでその辺りは確認したばっかりだ! い、YES、NO、だけで彼女の安全を確約しないといけない……いや不可能だろう常識的に!
「そうだ……動くなよ。絶対に動くな。先ずは動けないように、足からだな」
く、くそ。目の前の女の子を、何とかしなきゃいけないのに……どうにもならねぇ……! ああ糞、コレが詰んだって奴なのかっ……!
「う、撃つ……!? 止めてください、牛頭さん死んじゃいます! 止めて!」
「直ぐには殺さないさ。慣れていないからな。確実に、撃ち殺すためにも! 喰らえ!」
っ!
――バァンッ パスンッ
「……――?」
「――っ……耳、痛い……ご、牛頭さん!? 大丈夫ですか!? 牛頭さん、返事を! モーって鳴いてください!」
……いや、鳴きませんけど? 全然……その、なんだ。平気だから。いや腿の辺りぶち抜かれて倒れ伏すくらいの事は覚悟してたんだけど。全然痛くも痒くもないし。
「……く、おい、お前。もうちょっと近寄れ! いいか、抵抗するなよ!」
いや、近寄ると余計に危ないと思うぞ? 撃つ前に拘束されたりするかもしれないよ近づかれ過ぎたら。そのリスク負ってまでこっちに近寄らせる? 普通。冷静に考えて。
「ぐ、ちゃ、ちゃんと脇で固定しないと……」
……成程。理解できた。さっき両手で撃って外してた奴が、片手で有馬さんを確保したまんまマトモに撃てるわけないじゃないか。当たる訳ないだろうよ。
「牛頭さんっ……え? 耳を……? 塞いでろ?」
「じぇ、ジェスチャーで忠告するとは余裕だな……! この距離なら外さない!」
ま、まぁさっき十メートルちょっと離れてたけど、その半分くらいしかないからね今。石普通に投げても全然当たる距離ですけれど……まぁ、当たらない訳ない、筈なんだけど。
「今度はどてっぱらに風穴を開けてやる! 臓物を巻き散らしてくたばれ化け物!」
――バァンッ パツンッ
「……」
「……? ご、牛頭さん? あの……大丈夫なんですか?」
はい。全然。念のために腹筋に全力で力入れてたけど……掠った感触すらしなかったんですが、まさかこの距離でも外したとか言わないよな……? いや普通に外したんだろうね。
「……あ、当たれば間違いなく殺せるっていうのに……! 相手は棒立ちなんだぞ!」
でも扱いきれないと意味ないですよね。諦めて、その……まぁ、諦めそうな顔じゃあないな此奴。めっちゃ視線感じるんですよね。もうちょっとさぁ、
「落ち着け……ちゃんと、ちゃんと脇で、固定すれば、当たる。大丈夫だ!」
すっごい自分に言い聞かせてるな。どうして完全有利を取ってる方が余裕なくしてるの。おかしくないかコレ。俺、危険な状況にあるって思っていいんですよね?
「おい動くなよ……頼むから動いてくれるなよ!? 頼むから!」
なんで撃たれそうな俺が懇願される側に回ってるんですかね。あの、豪華なスーツのオジサンよ、俺がこんな事言う……思うのもなんだけど、もうちょっと威圧的な態度でいよう? 人質取ってるなりの態度しよう?
「く、くそっ…やっぱり両手で持たないと……だ、だがこの娘から手を放したら一瞬で、距離詰められて……落ち着け」
「……あれ。コレ……よいしょ」
あ。
……有馬さん、普通に抜けて来た。拘束してろよちゃんと。追い詰められ過ぎて腕緩んじゃってるじゃないか。そして、全然気が付いていないか。うん。これは。
「仕方ない、この首から、こう、上手い事ライフルを、持って……あれ? なんか腕の中が寂しいような……というか、ん? 居ない?」
君はね、もうちょっと周りを見た方が良いと思う。あと、行動に余裕をもった方が宜しいと思われます。そうじゃないと、こういう風に……思惑通りに行かずに。
「ど、どこ……あれ? なんでこんな所に壁が……」
「――ゥオア!!」
「ぶげぇっ!?」
渾身のナックルで、顔面からぶちのめされますからね!
一応アサルトライフルを出したのは理由があるんですけれど。
銃として意味があるとは言っていない。




